第40話 お部屋
「ここだよな」
104号室とかかれた表札。その前までやって来た。
シャワーも浴びて綺麗さっぱりした。着る服にすごく迷ったが、変にきめ込んでも良くないと思ったので普通のTシャツだ。
これから俺は初めて女の子の部屋にお邪魔することになる。さっき汗を流したというのにまた心臓のドキドキと体温上昇とで汗をかきそうだ。
そして意を決してインターホンを押す。
部屋の中からトタトタと足音が近づいたかと思うと勢い良く扉が開かれた。
「いらっしゃい川上くん!」
扉を開かれた瞬間香る甘さ。そして春野さんの顔の方を見るとお風呂上がりなのがよく分かるしっとり輝く髪。
顔も火照った感じでいつもより色っぽい。こんな表情の彼女を見るのは激レア。見惚れてしまう。
「ささっ。どうぞどうぞ」
「お邪魔します」
こんな夜遅くに女の子の部屋に行くイベントが起こるなんて、仕事している時は思ってもみなかった。
そして春野さんの部屋にお邪魔する。俺の部屋と作りは同じなので入ってすぐにキッチン。そのあと扉を開いたら小さなリビング。
「少し散らかってるけど」
そうして開け放たれた聖域。そう。ここは聖域だ。
散らかってるけどとか言っていたけれど、そんなことは全くない。きちんと整理され可愛らしい小物が少しある。
ぬいぐるみや服、小物がたくさんあるのが女の子の部屋だと思っていたけれど、たぶんそんなことはないのだろう。春野さんくらいが普通なんだ。今度和真に言ってやろう。
でも甘い香りがするのは本当だった。すごい心地よく、バイトの疲れもあって寝てしまいそう。
「インターホンなんて押さなくても良かったのに」
「春野さんがまだ準備出来てなかったらまずいことになるから、それを考えて押したんだよ」
これがラブコメ主人公なら勢いよく扉を開けてまだ着替え終わっていないヒロインの姿を拝んでしまう、俗に言うラッキースケベイベントがお約束かも知れない。
ただ、そんなこと現実ですると一瞬で終わりだ。それにそういう姿はちゃんと段階を踏んでしっかり見たいと思う。って何言ってんだ。
「なるほど。川上くん紳士だ。あ、ここに座っててね。私、すぐに料理作るから!」
春野さんはそのままエプロンを付けて台所に向かって行った。エプロン姿の春野さん、一枚写真撮っちゃダメだろうか。
花柄のエプロン。新品というより、少し使い込まれた感じがある。たぶん一人暮らしを始めてほぼ毎日作っているんだろう。
台所の方からは手際の良い包丁の音が聞こえてくる。ちょうどキャベツの千切りをしているみたいだ。
「何か手伝いたいな」
流石に何もせずにただ座っているのは申し訳ない。
「ううん。大丈夫だよ。ありがとう。今日のは簡単に出来るからすぐに出来るよ」
「分かった」
こう言われて仕方ない。春野さんの料理する姿を拝ませてもらうことにする。
それにしても楽しそうだ。俺も料理するけど、ここまで笑顔で作っているだろうか。
やっぱり俺のために作っているからなのかな。もしそうだと嬉しい。
「美味しくなーれっ」
調味料を入れながらそんなことを言った春野さんに俺は吐血寸前。美味しいに決まってる。
可愛いという言葉ではもう言い表せない。これは女神だ。春野女神様と今度から呼んだ方が良いかも知れない。
「お待たせ〜」
俺が可愛さに見惚れていたうちに料理が出来たようだ。では、頂きます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます