第24話 後悔

 暗い部屋の中、俺は力なく玄関に座り込んでいた。


 さっきまで駐輪場のところで呆然と立ち尽くしていたが、他の住民の人が怪しそうに俺の方を見てきたのでなんとか部屋に帰ったというわけだ。


 ただ何もする気は起こらず、放心状態のまま自分のしたことを何回も何回も責めるだけ。


「でも、次はちゃんと伝えないと……こんな最悪形で疎遠になりたくない……」


 このままだと春野さんと話せることはなくなるだろう。せっかく仲良くなれたのに。横で講義聞いて一緒に勉強頑張ろうって約束して。


「ここで止まるわけにはいかない」


 荷物を机の上に置いて明日のシフトをスマホで確認する。そこには春野美吹と川上颯汰の名前が書いてあった。


 それは神様(店長)が俺にやり直せと、責任を果たせと言っているってことだろう。1ヶ月前からこのことを予測していたのか。さすが神様(店長)。


 覚悟を決めるしかない。とにかくまずはシャワー浴びよう。




 シャワー浴びてスッキリした。そしたら明日のバイトの制服のアイロンがけをして今日の復習をして。それも終わったので布団に入る。


 目を瞑ると浮かび上がってくるのはやはり春野さんの告白シーン。俺に好きと言ってくれた時の真っ赤になった顔と、その後の酷く辛そうで悲しそうな顔。


 後者の顔はもう二度と見たくはないし、そんな顔はもうさせない。


「春野さん……ごめん……」


 もう何度目か分からないほどの謝罪。そして俺は眠りについた。







「おっす颯汰。昨日のアニメ観たか? ヒロイン可愛すぎて悶絶だっただろ」


「昨日はラストまでバイトで観る暇なかった」


 いつものように講義が始まるまで和真と無駄話。しかし、内心はそれどころではない。今日は俺の人生にとって大一番。男にはやらなければならない時があるというが今日がまさにそれだ。


「いやいや、颯汰も好きな作品なんだからリアルタイム視聴は義務に決まってるだろ。せっかく感想言い合えると思ってたのにさ」


「昨日はそれどころじゃなかったんだよ」


 アニメあったことすらあの時は覚えてなかった。あの時俺の頭にあったのは春野さんのことだけ。


 と、講義室の前の席の方に春野さんがいるのが見えた。当たり前だがこっちの方は見てくれない。


「そういえば今日は春野さんの横に座らないんだ。やっぱりあの日たまたまだったってことだな」


「そ、そりゃ、な……あったりまえだろ?」


「ちょっと颯汰。その反応なんかあったな?」


 鋭い。そりゃとんでもないことがあったさ。ただこれは絶対に言わない。全てが終わったら言おう。それが吉報か悲報になるかはわからないが。


 とにかく今日の講義は全然頭に入ってこなかった。

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