《魔力無限》のマナポーター ~パーティの魔力を全て供給していたのに、勇者に追放されました。魔力不足で聖剣が使えないと焦っても、メンバー全員が勇者を見限ったのでもう遅い~【書籍化&コミカライズ】
7.マナポーター、アクシスの村で勇者として物凄く歓迎される
7.マナポーター、アクシスの村で勇者として物凄く歓迎される
歩くほど4時間。
僕とアリアは、行商人に案内されるままにアクシスの村に到着した。
荷台に載せてもらい楽な旅だ。
「ささ、勇者さま。アクシスの村へようこそいらっしゃいました!」
「だから僕は勇者じゃ――」
「先輩? 過ぎた謙遜は、ときに嫌味になりますよ」
「勇者様っていうのは謙虚で向上心を忘れないお方なんだな。正直『俺は聖剣に選ばれたんだ!』みたいな、もっと嫌みな奴かと思ってたよ」
行商人のおじさんがしみじみと言う。
……うん、本物はそんな感じです。
「おかえり、おじさん! そっちの人たちは誰ですか?」
「ふっふっふ。聞いて驚け! なんと聖女様と勇者様だ!」
こちらに気が付き、ひょこひょこと少女が話しかけてくる。
「だから僕は勇者じゃなくて――」
「街道沿いでモンスターに襲われているところを、凄まじい神聖魔法で助けて貰ってなあ……」
「こんにちは、聖女・アリアです! おじさんにはお世話になってます」
ひょこっとアリアが顔を出した。
「こんな寂れた村まで、ようこそおいで下さいました。何もないところではありますが、どうぞゆっくりして行ってくださいませ!」
「小さいのにしっかりしてるね。偉い!」
アリアは屈みこみ、少女の頭を優しく撫でた。
小さい子が相手なら、アリアの人見知りは発動しないのだ。
「おやまあ、聖女様と勇者様がこんな場所まで! こんな所に立たせておくなんてとんでもない。すぐに宿屋に案内しなければ!!」
「この聖女様可愛い! お持ち帰りしたい!」
「勇者様が――!? 握手してくれ、隣町の奴にうんと自慢してやるんだ!」
(え、ちょっ。なにごと、なにごと!?)
わらわらと人が集まって来た。
その誰もが人の
「ううっ……先輩、助けて下さい!」
「アリア……。聖女だなんて大声で言ったら、こうなるに決まってるよ」
村人に囲まれ、アリアは涙目になった。
アリアは努力家だ。完璧な聖女となるために、人付き合いの苦手さも乗り越え完璧な笑顔を作り出す。
しかしキャパシティーを超えてしまうと、取り繕う余裕が無くなってくるのだ。
「ちょうど村の特産品のヒューガ・ナッツが取れたところなんですよ! 是非とも勇者様に食べて欲しいです!」
「うう……」
――今のように。
仕方ないな。
「歓迎ありがとうございます。このような素敵な村に来られて幸せです」
僕はアリアを庇うように前に出て、丁寧に頭を下げた。
彼女はぴゅーんと僕の後ろに隠れる。
(う~ん、アリアは変わらないな。最近はだいぶ良くなったと思ってたんだけど……)
幸いにしてアリアの様子に疑問を持った者は居ない。
代わりとばかりに、僕の方にも木の実の山を差した。
「バカ! ハムスターじゃないんだよ。勇者様にヒューガ・ナッツをそのまま出す馬鹿がどこにいるんだよ!?」
「その……。最近はマナ不足が酷くて、精製器の機械のメンテナンスが追いついてなくて。畑を耕すのも人力だと限界があるし――これからの作業を思うと気が重くなるな」
「マナ不足なら、僕の方でどうにか出来ると思いますよ?」
「そんな! 勇者様に雑用みたいなことをさせる訳には――!」
「気にしないで下さい。そういう裏方作業は、僕がもっとも得意とするところです」
まごうことなき本心である。
そうして僕は、村の一角に案内された。
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