第77話 進展
「おめでとう二人とも!」
美吹とお互いに抱き合っていると勢いよく部屋の扉が開かれた。そこにはすごい笑顔の二人と手には何故かスマホがきっちり握られており、そこから俺の声が聞こえてくる。
「ちょっ! 何で動画撮ってたんだよ!」
恐ろしいことに俺が美吹に一世一代の告白を動画に収めていたのだ。両親は二階の部屋にでも行ってくれていると思っていたら、ドアの横で聞き耳を立てていたことになる。
そして流れてくる俺の言葉。恥ずかしさで穴があったら入ってそのままずっと閉じこもっていたいくらいだ。
別に美吹に言ったことに嘘偽りがあるわけではない。ただそれを両親に聞かれるのと、こうして記録に残されるのは別。
死ぬほど恥ずかしい。悶え死ぬ。ただ今は、嬉しそうにもたれ掛かっている美吹に免じて許すことにしよう。
後でキツく二人には言っておくけれど。
その後、落ち着いてからまた食事を再開した。先程とは違う、照れによるぎこちない時間になったが雰囲気は温かく心までポカポカになった。
風呂に入ってさっぱりした後、美吹は俺の部屋に来ていた。先ほどの件もあり、二人でここで寝ることにした。
ただ同衾などはせず、美吹と二人で床に布団を二つ敷いて寝ることになっている。意外にも美吹の方から言い出したのだ。これ以上だと何するか分からないからだとか。
ただ手だけは握ってお互いの存在を確かめ合っている。にぎにぎするとくすぐったいけれど、美吹も握り返してくれた。
「ねぇ颯汰くん、ありがとう」
「急にどうした?」
明かりを消してあるため、美吹の表情は分からない。けれど声音で分かる。本当に嬉しい時の声だ。
「嬉しかったの。颯汰くんが私のこと大切にしてくれてるってすごく分かったから。あっ、疑ってたとか不満かあった訳じゃないよ? さっきのであぁ、私は颯汰くんと一生を添い遂げるんだって分かっちゃった」
「その言い方はちょっと照れちゃうな。でも本気だから」
「うん。私も本気だよ」
「それじゃあ寝よっか」
「そうだね。おやすみなさい颯汰くん」
◆◆◆
「ヘックシュン!」
何故かくしゃみが出てしまいました。誰かが私のことを噂しているのでしょうか。もしそうなら、先輩がいいなぁ。
「最近会えてないなぁ」
誰に会えていないのか。それはもちろん川上颯汰先輩にです。
私と颯汰先輩との接点はバイトしかありません。あ、私勝手に颯汰先輩って呼ばさせてもらってます。
「先輩最近バイト来ないんだもん」
1週間くらい実家に戻っていると言っていたけれど、長い。長すぎます。
先輩はたくさんシフトに入っていたので私がシフトに入れば基本いてくれました。でも今はいないのです。川内さんたちがいるので問題はないのですが、やっぱり心に穴が空いていいます。
「今先輩何してるのかなぁ」
連絡先の交換くらいしておけば良かったと後悔しています。先輩が戻ってきたら絶対しておきましょう。
「流石に美吹先輩が怒るかな」
いや、美吹先輩なら許してくれるはず。そういえば、美吹先輩も最近シフトに入っていませんね。
「ん?」
私は何かを感じて咄嗟にスマホを開いてシフト表を確認します。すると颯汰先輩と美吹先輩が丁度1週間同じ日から休んでいるのです。
「ま、まさか……?」
私がこの真実を知るのはもう少し後のことでした。
更新が遅くなり申し訳ありません。今学期は大学のレポートと勉強に追われていまして……なんとか更新できるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします
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