「私たちがペアを組んだら、すごく相性がよさそうよね」 byマイ
「いらっしゃい、運命の出会いを果たした青年君。とりあえず、荷物と警戒心はその辺に置いといて、そっちに座ってくれるかしら」
『この状況で警戒するなというほうが無理な注文だろう。ここはどこで、あんたが何者なのか、俺には皆目見当がつかない』
「何者かって問いには答えられないけど、名前はマイよ。呼び捨てでも敬称付きでも好きに呼んで頂戴」
『……俺はショーンという。こちらも好きに呼んでもらって構わない』
「あら、意外と素直に名乗ってくれたわね。少しは警戒を解いてくれたって事でいいのかしら?」
『少なくとも、あんたからは俺に対する敵意や害意は感じない。マイから感じるのは、溢れんばかりの好奇心だけだ。その様子だと、あの男の関係者というわけでもないだろう。少しでも敵意を見せればその場で遠慮なく斬るが、今のところは剣を抜く理由もない。それよりも、今の俺にはこの現状についての情報を仕入れることのほうがずっと重要だ』
「理性的で助かるわ。じゃあ、とりあえず現状の説明をしましょうか」
『よろしく頼む』
「単刀直入に言うと、貴方に今からインタビューを行います。答えられる範囲で答えてください。なお、ここでどんな回答をしようとも、貴方が本来いるべき世界に何ら影響を及ぼしません。なんなら元の世界に戻ると同時に、貴方はここにいた記憶をたちどころに失うことになります。つまり、あなた自身の行動にも、影響を及ぼすことはありません。駆け足気味だけど、理解した?」
『何故質問を受けねばならないのかは理解し難いが……だいたい理解した。どんな質問にせよ、最終的には答えれば帰れる……そういうことだな』
「納得できないなら、タチの悪い夢でも見てると思ってちょうだい。夢だから、起きたころには内容なんて忘れちゃってるんだし」
『悪夢ならば見慣れている。今のこれはいつもと毛色が違うが……』
「じゃ、同意を得られたって事で、さっそく始めちゃうわね。とりあえず、貴方はどんな来歴を持った人間で、どういう目的のために生きているのかしら?」
『俺の過去を知りたがったのは、マイで二人目だ。話すのは構わないが……少し
「そうね。仕事だからというのもあるけど、個人的に興味もあるから、ぜひ。」
『……俺は人間と精霊の混血だ。精霊の村で生まれ育った。幼い頃に村の神殿で誰かに名を呼ばれ、気づいたら女神像のつけていたこの腕輪が俺の腕に
「あらあら、予想以上に重いものを背負っているのね。せっかくだから、その宿敵とやらについても話せる範囲で訊いてもいいかしら?」
『俺にわかっているのは、あの男がそれなりに腕の立つ魔導師で、この腕輪を欲している……それだけだ。そして、この腕輪を手に入れるためには手段を選ばない。それは間違いないだろう』
「話を聞いている限りでは、厄介な手合いのようね」
『ああ。おそらく俺か腕輪の気配を察すれば、あの男はすぐにでも俺の前に現れるだろう。だから、今までは気配を消して旅をしてきたんだが……』
「じゃ、次の話題行きましょうか。貴方が出会った不思議な少女について教えてもらえるかしら?」
『あの子は唐突に俺の前に現れた。生き物の気配がないことを確認したはずの、山の中腹にある洞穴の前で。メラニーと名乗った少女は、自分をかえしてくれる人を探しているという。誰か連れがいた気配はない。山の中に幼子ひとりを放り出す訳にはいかない。俺はあの子を近くの人里まで送り届ける事にした。あの子には何というか……不思議な力を感じる。俺の心を見透かすような、忘れていたものを思い出させるような……幼子に聞かせるには酷な俺の過去も、あの子に見つめられると何故か、洗いざらい話さなければならない……そんな気持ちにさせられた』
「ミステリーの塊みたいな少女ね。もしかしたら、意外と貴方の旅のキーパーソンになるかもしれないわね?」
『キーパーソン……その言葉は俺にはよくわからないが……そうだな。俺を変える存在にはなり得るだろう』
「まあ、それは後々のお楽しみって事にしときましょうか。あんまり語りすぎるのも興ざめでしょうしね?」
『ああ。マイもあの子ほどではないが、似たような力を持っているのかもしれないな。つい語りたくなる』
「じゃあ、次が最後の質問。もしも、貴方の行く末を見守ってくれている人々がいるとしたら、どんな言葉を伝えたい?」
『……わからない。けれど、これだけは伝えたい。ありがとう、と』
「はい、お疲れさま。こんな茶番に巻き込んでごめんなさいね。文句は、天の上にいる物語の紡ぎ手たちにでも叫んでおいて頂戴」
『まあ、いい。不可思議なことに巻き込まれるのが俺の運命というものなのかもしれない。マイ、ありがとう。自分を振り返るいい機会になった』
「それじゃ、今日はここで幕引き。次の機会があればまた会いましょう」
ハマる人はがっつりハマるであろう一作。世界観や表現力にも注目!↓
『風が伝えた愛の歌』
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