81. 凱旋パレード、決行されることになってしまう

 翌日のこと。


 リリアンが率いる勇者パーティは、その全員が、国王陛下から直々に感謝の言葉をもらうこととなった。王城に向かうことに慣れつつある自分が、少しばかり恐ろしい。


国王陛下との謁見を終え……、僕とアリアは真っ白に燃え尽きていた。




「う~、先輩~」

「ま、まさかあんな方法で押し切られるなんて……」


 そう、結論から言えば、凱旋パーティの決行を押し切られたのだ。

 それは、世にも恐ろしい脅迫方法であった――


「まさか本当に、金貨の山を用意する人が居る⁉」

「聖・アリア教会の設立ってなんですか⁉ 正気なんですか⁉」


「銅像を立てるって。というか建造計画書があって、すぐに進行できるって――」



 国王陛下の言い分は、こうだった。


 我が国では、僕たちの働きに報いる事ができていない。どうか報奨を素直に受け取って欲しい……などと言われ、深々と頭を下げられてしまったのだ。


 勇者任命と、凱旋パレードはその一環らしい。


 それとなく断ろうとすると、代替案として出てきたのは、数々の恐ろしい報酬の数々であった。金銀財宝に、貴族の爵位、領地にと……、平々凡々な冒険者生活を送っていれば、どれも無縁と思えるものばかり。

正直、思い出したくもない。



「リリアンは、これで凱旋パレードは二度目だよね?」


 差し迫った問題は、来たるべき凱旋パレードである。

いやまあ、パーティメンバー全員参加だから、勇者任命と関係ないけどね。


「うん。凱旋パレードも、勇者の役割なの」


 ぴょこんとアホ毛を揺らし、リリアンがそっと頷く。


「その……、僕は何をすれば?」


「イシュアさんなら、立ってるだけでもみんな満足なの!」


「その言葉、信じるからね⁉」


 焦った僕の言葉に、リリアンが本気か冗談か分からない顔でそう言った。




「リリアンは、良いの? その……、僕なんかが、勇者の称号を得てさ」


「ほえ? なんでそんなこと聞くの?」


「だってリリアンは、勇者に認められるまでに、厳しい修行をしてきて努力して――ようやくその地位を掴んだ訳だしさ。僕みたいな人が、ポッと出の人間が勇者になるなんて……。考えられないことじゃないかなって」


 リリアンは、目をまんまるにしていたが、



「イシュアほど勇者に相応しい人は居ないの!」


 と力強く返すのだった。

 屈託ない言葉に、リリアンの感情がすべて詰まっている気がした。


(相応しく――、か)

(改めて気合いを入れないと)



「リリアン、今度は勇者同士か――改めてよろしく」


「イシュアが勇者! とっても嬉しいの!」


 もちろん、リリアンとはパーティを組んだままだ。


 複数の勇者が一つのパーティに居たら、手柄の取り合いでややこしくなる場合もある。

あまり、一つのパーティに複数の勇者が所属することは無いらしい。


しかし、僕とリリアンなら、その心配もないだろう。

何なら手柄を押し付け合う勢いだ。



「えへへ、私も嬉しいです。ようやく世界が、先輩を正しく評価し始めたんですね」


「どちらかというと、世界が間違った評価を始めたんじゃないかな⁉」


 まあ、アリアもリリアンも嬉しそうだから、これも良いか。

 楽しそうなパーティメンバーを見ていたら、僕まで嬉しくなってくる。



 そのまま僕たちは、王城に泊まり、凱旋パレードに備えることになった。

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