第49話 明日はテスト
来週には春野さんとの初めてのデートを控えた大学生の俺だが、学生には定期的に逃れられない試練というものが存在する。
そう、定期試験だ。これが沢山の学生を苦しめる。試験を楽しみに待っている人などもはや狂気としか言いようがない。
「明日からテストだけど頑張ろうね! ちょっと楽しみ」
まさかのいた。こんな近くにテスト楽しみとか言ってる狂人が。俺の恋人はもしかしたら変人なのかも知れない。
「楽しみなんだ……」
流石にちょっとテンション低めの反応をしてしまう。テスト頑張ろうとは思っていても、テストは嫌なのだ。
「うんっ。だって頑張ったらそのあとは川上くんとデートだもん。えへへ。テストは大変だけど、デートすっごく楽しみだから」
「たしかにテスト楽しみだね!」
人の考えはここまで一瞬で変わるものらしい。春野さんのこの笑顔を見ると、何故かデートとは関係ないテストまで楽しみになってくるではないか。
「大学のテストって点数が開示されないから勝負できないのちょっと残念。私が勝ったら何か一つ川上くんにお願いしようと思ったのに」
「成績って優、秀、みたいに出るんだっけ」
「そうそう。だから79点と80点にすっごく差が出ちゃうの」
大学の単位において60点以上を取れば単位認定される。60点未満なら不可。以上なら卒業へ一歩前進だ。
ただ優劣をつける為なのか優、秀、良、可とランク分けがあるのだ。就活の時などに役立つらしい。
和真は全部「可」なら卒業できるしいいだろというスタンスだが、春野さんは出来るだけ上を目指したいといスタンスのように感じる。
「頑張ったことが評価されるのは嬉しいから……」
そう言う春野さんの顔はなんだか一瞬だけ曇ったような顔がした。しかし、すぐにまたいつものように笑顔になったため、あまり気にすることもないだろう。
「あ、もうお昼になっちゃうね。食材持ってきたからキッチン借りても良い?」
報告が遅くなってしまったが、今俺の部屋でテスト勉強に励んでいる。少しは春野さんがこんな近くにいる環境に慣れたのでなんとか集中して勉強出来ている。
でもたまに目があったり春野さんが動いたりすると心臓が跳ねてしまうのはもう仕方ない。もっともっと春野さんと一緒にいたらいつか、これが普通になるはず。
「今日は俺が作るよ。春野さんには前に作ってもらったんだから」
俺だって少しは作れるのだ。春野さんには遠く及ばないけれど。
「だめだめ〜。私が作るの。今日も考えてきたんだから。川上くんが好きそうな料理をね。だから私に作らせて欲しいな」
上目遣いでそんなことを言われたら「はい」と言うしかなくなってしまう。今はこの春野さんの攻撃に耐えられないが、いつか耐えて俺が料理を作る番になりたい。
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