《魔力無限》のマナポーター ~パーティの魔力を全て供給していたのに、勇者に追放されました。魔力不足で聖剣が使えないと焦っても、メンバー全員が勇者を見限ったのでもう遅い~【書籍化&コミカライズ】
3.【勇者SIDE】聖女は勇者を見限り、イシュアを追いかけてパーティーから飛び出す
3.【勇者SIDE】聖女は勇者を見限り、イシュアを追いかけてパーティーから飛び出す
「ええっと、勇者……様? こんな朝早くからどうしたんですか?」
「我が勇者パーティが次に進む瞬間を、中心メンバーと分かち合いたくてな! 喜べアリア、ついにAランクダンジョンに挑むときが来たぞ?」
「はあ……。Aランクダンジョンですか?」
「勇者パーティの大いなる一歩だぞ? もっと喜んだらどうなのだ?」
アリアの反応は、俺の予測とは違った。
勇者パーティの躍進を喜んでくれるかと思ったが、実際は困惑したような表情で見つめ返してきたのだ。
「ええっと、Aランクはさすがに危険です。まず先輩に相談してみないと」
「はあ? 何故、そこであの落ちこぼれに相談しないといけないんだ?」
俺の言葉に、アリアは不快そうに形の良い眉をひそめた。
「まだそんなことを言っているんですか。埒が明きません、先輩はどこですか?」
その眼差しのあまりの強さに――俺は思わず気圧される。
「イシュアは……逃げ出した。Aランクダンジョンに挑むと伝えたら、荷物も持たずに一目散だったよ」
実際には俺が勝手に追放したのだが、出まかせを口にする。
うんと失望されれば良い。
この場に居ない以上、いくらでも印象操作も可能――
「そ、そんな……。まさか先輩が?」
案の定、アリアはショックを受けたようだった。
こいつは、何故かイシュアを慕っていたようだからな。
しかしアリアの口から飛び出してきたのは、俺の予想もしていない言葉だった。
「私たちは、ついに見捨てられてしまったのですか?」
「見捨てられた? それは違うぞ。Aランクダンジョンを恐れた無能が1人、臆病風に吹かれて逃げ出しただけだ。そんなことより――」
「あなたがそんなんだから、先輩に見捨てられるんです!!」
アリアはキッと俺を睨んできた。
あまりの迫力に、俺は口をぱくぱくさせていた。
「私、先輩を探してきます。先輩の魔力供給がないと、このパーティは成り立ちません。先輩を失ったらおしまいです!」
「こんな時に何の冗談を……。ま、待て! そんなことよりA級ダンジョン攻略の作戦会議を――」
「寝言は寝て言ってください!」
俺の静止も聞かず、アリアは森の中に1人飛び出していった。
「朝っぱらから騒がしいッス。いったい何事ッスか?」
「うみゅう……まだ眠い。これはイシュア様から魔力を貰わないと動けない」
間の悪いことに、大賢者と魔導剣士が起きてきた。
交わされる会話の中で、当たり前のようにイシュアが登場する。
――もうこのパーティにイシュアは居ないのに。
(あいつが落ちこぼれの詐欺師だってのは、いずれ分かってもらえるさ)
(でも――今、真実を言う必要はないな。隠そう!)
そうして俺はアリアに向けた説明を繰り返すのだった。
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