第74話 同棲話
「母さん何言ってんだ!」
とんでもないことを言い出したぞ。美吹がいるからって羽目を外し過ぎてないだろうか。
「あら。適当に言ってる訳ではないのよ。だって今のところの家賃が32000円でしょう。2人で64000円。安くはないの」
確かにそうやって金額を聞くとなかなか高いな。時給が1000円と考えても32時間分。自分で家賃を払う。そう言ったけど、お金を稼ぐ大変さもよく分かった。
「それにいつ風邪引くかもわからないでしょう。そうしたら収入も減ってしまう。もちろん、私たちが出すのも全然構わないけれどね」
「いや、高い学費払って貰っているんだから、家賃は自分で払いたい」
両親からすると俺の分の家賃を払うのは負担にはなるけれど無理ではないのかもしれない。それでも、俺は自分で払いたかった。これは男の意地というやつだ。
「母さんの言うことも理解できる。ただそれがなんで俺と美吹が一緒に暮らすことになるんだ」
「2人でもう少し広い部屋に住めばまぁ場所によるけれど40000とかそれよりもう少しかかるくらい。それを2人で割れば20000円とちょっとってことになるじゃない?」
「それ、すごくいいですね! 2人で助け合って同棲!」
もはやそれって結婚では? そんなことを一瞬考えてしまって恥ずかしい。
「でもそんなこと簡単に決められないだろ?」
「私はすぐにでもそうしたいよ?」
美吹の首を少し傾げてこちらを覗き込んでくるようなこのセリフ。上目遣いにそんなことを言われたら可愛すぎて何も言えなくなってしまう。
クッ! これが巷で有名な上目遣いの破壊力。このどこか甘えた感じが男心をくすぐる。
ただ同棲というのはやりすぎだ。大学生の男女が同じ部屋で暮らしているというのは、大学にバレた時とか大丈夫なのだろうか。
それにそんなことになったら自分の理性が抑えられるかも分からない。もちろん自制するけれど。
「今からは無理でもさ、二年生になったらとかでどう? 2人で今のうちからお金貯めておいて」
「それなら違約金とかもいらないからちょうどいいかも知れないわね。ただ部屋は早くから探しておかないとギリギリじゃダメよ」
女性陣二人で会話がドンドン進んでいっている。父さんの方をみると微笑ましそうにその会話を見ており、俺と目が合うとグッとサムズアップしてきた。
当の本人が放ったらかしにされて外堀が確実に埋められていっている。
これ、大丈夫か?
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