第2話 大学生活
初夏の朝ともなるともう日差しが強い。こうして大学に行くだけでも汗をかいてしまう。タオルと冷たい飲み物は必需品となってくる。
「おはよう颯汰。今日の講義めっちゃだるいから休みたいわ」
大学の正門。俺に挨拶してきたのは一人のイケメン。ボーダーのシャツにネイビーの半袖コーチシャツを合わせたいかにも夏らしい服装だ。女子もチラチラとこのイケメンのことを見ている。
「おは。てか、先週の内容ある程度復習しとかないとやばいらしいぞ」
今回の「おはよう」はシフトインの時の挨拶ではない。ちゃんとしたの朝の「おはよう」だ。
そう。平日の昼間はしっかりと大学に行って勉強しないといけない。バイトだけ頑張るのではダメなのだ。それが学生だから。
そして俺に挨拶してくれたのが大学で1番初めに出来た友達の
アニメとかラノベが好きなオタク(自称はしないらしい)でファッションセンスも高く、高校時代も結構モテていたらしい。
しかし、俺には心に決めた人がいる(ラノベのヒロイン)と言ったせいでそれ以降女子から全く話しかけられなくなったという逸話を持つ超人だ。
「それで? そろそろちゃんと話せたわけ? あぁいう女子はアニメのヒロインでいうところのな」
「はいはい、もうその例えはいいから。ってもう講義室着いたじゃないか。今日はどこに座ろうかね」
周りの女の子や友達を二次元のキャラに被せるというのも和真の一つの技だ。俺はもう慣れてスルーという技を習得した。
大学での講義は席など決まっていない。各自好きなところに座って講義を聞く。俺の勝手なイメージでは、一番前に座る人はガチな人で後ろに座るやつは不真面目というか、ちゃんと講義を聞いていない感じがする。
「おっ、今日もいたぜ。本当に女子に囲まれて綺麗な花に囲まれた一輪の百合って感じだよな」
「その例えは50点ってところだが、言いたいことは分かるわ」
和真の全く上手くない比喩は置いておこう。50点にしたのは友達の情け。本当は才能ナシ20点。
講義室の席の真ん中の列に人だかりが出来ている。中心にいるのは春野さん。
彼女は見ての通り社交的で、女子グループの真ん中にいるような人物。バイト先では俺に対してとてつもなく冷たいが、他の人に対してはとてもフレンドリーだ。
しかし、男子と話しているところはほぼ見たことがない。彼女の可愛さに入学当初は話しかける男子もいたが、今ではそんな姿は見ない。
なぜなら、全く相手にされないらしい。そして周りにいる女子が春野さんを守るように包囲してしまうから。なかなかうちの学部はすごい人が揃っている。
「ほんと、川上が春野さんと一緒の職場だって知られたらすごい羨ましがられるだろうなぁ。その時はあの話を出すわけ?」
「それ以上言うな。泣きたくなる」
あの話というのはもちろん「俺、彼女います」のことだ。小野にはそういうことも言ってある。
なんでだろうな。趣味が合って、こうもよく一緒にいると自分の恥ずかしいこともすらっといえてしまう。不思議だ。こうしてたまに茶化されるのが玉に瑕だが。
「俺だって春野さんがいるとは思わなかったんだよ」
バイト先の米屋までは自転車で20分ほどかかる。大学からも結構離れているし、近くに駅などもないため知り合いなんていないと思っていた。
「偶然って怖いよな。俺が働いてるアニメショップなんて知り合い来ないぞ」
「それはアニ○イトとかじゃなくてすごいディープなことろだからだろ」
「それもある。でも最高だぜ。仕事しながらもずっとアニメラノベ関連のグッズが目に飛び込んでくる。さながら天国だ」
お前もそう思うだろと言ってくるけれど俺は小野ほどハマってないからなぁ。確かに多少は読むけれど、暇つぶし程度といった感じ。
「教授入って来たし準備しようぜ。今日の三限目の実習、春野さんとせっかく一緒なんだから頑張れよ」
こいつ何かと春野さんの話題出してくるけど何かあったの? 俺と春野さんは何の関係もないよ?
そしてこいつのせいで思い出してしまった。今日の三限目は実験なのだがそれはグループで行う。
それがまさかの学籍番号バラバラで、春野さん、和真、後男女1人ずつと俺という絶対神さまの悪戯なグループになってしまったのだ。
春野さん男子の誰とも話そうとしないから、気まずいんだよ。男が俺と小野だけだからまだ良かった。小野は女子に興味ないし。
「まさか春野さん、女子好きとかではないよな?」
「小野。その説ワンチャンあるかもしれんが、バレたら殺されるから絶対いうんじゃないぞ」
勝手な偏見でそんなことを口走ると炎上案件だ。こいつは世の中の事象を全てラノベとかで考えるクセがある。次元の混合は危険。
「でもまぁ今日こそちょっとくらい話せたらいいな。春野さん、お前に気がある感じするし」
ニヤっとしながらそんなことを言ってくる。絶対そんなこと思ってないくせに。
「お前、何をどう考えたらそんなところに行き着くんだよ」
「これまでの経験だ。誰よりも恋愛をした俺の、な」
「何言ってんだ」
ラブコメを読み漁っているだけで、せっかくのルックスを台無しにしているやつが何か言っている。
軽くチョップを和真の頭にかまして鞄から参考書を取り出す。あぁ、講義室はクーラーが効いていて気持ちいい。
「照れなくてもよろしい」
「照れとらんわ」
と、俺は照れた顔を隠すように筆記用具を取り出した。
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