第70話 罰
朝の日差しが気持ちいい。こうして朝日を浴びると一日のエネルギーが充填されていくみたいだ。やる気がみなぎってくる。
そんな中俺は何故か正座させられていた。こんな気持ちの良い朝なのに。
「それで、なんで私から逃げようとしたの?」
「逃げようとしたわけじゃなくて。男女が同衾するってことを親にもし何かの間違いで知られたらやばくなりそうだから、その可能性を消しておこうかなと」
今日のうちの朝は裁判が行われている真っ最中で、裁判長は春野美吹、被告人は川上颯汰。罪状は一緒に寝てたのに抜け出そうとした罪。
可愛らしい罪状だが、発言によっては断罪するよとその目はいっているように感じる。逆なのに! 如何わしいと思われないようにとの俺の配慮だったのに。
「別に変なことは何もしてないでしょ? 部屋に布団が1組しかないから一緒に寝たってだけなんだから」
「いやー。美吹、俺の母さんに会わせたらついつい一緒に寝たんですとか言っちゃいそうだから。秘密ねって言っても言いそうだし」
もしそんなことをうちの母に知られたら10倍に誇張した話が親戚中を駆け回るだろう。それを避けるために、仕方なーくこういう手段に出ただけ。
別にこのまま密着していたら変な気を起こしそうだったとかそういう訳ではない。朝からやばいことになりそうだったということも違うから、間違えないで欲しい。
「判決」
「えっ? 早くないですか?」
まだ全く自己弁護してないのだけど。こんなことあっていいのだろうか。
「颯汰くんは有罪です。と、いうことで罰を受けて貰います」
「ちょっと待ってください! それは納得いかないですって!」
「ダーメ。すぐに執行します」
法治国家の日本でこんな横暴か許されるのか。そんなことを考えているうちに美吹が迫ってくる。そして……そのまま俺をギュッと抱きしめた。
何をされるのかと身構えていた分拍子抜けというか、予想外というか。
「颯汰くんが逃げようとしてくっついていられなかった時間分、こうしてるから。それで許してあげる」
ご褒美では? なんて一瞬思ってしまったがこれが罰なら仕方ない。俺の方からも美吹の背中に腕を回して抱きしめる。
「こ、こんなことしたって時間は短くからないからね! むしろ延びることになっちゃうんだから!」
嬉しそうな声で言う美吹。こうなったら、絶対に母さんに言わないように言うしかないな。何か聞いてきても絶対に言わないように。
ただ、俺もこの美吹の温もりには抗えないことが良くわかった。
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