《魔力無限》のマナポーター ~パーティの魔力を全て供給していたのに、勇者に追放されました。魔力不足で聖剣が使えないと焦っても、メンバー全員が勇者を見限ったのでもう遅い~【書籍化&コミカライズ】
63.フリーの日。リリアン、こっそりとダンジョンに旅立つ
63.フリーの日。リリアン、こっそりとダンジョンに旅立つ
その日を「フリーの日」としようと言い出したリリアンは、朝一から冒険者ギルドに向かっていた。
「珍しいな」
普段の彼女であれば、イシュアの後をこっそりと付けていきそうなものだ。
ディアナの予測は「それもどうなんだ?」という予測ではあったが、あながち間違っていない。
リリアンは人目を避けて、こっそりと行動しているように見えた。
そして――
「ほんとうにクエストを受けるのか」
リリアンは難易度の高いモンスター討伐クエストや、ダンジョン攻略のクエストをいくつか手に取った。
そしてそのまま受付嬢のもとに向かい、何事もなく受注すると、そのまま出発するのだった。
「リリアンはいつも、ああしてフリーの日にもクエストを受けてるッスか?」
「みー。冒険者ギルドで見かけてびっくりした」
リリアンの後をこっそり追いかけようとするディアナに、話しかける者が居た。
最近、パーティメンバーに加わったミーティアとリディルである。
「2人とも。何でここに?」
「みー、一日ゆっくりしてるだけってのも落ち着かない」
「普通にクエストを受けに来たッスよ」
そんな2人の回答を聞いて、ディアナは思わず苦笑いした。
ついつい気が付いたら冒険者ギルドに足が向かっていたというのだから、2人とも生粋の冒険者といったところだろう。
そうして彼女たちも、リリアンが1人でクエストを受注しているところを発見したらしい。
「う~ん、リリアンが休日に1人でクエストを受けることか」
ディアナは首を傾げた。
「そもそもフリーの日を作ろうなんて言い出すのも珍しいんだよな。私たちは故郷にいたときからずっと一緒だったし、こうして離れて行動するのも珍しいんだよ」
「みー。そうなの?」
「でも、パーティの規模も大きくなった。ときどきフリーの日を作ろうって判断は、おかしなことじゃない」
3人は顔を見合わせ――
「気になるッスね。後を付けてみるッスよ」
「みー。少し心配」
「賛成だ」
そんな結論を導き出した。
そして導き出された結論は、そんな興味本位のもの。
いたずらっぽく笑うミーティアと、やや不安そうなリディル。
先頭を進むリリアン。
後を付けるように3人――そんな不思議な光景が生まれたのだった。
◆◇◆◇◆
リリアンが向かったのは、中級者向けのダンジョンだった。
彼女の実力であれば問題ないと言い切れる難易度のダンジョンではあった。
それでもダンジョンでは何が起こるか分からない場所であり、パーティを組まずに1人で入るのは決して褒められたものではない。
「リリアン、本当にどうしてしまったんだろう……」
「心当たりは無いッスよね?」
「あ、ああ」
わざわざ一人きりでダンジョンに入るのは、ただいたずらにリスクを増やすだけだ。
そんなことが分からないリリアンでは無いだろう。
3人が見守る間も、リリアンはモンスターを手早く倒しダンジョンを進む。
勇者の固有スキル『幻想世界』を使わずとも、簡単な魔法を駆使して、現れる敵を撃退していく。
順調に攻略を進めるリリアンの後を、ディアナたちはこっそり追いかけた。
特に苦戦することもなくリリアンは最奥部に到着した。
ボス部屋と、その前に広がる休憩スペースとして使える広間。
さすがに単独でボスに挑むような無茶はしないだろう。
そんなメンバーの予想に反して、彼女はそのままボス部屋に入ろうとする。
「ま、待てリリアン! まさか単独でボスに挑む気か?」
「ディアナ!? それにミーティアさんにリディルさんまで。どうしてここに?」
後を付けていたことは少しだけ気まずいが、さすがに見過ごせない。
「みー。それはこっちのセリフ」
「単独でボスに挑もうなんて、何を考えてるッスか!」
これ以上は、リリアンの奇行を見逃すことは出来ない。
思わず飛び出したディアナたちを、リリアンは驚いた顔で見つめるのだった。
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