「行動的で努力家な神様の降臨ですよー」 byクレッセ



『此処は何処だ……また別次元にでも飛ばされたか。また力が戻って居なかったら良いが…… 』


「おやおや、今回のゲストは少々ご機嫌斜めですねー」


『む? 誰だお前は……。この次元の主か? 此処は何処なんだ。神さえも別次元に飛ばすとは中々の力の持ち主と見るが……』


「あ、どうも。この度はご愁傷さまですー?」


『ご愁傷様……? 何もお前が思う事は無いと思うが……まさかお前も同類なのか?』


「お互いに面倒な事を押し付けられた者同士ということなら、同類ですかね。なにはともあれこんばんはー?」


『あぁ……』


「えっと、とりあえずお名前を伺ってもー?」


『俺は創造神カオスだ。この世界は違うが、数多なる世界を創造し、破壊する権限を持つ。神界において最高神の位に立つ神だ。』


「僕はクレッセですー。巻き込まれた者同士、本日はよろしくですよー」


『あぁ、何がよろしくなのか分からんがよろしく頼もう……』


「とりあえず、現状に至るまでの経緯を教えてもらっても?資料によると、かつての全能が失われて、今は人並みの力しか持たないとか」


『あぁ、資料の通りだ。俺は最初に数万も作ったいわゆる失敗作の世界を処理しようとブラックホールを作ったのだが……そのブラックホールに巻き込まれてな。実はここまでは良くある事なんだが、何故か別の世界に来てしまった。

 其処は俺さえも知らない世界で、気付けば力も全て失っていた。ただ唯一の救いで、魔法の発達した世界だったので、なんとか持っていた魔法の知識で何とかやってはいるが……』


「あー、想定外の事態が起きて、その謎を解明中、と。それと、かつての力を取り戻すための手段を探っているって感じですかねー?」


『そうだ。とりあえず、人間と同じように力を付けて行けばいつかは戻るとは思っているが……きっと数万年と掛かるだろう。それだと人間の身体になってしまった俺では寿命が尽きてしまう。何か一気に力を付けられる様な手を打たなくてはならない。

 この世界の謎もまた、考えなくてはな』


「ちなみに、元神様は人間についてはどう思ってるんですかね?」


『人間か? ふむ。俺にとっての人間は信仰者とも呼べるが俺の宗教は団体や体系を必要としない為、そこは良いんだが……そうだな。世界を回すのに必要な存在感か。

 人間は限界の無い思考と、それを実行する力を持つ。牛や豚の様な動物では出来ない事を。人数にしか出来ない事だってある。生きているだけでとても素晴らしい存在であることは確かだな』


「えっと、随分と人間を買っているような、でもどこか観察者めいているというか。ただ、今までは天上から見守る立場だったのが、急に彼らと肩を並べ、同じ空気を吸うことになってるわけですが、やっぱり新鮮ですか?」


『新鮮と言えば新鮮か。何度か彼らの世界に降臨し、ひれ伏せさせた事はあるが、俺を神だと気付かずまるで友の様に過ごすのは新鮮だ。だがこの時に俺の正体を明かせば、決して友と呼べる関係では無くなるのだが……それをやって仕舞えば俺の活動も困難になる。それだけは避けたい。』


「ふむふむ……うん……?やっぱりなんか違和感がある気がしますが、まあ些末な問題ですねー。ところで、特に深く関わった人間なんかはいるんでしょうかー?印象に残る人物などいれば教えてもらえるとー」


『深く関わった人間か。それなら、俺が最初に出会ったノルドという村人だな。神の力を失い人間以下の力にまでなってしまった俺を、普通の力が戻るまで一ヶ月も付き添ってくれた。あの人間が居なかったから、俺は既に狼の餌になっていただろう。感謝している。』


「実際に人間と関わってみた感想はいかほどですかー?」


『人間の生命を作ったのは俺では無いのだが、流石完成された世界に住む者達だ。感情の制御や、思考の回転のバランスが良く、ここまで完璧な人間を作るのはきっと難しいのだろう。ただ、そんな人間が育つのも俺が作った大地や自然も関わっているのだろう。』


「なーんか、着目するとことかずれてませんかー?」


『そうか……? 人間の身体の作りに感動を覚えても可笑しくは無いだろう。』


「それ以前にー、人間への認識もずれてませーんかー?」


『人への認識? そんな物が必要なのか? 人間は人間同士で認識しあい、神と人間が理解し合うなど到底無理な事だ。神は人間の理解を超えた存在なのだから』


「えーと、まあ、人と関わっていく中で是正していけばいいかとは思いますー」


『出来るのならそうしよう。人間と深く関わる事はあの世界の理解にも繋がるからな。』


「もしくは、クレッセ的には面白いので、そのままでもいいとは思いますー」


『そうか。まぁ、それはお前が思う事であろう。俺は好きにやらせてもらう。なにも人間の事を理解する上に共感する必要は無いからな……』


「そして、態度が傲慢不遜な割には、結構人間の事気に入っているのですねー?」


『当たり前だ。いや、当たり前にするべきなのか。俺は神でありながらもその地位を守る為に、厳しい誓約を掛けている。『決して人を殺めてはならない。直接手を掛けてはならない』というな。

 だから、いくら神に反抗し攻撃する人間が居ようとも、俺に関しては絶対に反撃してはならないのだ。そんな誓約を守っていたら、人間という生き物がどんな物なのかを理解し、段々と気に入ってきたと言うべきか……』


「そしてそして、意外に真面目な努力家でもあるのですねー。非力な存在になってなお、絶望で停滞することなく、様々な方法で力を蓄えているとかー」


『神が絶望しては本末転倒だろう。神ならば、絶望した人間を救わねばならない。ならば、例え俺が人間並の力になろうとも決して絶望などしない。それに、力を早く取り戻さなくては神界が……そろそろぶっ壊れる可能性があるからな……』


「それはそれはご苦労様ですー。傍観主義な神様よりは、よっぽど共感や支持を得られると思いますですよー」


『そうか。お前がそう言うのならそうなのだろう。神に取ってどんな形であろうとも支持を得られるのは悪くは無い。神界では傍観するしか無い神もいるが……』


「なにはともあれ、せっかくの機会なので、人間としての生活もエンジョイしてみたらどうですかねー?存外、新しい発見とかあるかもですよー」


『楽しむ事か……。それは難しい提案だな。今でさえ神としての役割を放棄していると言っても過言では無いと言うのに、それを意図的にまで放棄し、遊びに耽るなど到底俺には出来ない事だな。

 なにも、休憩しないとまでは言わないが、今は今だからな。やるべきを事に専念しなくては』


「おー、ご立派な姿勢!まー、僕は怠惰なままでいいんで、別世界から無責任に応援だけはしておきますねー」


『そうか。応援だけでも感謝する。それが無責任だろうと構わない。お前が責任を感じる必要は無いのだからな。これより俺の行動の遅れで世界がどうなろうと、全ては俺の責任だ。世界の創造者としてな』


「さて、そろそろ時間が迫ってきたので閉幕の準備に移りましょうかー。最後に何か一言もらってもいいですかー?今後の抱負なりなんなり好きに語っていただければー」


『終わりがあったのか。永遠と此処で自分の事を語らなければならないのかと少し焦っていたが……抱負か。

 まだ俺がいるあの世界について何も分かっていない。それのおかげで謎の解明もしようも無いからな。ただ、必ず全ての力を取り戻しあの世界のなんたるかを知り、その世界を残すべきか。それとも破壊すべきかを決めよう。』


「はーい、ありがとでしたー。じゃー、これでお開きにしますねー。またの日を楽しみに、おさらばえー」






 ↓他人に任せるのではなく、自分が動くタイプの神様の物語です。


『創造神の異世界冒険録』


 https://kakuyomu.jp/works/1177354055298165090

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