第50話 テストおつかれ
「テストお疲れい!」
「カンパーイ!」
「お疲れ様」
「お疲れさまでーす」
ここは近所の焼肉店。テストが終わった俺たちは打ち上げを開催していた。リーズナブルで食べることができるこの店には連日多くの客が訪れる。
それでもやはりいつもの食事よりは値段が2、3倍になってしまう。でも今日だけは特別。こんな日があっても良いと思う。
ただ今日集まったメンバーがなかなか問題だ。俺、和真、春野さん。この時点でカオスな感じだが、和真の横に座るフリフリな服を着た女性が一層この空間を混沌とさせていた。
「私まで誘ってくれてありがとう。春野ちゃんとこうしてお喋りすることってあまり無かったから嬉しい」
「そうだね。あはは……だって佐野さんちょっと近寄り難い感じだったから」
「えー? 佐野ちゃんめっちゃ面白いよ。仕事中とかすごいよく喋るんだぜ」
グッとサムズアップして横に座る佐野さんの肩を抱く和真。勘の鋭い人はここで気づいたかも知れない。
そう。この同級生の佐野さんと和真は同じバイト先の仲間なのだ。つまりあのディープなオタクショップの店員。和真と同じオタクな女の子。それが佐野さん。
一人でグブフとしていることが多くあまり関わることが無かったが、こうしているとお喋り好きな普通の女の子ってイメージだな。
そしてこの二人、お付き合いしているのかと思ったけれどしていないらしい。趣味も合ってなかなか良いペアだと思うのだけど……後少しと言ったところだろう。
和真ずっと独り身かと思ったから安心した。と、俺が勝手に安心していると次は和真から俺に質問が飛んできた。
「それで、颯汰と春野さんは付き合ってるってことで良いの? そんな雰囲気はあっても認めてはなかったよな?」
「ま、まぁな。でもそうだな、俺と春野さんは付き合ってるよ」
大学の人に言ったのはこれが初めてかも知れない。横の春野さんを見てみると嬉しそうな顔をしてくれた。俺たちの反応に満足したのか和真もうんうんと頷いている。
「ずっと俺に春野さん可愛いとかいろいろ言ってきなもんな。そんな颯汰の恋が成就して良かったぜ」
「いらんことを……」
「その話詳しく!」
俺が止めようとしたところを邪魔してきたのは春野だった。興味津々といった感じで和真の話に食いついた。
ストレートに春野さんの良さを語って、付き合いたいだのなんだのと言ったことを本人に知られるのは羞恥プレイというものだ。絶対に嫌。
「ほらほらせっかく焼肉屋に来たんだから注文注文!」
みんなの意識を逸らすように言えば、さっきまであまり気にならなかった肉の焼ける匂いや音が食欲をそそってくる。
「まずはカルビとタン! 他に何かいる人!」
こうして俺たちの打ち上げが始まった。
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