《魔力無限》のマナポーター ~パーティの魔力を全て供給していたのに、勇者に追放されました。魔力不足で聖剣が使えないと焦っても、メンバー全員が勇者を見限ったのでもう遅い~【書籍化&コミカライズ】
45.【SIDE: 勇者】勇者、偽の万能薬を売り込もうとするもアッサリと見破られる!
45.【SIDE: 勇者】勇者、偽の万能薬を売り込もうとするもアッサリと見破られる!
不死鳥の丸薬という危険極まりない薬を運び、俺たちはハーベストの村に到着した。
「おい、新入り。最初の仕事だ。俺たちはここで待ってるから、最初の何本かを売り込んで来い」
「なんでそんなことを、俺が――!」
居丈高に命じられて思わず反発するが、
「これはおまえの腕を見込んでのことだ。危険ではあるが――元・勇者の実力者であれば、何か起きてもすぐに対応できるだろう?」
「これはおまえにしか頼めない重要な役割なんだ」
そう懇願されては、引き受けざるを得ない。
完全に上手いこと乗せられた俺は、そのままハーベストの村に入るのだった。
◆◇◆◇◆
「この村で例の病気の患者を受け入れていると聞いたのだが――」
俺はたまたま見つけた村人に声をかけた。
「おやまあ。どうしたんですか?」
「実は、王国で開発された秘薬を――極秘のルートで手に入れましてね」
(こんな胡散臭い話、誰が信じるんだ……?)
(田舎の村の連中なら、人をあっさり信じるマヌケしか居ないと言われたが……)
犯罪ギルドで教えられた作り話。
俺は半信半疑で相手の顔色を伺ったが、
「そうですか! こんな田舎の村のために、王国も動いてくださったのですね! ようこそいらっしゃいました。是非ともこちらにいらしてください!」
そうして俺が案内されたのは、村の中心にある広場であった。
何故か人が集まっている。
「あの集まりは?」
「実は少し前から、勇者パーティがこの村を訪れましてね? 診療所の患者を全員見ていただいて、今ではすっかり元気になっているんです!」
何故だろう。
そこはかとなく嫌な予感がした。
――そして、その予感は的中することとなる。
「アラン! どうして、こんなところに!?」
「イシュア!? 貴様こそ、どうしてこんなところに!!」
この村を訪れていた勇者パーティというのはリリアン一行であった。
「僕は白露の霊薬の運搬クエストを受けて、その成り行きでここに。リリアンが奇病の原因がもう少しで分かりそうだからって、無茶言って泊めてもらってたんだ」
「イシュア様が居てくださるだけで心強いです!」
「私も医術氏としての浅学を恥じるばかりです。マナを探れば、その者の体調がすべて分かるという考え方――ほんとうにイシュア様の理論には感動させられてばかりです!」
今は賢者のリディルの主導で、薬品の扱い方に関する講座を行っていたらしい。
当たり前のようにイシュアのもとに、元・パーティメンバーが集結しているのを見て、俺は何とも言えない気持ちになった。
それだけでなく――
(な、なんだこれは……)
こちらが偽の万能薬の運び屋なんて違法なクエストに手を染めている間に、あいつは1つの村を救ったとでも言うのか。
まるで歴史に名を残す英雄ではないか。
こんな現実認められるはずがない。
俺はあまりに冷静さを失っていた。
「ここにも万能薬がある! イシュアのような特殊な技能もいらないし、白露の霊薬なんかよりも遥かに安価な万能薬だ!!」
俺は声を張り上げて、手に持った『偽の万能薬』を高々と掲げた。
――掲げてしまったのだ
「ウソ!? アラン、どこでそんなもの手に入れたの!?」
イシュアの隣にいたリディルが、驚愕に目を見開いた。
賢者である彼女は、薬品全般にも詳しい。
「しまった」と思った時には、もう手遅れだった。
「リディル、どうしたの?」
「みー、あれは『不死鳥の丸薬』。万能薬のような効果があると錯覚させて、精神に異常をきたす危険物。王国では――所持しているだけで違法のはず」
(終わった……)
リディルの言葉に、広場が水を打ったように静まり返った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます