《魔力無限》のマナポーター ~パーティの魔力を全て供給していたのに、勇者に追放されました。魔力不足で聖剣が使えないと焦っても、メンバー全員が勇者を見限ったのでもう遅い~【書籍化&コミカライズ】
70.【SIDE: イナーヤ隊長】意気揚々とモンスターの群れに突っ込むも、まるで通用せずに逃げ帰る(1)
70.【SIDE: イナーヤ隊長】意気揚々とモンスターの群れに突っ込むも、まるで通用せずに逃げ帰る(1)
「まったく。何故、中央騎士団が冒険者などと行動を共にせねばならんのだ」
今回の作戦には、最初から不満しか無かったのだ。
口聞き方も知らぬ身の程知らずたちに雑用を押し付け、俺(イナーヤ隊長)は意気揚々とサルファー砦に向かっていた。
「ふん。モンスターなど恐るるに足らんわ」
今回の遠征は、言わば踏み台である。
中央騎士団に更なる名誉を呼び込むボーナスステージに過ぎないと、俺は考えていた。
彼らが荷運びをしている間に、中央騎士団が大きな戦果を上げれば良い。
そうすればいかに勇者パーティであろうと、大きな顔は出来なくなるだろう。
国王陛下からもますます頼りにされるはずだ。
「ほんとうに大丈夫ですかね?」
「そうです。地方の守り万全のはずでした――なのに救援要請が届くとなると……」
「ええい、腑抜けたか! またとないチャンスであるぞ! 我々、中央騎士団に打ち倒せぬものなど何もないわ!」
機会があれば、魔王すら討って見せると俺は本気で考えていた。
なんせ宮廷剣術の親善試合で、一度たりとも苦戦したことすらないのだ。
世界で一番強いのは俺だ。
宮廷剣術の親善試合など、観賞用の側面が強い
いわば実戦ではなく型に従った演武に近いようなものなのだが――イナーヤ隊長は知らなかったのだ。
そうして俺は明るい未来を疑いもせず、サルファー砦に到着した。
◆◇◆◇◆
「ついに救援要請が届いたんですね! お待ちしておりました!」
サルファー砦に到着した俺たちは、丁重に迎え入れられる。
出迎えてくれた騎士団員には疲労が見え隠れしていたが、その表情は明るい。
「はっはっは。我々、中央騎士団が到着したからには、もう大丈夫だ。すぐにでも敵を蹴散らしてくれよう!」
「は、はあ……中央騎士団もいらしてくれたのですね?」
出迎えに来た男は、そこで不可解そうに首を傾げた。
「ところで肝心の支援物資と、冒険者の方々はどこにいますか?」
「冒険者たちなら支援物資は近くの村で降ろしている。じきに届くだろう。雇われ冒険者には、ちょうど良い仕事だな」
「なんですって!? くそっ……事態の重要性が伝わらなかったのか。後方支援しか出来ない冒険者しか集められなかったんだな?」
「いいや。緊急クエストが発令されて、冒険者の精鋭たちが集められた」
「ならどうして、後方支援なんてしてるんですか!?」
「ふん、俺の判断だ。ああ、例の勇者パーティも来ていたぞ? 口ばかりが達者で、気に食わん奴らだったな」
イナーヤ隊長の中では、実力はないのにコネで国王陛下に気に居られた奴らということになっていた。
さらには村でも歓迎され、瞬く間に希望を与えていた。
――嫉妬しかなかった。
「例の勇者パーティって、リリアン様とイシュア様が所属してるっていう伝説のパーティですか!? そんな方々に来ていただいて荷運びなどと――中央騎士団はいったい、何を考えているんですか!?」
「ああ? 俺の判断に、何か文句があるのか? 我々だけ居れば十分だ!」
「歴戦の冒険者は、1人で100人分の働きをすると言われています。少しは現実を見てくださいよ……」
「貴様ッ! 騎士団よりも冒険者の方が優れているとでも言うつもりか!!」
俺は騎士団員を怒鳴りつけた。
あまりに失礼な物言いだだる――見ているものが居なければ、この場で切り捨てていたところだ。
「貴様らも、なにか文句があるのか!?」
「いいえ、滅相もございません!」
「冒険者ごときに舐められぬように、気合を入れろよ。怯えるような軟弱者は、我が中央騎士団には必要ないからな!」
何を不安そうな顔をしているのか。
それでも栄えある中央騎士団の選抜メンバーか。
俺はイライラしながら部下を引き締めにかかった。
「指揮権はサルファー砦の居る我々にある筈です。中央騎士団はここで待機、冒険者の皆さんの到着を待ってください」
「それでは手柄を横取りされる可能性がある! すぐにでも戦場に出るぞ!!」
何故、地方に飛ばされた騎士団員の言うことを聞かなければならないのか。
俺が目指すのは、戦場の中でも最もモンスターが多い激戦区。
早速、砦に勤めていた騎士に場所を尋ねて、向かうべき場所に当たりをつける。
そうしてサルファー砦に到着した俺たちは、中央騎士団の面々を引き連れ
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