第83話 お話し
「千紘〜部屋入るぞ」
ノックをして許可をもらって千紘の部屋に入る。こうして妹の部屋に入るのはいつぶりだろう。
千紘が中学生になったくらいから気を遣って部屋には行かないようにしたんだよな。話すなら俺の部屋がリビングって感じだった。
「なにお兄ちゃん。浮気してたことの弁明でもするの?」
布団にくるまって顔だけ出した感じはどこかのエロ○ンガ先生のよう。いやそんなことは今はどうでも良い。
「浮気なんてしてないし。俺は美吹一筋で浮気なんかする気はない」
「うわぁ……妹の前でそんなこと言わない方がいいと思うよお兄ちゃん。妹一筋って言った方が良いよ」
「そっちの方がやばいよ絶対」
妹一筋なんて公言したら周りの友達がいなくなるかも知れない。逆に変人が寄ってきそうだ。
「やばくないと思うけどね。まぁそれで? 浮気の弁明は聞く気ないよ。春野さんだっけ。早めに別れてね。そして早く私を彼女にして!」
「まじでそんなキャラじゃなかったよな千紘」
半年前、大学へ行くために引っ越すまでそんな素振りなかったのに。まぁ確かにすごく寂しそうな顔してたけど。
でも、なぜかそれ以上に期待というか……なんとも言えない雰囲気が出てたな。
「お兄ちゃんの前では必死に我慢してたんだもん。それでお兄ちゃんと一緒の大学行って同棲してお母さんたちがいないところで愛を育もうとしてたのに」
「そんなこと考えてたの!?」
なんということでしょう。この妹は俺の預かり知らぬところでそんな計画を練っていたのです。
今、高校2年生の妹がもし俺と同じ大学に入学し一緒に暮らすとなったら2年間一緒ということになる。うーん……長いなぁ。
実の妹に欲情もしないしなにも抱かないが、この妹は2年あるとなにを仕出かすが分からない。2年もあったら外堀が埋められていそうだ。
「こうなったら計画を早めるまでよ。私もお兄ちゃんと一緒にあっちで暮らすことにする!」
「千紘、ちゃんと聞いて欲しい」
暴走しそうな千紘を止めるように優しく声をかける。まだ言いたいことがあるっぽいが、俺の話を聞いてくれるようだ。
「千紘が俺のことを好いてくれているのはすごく嬉しいよ。俺も千紘のことは妹として大好きだぞ」
これは本心だ。こんなことを言うのは照れてしまうけれど、言わなければならない。
そして俺の言葉は続いていく。
バイト先で彼女いると嘘ついたら、いつの間にかお嫁さんができた 九条 けい @GReeeeN1415
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