第14話 サークル勧誘
「そういえば川上くんはサークルとかは入らないの?」
帰り道も残り半分ほどになった。やっぱりこの涼しい空気を走っていても、春野さんとこうして話しながらだと心臓がバクバクとうるさい。
「サークルとかは入らないかな。今の感じバイトだけでもかなり手一杯だし。勉強も頑張るって春野さんに言ったからね」
サークル勧誘は四月の入学式以降頻繁に行われていた。しかし、今はもうそんな姿は見かけない。
だいたい新入生もどこかのサークルとかに参加したからだろう。もちろん俺のように何にも入っていない人もいる。
「春野さんは……俺と同じで入ってないよね」
友達からめっちゃ誘われていたけれど断っていたのを思い出す。それに俺と同じようにここまでバイト、さらには勉強までしていたらこれ以上時間なんてないと思う。
「私、一応入ってるよ」
「えぇ!!??」
危ない。ハンドル操作誤って事故になるところだった。まさか春野さんがサークルに入っていただなんて。
「なんのサークル入ってる?」
もしキャンプサークルとかみたいなサークルだとなんだか嫌だ。たぶんこれは他の男とかと楽しく過ごす春野さんを考えたくないからだ。
「ボウリングサークルって言うところだよ。月一回の開催でまだ私も一回しか参加してないけれど、楽しかったよ。女子多めで話しやすかったしね」
「そ、そうなんだ……」
心配は飛んでいった。それにしてもそんなサークルが存在していたとは。全然興味なかったから知らなかった。
「月一だから全然負担ないし、良い気分転換になるよ。忙しかったら休んでも良いから名前だけって人も多いみたい」
「なるほど」
たしかにサークルって色々なところに入っている人もいるし顔を出さない人もいるって聞いたことがある。
「川上くんも入る? 今からでも全然遅くないし、一緒にボウリングしよう」
こんなに嬉しいことがあるだろうか。春野さんの方から俺をこうして誘ってくれているなんて。ここはもちろん返事は「はい」だ。
ボウリングは全然したことないけれど、春野さんと少しでも一緒にいれるなら。そんな下心と共に俺は返事した。
「あっ、もう着いちゃうね」
「本当だ。あっという間だった」
いつもと違ってこの帰り道は一瞬だった。この楽しい時間はもうお終い。駐輪場に着けば俺たちはさようならだ。
「またこうして一緒に帰ろうね」
春野さん……なんか俺にめっちゃ甘い。この横顔とかちょっとトロンとしていて……このままだと好きだと言ってしまいそうになる。
なんとか真っ直ぐ前を向いて自転車を漕ぐ。
なんとか心臓持ってくれ。あと少しだ。こうしてあと少しの道のりを俺は必死に漕いでいったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます