第31話 交換成功
「川上くんっおはよっ!」
天使が俺の前に舞い降りた。この表現が一番しっくりくるだろう。
「おっ、おはよう。どうしたの?」
この笑顔を見ると昨日の出来事が本当だったことを実感する。そして周りはさらにざわざわし出す。
春野さん何をするのだろう。と思った時、ポケットをゴソゴソ。そして取り出したものはスマホ。
これはまさか。俺と同じことを考えてくれていた?
そんな俺の予想を肯定するように春野さんが口を開いた。
「連絡先、交換しよう?」
講義室が静まり返った。まだ開始まで時間があり、いつもならそれぞれ好き勝手に喋ってるのに、式典並みの静けさになってしまった。
みんなが聞き耳を立てているのが分かる。唯一横の和真だけはアニメのサイトを開いていて興味なしといった感じだ。こいつブレないなぁ。
というか周りの視線が痛い。特に男たちは殺気を放っており、女子たちは興味津々といった感じでこちらを見ている。
でも春野さんがこうして来てくれているんだから俺は堂々と交換すれば良い。俺もスマホを出してQRコードを見せた。
春野さんが読み取ると交換完了の文字と新しい春野さんのアカウントがスマホに映し出される。
可愛らしいうさぎのアイコン。そしてスタンプが送られてきた。カメがよろしくとプラカードを持っているものだ。
「ありがとう川上くんっ。それじゃあまた後でね」
そういうと春野さんはまた自分の席に戻っていく。
それと入れ替わりのように男子からの質問責め。なんか前にもこんなことあったよな?
しかしベストタイミングでチャイムが鳴り、問い詰められることはなかった。今日はこの一限以降は教授が学会に出世で休講になったので何にもない。つまり一瞬で逃げれば質問責めにされることもない筈だ。
とにかく講義に集中。予習復習をしていたお陰でかなり内容は頭に入ってきた。
◆◆◆
「なんとか……帰って……来れた……」
講義が終わった瞬間からの逃走劇。それを見事に完走した。
そういえば春野さんはまた後でねと言っていたような。それって話したいことがあるとかそういうことだよね。
まずいのでは? 約束すっぽかして1人で帰って来たとか最低じゃん!
急いでメッセージアプリを開いて春野さんにごめんと送信する。まさか最初のやり取りがこんな謝罪だなんて。
しかし、五分くらい経っても既読がつかない。五分とか普通だろとか思うだろうが、今は不安で仕方ない。
そんな時だった。
「あれ、川上くん」
自転車を押してこちらの方へやってくる。既読が付かなかったのは自転車に乗っていたかららしい。
直接出会えたのは幸運だ。
約束すっぽかしたことを謝ろう。
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