「なかなか骨のある母と娘だったぜ」 byラックル
「ようこそ、ご両人。今回依頼を受けたラックルだ、よろしくなぁ」
紫蘭『よろしくお願いいたしますねラックルさん、私は紫蘭と言います』
ゆかり『わたしはゆかり!よろしくねー』
「にしても、二人とも随分と変わった格好してるじゃあねえか。母親は角付き、娘はいかにもな天使ときたもんだ。なんとも妙な取り合わせじゃあねえか?」
紫蘭『変わった格好ときましたか。たしかにこんな見た目の私ですからね、悪魔と天使みたいな組み合わせにも見えるかもしれません。
それに今お世話になってる村の人達も、一時期は私の事を悪魔だーなんて言ってましたし』
ゆかり『おかぁさんよりこの人の方が、悪魔っぽい感じするけど?』
紫蘭『馬鹿言わないの、ゆかり!
ごめんなさい、ラックルさん』
「悪魔か、はっはそう言われたのは久しぶりだぁなぁ。でも、心配しなくていいぜ嬢ちゃん。それにあんたもな。オレぁ、喋り方からもわかるとおり、ガラも悪ければいろんな意味でロクデナシの人間ではあるが、好き好んで女子供相手にまで喧嘩を吹っかけたりゃしねえよ」
ゆかり『ろくでなし?』
紫蘭『それは後で教えてあげるからね、ゆかり』
「まあオレの事はいいだろうよ。どーせ、一期一会の交差点だ。信号が青になりゃあ、もう会う事もねえだろうからよ」
紫蘭『信号……?がなにかはよくわかりませんけど、そうですね。ここで別れたらもう二度とお会いすることはないのかもしれません』
「さて、オレの事もある程度理解してもらったところで、そろそろ本題に入らしてもらおうかい。聞くところによると、あんたらこれまでの人生においても、苦難なんて陳腐な言葉じゃ片付けられねえような道程を辿ってきたらしいじゃねえか」
ゆかり『大変だけどね、ゆかりはおかぁさんがいるからいいの!』
紫蘭『そういう世の中ですから……命があるだけ恵まれています。それに娘もいますから、私は幸せですよ』
「しかも、未だに安寧からは程遠いと来たもんだ。せっかくだから、これまで歩いてきた道程について、要点だけかいつまんで話しちゃくれねえか?」
ゆかり『おかぁさんと旅して、セレネお姉ちゃん達の村に住んでたら魔物に襲われちゃってね。それで女神さまにあったの。女神さまとお約束したんだけど、なにを約束したのか忘れちゃった……』
紫蘭『女神さまとのお約束はお母さんが覚えてるから大丈夫よ、ゆかり。
なのでその約束を守るために、これからは頑張っていくところです。
正直村に魔物の群れが来た時は本当に大変でしたよ……村長姉妹のセレネさんとメネさんを除けば村の皆は死んでしまいましたし、私も一度はそこで殺されました。
その後に女神様とある契約をすることで、娘共々生きていますけどね』
「そりゃまた艱難辛苦の限りだな。それだけでも一つの短編小説になりそうなほどに濃い内容じゃねえか。オレさんも修羅の道を駆け抜けてきた畜生だが、あんたのそれと比べりゃあ霞むってもんだ」
紫蘭『なるほど、だからラックルさんはそんなにも濃い血の臭いがするのですね。
……先程はもう二度とお会いすることはないかもしれない、そう言いましたが撤回しましょう。地獄でなら再びお会いすることがあるかもしれませんから』
「そいつぁいいな、死後の世界にも楽しみができるってんだからよ。ま、それだけ惨憺たる目に合ったんなら、せめて物語の最後はハッピーエンドを迎えたいもんだな。何の足しにもなりゃしねえが、あんたらの行く先に光明がある事を、闇から祈っておいてやるぜ」
紫蘭『ありがとうございます。
……えぇ、私は私の納得のいく終わりを。ハッピーエンドを迎えたいので、その為には何だってしますよ。
私も、ラックルさんにも良い終わりが来ることを祈っています』
「はは、あんがとよ!で、あんたと嬢ちゃんの事はいいとして、他にあんたの物語に関わるような人物はいんのかい?敵でも味方でもそれ以外でもいいぜ?」
ゆかり『んー……セレネお姉ちゃんとメネお姉ちゃんかな?
二人とも凄い美人なんだ。
セレネお姉ちゃんは村長さんでね、銀色の髪をしてて、とっても綺麗なの。それでね、たまに遊びに来てくれて絵本を読んでくれたりするの。
メネお姉ちゃんも綺麗な銀色の髪なんだよ、ちょっとぼさぼさだけど!
おかぁさんやセレネお姉ちゃんが忙しい時とか、ゆかりと遊んでくれるんだけど大体お酒臭いの……』
紫蘭『あとはソフィさんですかね、私の命の恩人でもあるんですよ。見た目は10代前半なのですが、私達よりも古い型の亜人種らしくて……ええと、吸血鬼って言っていました。博識で、とても強い人なんですけどどこか子供っぽくて』
「そりゃまた、個性的な面子が揃ったもんだな。ま、二人きりじゃないだけまだ救われてんじゃねえか?外野のオレさんにはわかんねえけどよ」
紫蘭『ええ、その通りです。皆さんには感謝してもしきれません』
「ははっ、そうかい。ちなみにこいつは興味本位なんだが、あんたは自分の人生を一つの物語に見立てた場合、何て題をつけるよ?」
紫蘭『Save Us from Dream……ですね。なんだか少し恥ずかしいですね、こういうの 』
「こりゃまた洒落た題だな、気に入ったぜ。どんな意味が込められてるのかは今は聞かない事にすらぁな」
紫蘭『お褒め頂きありがとうございます。
私達の物語はまだ始まったばかりですから、そうしていただけると助かります』
「さって、そろそろ信号が青になる頃合いだ。ぼちぼち、お互いに止めてた足を動かして、居るべき世界に戻るとしようや。達者でな、嬢ちゃん。それにあんたも。神様の粋な計らいで、再び因果が交差するときがあれば、そん時は一緒に酒かっ喰らいながらメシでも食おうや」
ゆかり『またねー、ラックルさん!』
紫蘭『名残惜しさを覚えますが、仕方ないですよね。
ラックルさん……私、外の人と話すのは初めてでしたので楽しかったです。もしも再びお会いできたら、その時はお酌させていただきます』
「それと、オレたちと同じように赤信号で足を止めて、なんとなくこの会話を聞いてた野郎淑女共。てめえらも気が向いたら、そこの二人の行く末を見守ってやってくれや。そんじゃ、あばよ」
※残酷、凄惨な描写が盛りだくさんのシビアな世界です。人によっては不快感を覚える場合もございますので、閲覧される際はそれらに注意の上でご覧くださいまし↓
『Save Us From Dream』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054917377548
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