第6話 帰り道
「あの……なんで春野さんがここに?」
「それは私のセリフ。まさか私について来たの?」
「そんな訳ないよ! だって俺、ずっと春野さんの前を自転車で走ってたじゃん」
「確かにそうだけど! そうだけど、こんなこと考えられないし」
春野さんとここまで面と向かって話のは初めてかもしれない。本当ならめちゃめちゃ嬉しいことなはずなのに今の俺にはそんな余裕はなかった。
なんでこんなことになっているのか説明しよう。
「お疲れ様」
「オツカレ!」
「お疲れ様です」
「おつ〜」
ラストが終わって家に帰ることになった。みんな挨拶して裏にある自転車のところへ。春野さんも確か自転車で来てるんだったよな。
夜の涼しい空気が疲れた身体を気持ちよく包んでくれる。あとは帰るだけ。今日は春野さんのあんな顔を見ることが出来ただけでも忘れられない日になったな。
この時の俺、甘かった。今日残り40分くらいで、この人生でもトップに入るほどの驚く出来事が起こるとは思っていなかった。
夜の車通りの少ない道を自転車で走る。と、ここで信号に引っかかってしまった。
キキッー
そんな音と共に俺の後ろに自転車が停まる。こんな時間に珍しいな。ちょっと振り返ってみよう。
それはちょっとした出来心だった。振り返るとそこには間違える筈のない人が、春野さんがいたなのだ。
一瞬驚いたが落ち着くと納得も出来る。米屋から大学までは遠い。そして家は大学の近くに借りるはず。
つまり単純に春野さんもこっち側に家があって、帰り道が同じだということだ。なら、これからシフト終わりが同じになったらこんな感じになるってこと?
よし、店長シフト終わるの同じにして欲しいって相談しよう。多分(絶対)しないけど。
そんなことを考えていると信号は青に。
家が近づいてきたが、春野さんの漕ぐ自転車の音がずっと後ろからしている。まぁそうだよな。大学の周辺にはたくさんアパートとか賃貸多いからな。
じゃあそろそろ春野さんとは今日はお別れか。俺が住んでいるのはちょっと路地に入ったところにある。
流石に春野さんはこの大通りのいかにも家賃の高そうな場所に住んでいるのだろう。
そして大通りから右へハンドルを切る。おやすみなさい春野さんと心の中で言ってあと家まで数百メートルを漕ぐ。
そしてようやっと家に着いた。あとは自転車にカギをして……
「「あ……」」
神さまが俺にくれたお土産は他にもあったらしい。こう見ると神さまは俺にちょっと甘いのではないかと思ってしまう。
そう。まさかの住んでるアパートまで同じだったのだ。
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