第68話 朝の出来事〈side美吹〉

「ふふふっ。颯汰くんまだ寝ちゃってる」


 私の横で愛おしい颯汰くんがいて気持ち良さそうに寝ている。まだ朝の6時過ぎ。この時間に起きてるのはお母さんと小学生くらいだよね。大学生はこの時間には起きないの。


 とはいえ私は起きちゃったわけです。私もいつもなら寝てる時間だけど、何故か起きちゃった。


「せっかく起きたんだから寝顔見ても良いよね」


 いつもはキリッとしてるのに寝てる時の子供みたいに可愛らしい顔。思わずほっぺたをつんつんしたくなるけど我慢。せっかく寝てるのに起こしたら申し訳から。


「それにしても自分が自分じゃないみたいだよ」


 今の私の格好もそうだし、こうして一緒に寝てることだっていつもの私ならしないはずだ。でも……でも颯汰くんといると何故か積極的になってしまうというか、自分を止められないというか。


「なんでだろうね」


 ボソッと呟くけれど、理由は分かってる。


 もっと颯汰くんに私のことを好きになって欲しいから。もっとドキドキして欲しいから。なんか、やりすぎちゃった気もしないでもないけれど。


「颯汰くんに包まれてるみたーい」


 シャツ借りて一緒の布団で寝てさらに横に颯汰くんがいる。私全体が颯汰くんに包まれてる! ちょっと変態っぽい?


「変態かは置いておこ」


 私が変態かなんて誰も知って得しないし。それにたぶん私変態じゃない。単純に颯汰くんが好きなだけ。


 せっかくこんな添い寝状態なんだからもっと堪能しないと。可愛い寝顔こっそり写真に撮りたいけれどスマホが手元にない。ゴソゴソしたら起きちゃうだろうし、私の脳内フォルダに保存しておこう。


「それにしてもこの1ヶ月弱で私の生活が180度変わっちゃった」


 シャーロちゃんの後押しで私が告白して、逃げちゃって。そのあと颯汰くんの方から好きだと言ってくれて、実は彼女いないってことまで分かっちゃって。


 昨日は一日中デートして今は颯汰くんの布団の中。そしてこの夏休みにご両親にあいさつ。私の家と違って両親もいい人なんだろうなぁ。


 高校まで全く楽しくない人生だったけれど今、私すっごく毎日が楽しい。大学もただ過ぎるだけなんだろうなと思ってた4月の私びっくりすると思う。


「ひゃぁ!」


 ちょっと回想に浸っていた私に不意打ち。なんと颯汰くんが私に抱きついて来たの! 予想外過ぎて頭が回らない。 


 ただ颯汰くんも起きてるわけではないらしい。私を抱き枕か何かと勘違いしてるみたい。


 でもでもどうしよう! こんなことになるなんて思ってなかった。あっ、颯汰くん結構強めに抱きしめてくれてる。これはこれで良いかも……ってそうじゃない!


 んっ? よく考えたらどうもしないで良いんじゃない? いつも遠慮して颯汰くんの方から来てくれることないんだからこのままの方が良さそう。


 私の方からも軽く颯汰くんの方に腕を回す。するとさらに力強く抱きしめてくれる。


 それと同時に私もまた眠たくなってきた。朝早かったからかな。


 こうして私は抱き合うようにまた眠りについた。

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