「何故その出来事が両方日常の範疇に括られるのかと問いたい」 byノマル
「こんにちは、可愛いゲストさん。緊張もあるだろうけど、とりあえずお名前を教えてくれるか?」
『……ん? あれ、ここ、どこです? いつのまに?
あ、はい! こんにちは、はじめまして!
私は、レンガ=アイセです。
よろしくおねがいします!』
「オレの名はノマルだ。ようこそ、この何でもありな不可思議空間へ。依頼人に代わって歓迎するよ」
『依頼人? 不思議空間?
それなら、仕掛け人はユーリ様あたりかな? あのひとなら、こんな不思議なイタズラも仕掛けてきそうな気もしますし。
なんていっても、神様のお友達らしいですものね。
……あ、すいません! すこし、頭の整理を。口に出てました? 恥ずかしいです。
えと、お手柔らかにお願いします、ノマルさん。』
「大丈夫だ、聞かなかったフリは得意だからな。ああさて、今回の趣旨なんだが。君が送っている日常について色々とお話をさせてもらおうと思ってね。長々と拘束するつもりはないが、付き合ってくれるとありがたい」
『それならたぶん、だいじょうぶです。
はい、よろこんで!』
「じゃあさっそく。君は普段、どんな日常を過ごしているんだい?」
『はい!
お昼は学院に通って、朝と夜は生活費のために『猫のパン』っていうパン屋さんでアルバイトをしています。
あとは、ちょっとパパやママの仇を狩ったりとかもすることがあります。』
「うん、ちょっと待とうか。日常というには、少しばかり引っかかるワードがあった気がするんだが」
『そうですか?
別にそんなに大したこととかはしていないというか。
いえ、たしかパン屋さんのバイトは朝早いし夜遅いから大変ですし、学院も皆様優秀ですから私もそれなりに頑張ってますし、仇にもなかなか出会えないので狩れればそれなりに凄いことではあるんですけれど。』
「あ、うん、そうなのか。いや、そっちの世界だとそのくらいのことは日常の範疇なのかもしれないな。すまん、続けてくれ」
『それから、仇を狩ろうと思って出かけたら、なんだか巨大な怪鳥と戦う羽目になったりとか。
あ、このまえは、ちょっと襲われている人を助けたので、少し遠い国の騎士さん達に狙われたりもしましたっけ。』
「うん、ちょっと止まろうか。念押しなんだが、それは本当にごく当たり前の日常の話か?普通に事件レベルだと思うんだが?」
『まあ、事件っていえばそうかもしれません。
でも、みなさんも、たまにちょっとしたトラブルくらいはあったりとか、しますよね?
親友や助けて下さる方々もいっぱいいますし、それで仲良くなったりお互いのことをもっと知れたりとかしましたし。
おおむね平穏で、楽しい日々だとおもいます!』
「……なるほど。君という存在がどういうものなのか、少し見えてきた気がするよ。外見や雰囲気に惑わされていたようだ」
『?
どんな印象をお持ちだったか、気になっちゃいますよ。』
「まあ、悪意のある存在というわけではなさそうだから、これ以上とやかくは言うまい。これからも君のいうところの日常を満喫するといい」
『私も、聖人君子とかじゃないですから、悪意がないかと聞かれると、ないとは言えないかなとは思うんですけども。
もう、そんなふうに言われちゃうと、なんだか不安になっちゃうじゃないですか!
意地悪しないでくださいよぅ。』
「そんなつもりはなかったんだがな。それはすまなかった。では、少し目線を広げてみようか。先ほどから気になるワードがいくつか出ていたが、君が住んでいるのはどういった世界なのかな?」
『はい。
私が住んでいるのは、世界でもたぶん最古の歴史と伝統を誇る聖王国の、王と神殿がおわす都、聖都です。
もともと古い都だったんですけれど、『災厄』の日に当時の王都が失われてしまって、それからもういちど都になりました。
聖都と直轄領を王様が、他の国の大部分は10公家と言われる10の公爵家が治めています。
もちろん、他にも色んな国があります。私は行ったことはないですけれど、他国出身の方には何人か知り合いも居ます。
聖王国は歴史も長いので、魔法技術が進んでいて、魔道具の開発で名高いです。
特に近年だと、100年ほど前に技術革新をもたらしたマヨネーズ侯爵家の存在とかが有名ですね。』
「思いがけず詳細な説明をありがとう。あと、君は学院生ということだったが、仲の良いご学友などはいるのかな?」
『はい。
アジィ様やメリーダ様、どちらも侯爵家のご令嬢なんですけれど、とても良くしてくださって! 親友なんです。大変お世話になってます。
それから、留学生のヒスイ様も、いろいろ気を使ってくださいます。
あと、『研究会』といって、同じく私のパパやママの仇と向かい合っている学院生のグループがあるんですけれど、これは学友とはすこし違うかな?
はじめにちょっと口に出してしまった、ユーリ様なんかも、この研究会のメンバーです。
ほかにも親しくしてくださる方も多くて、嬉しいです。』
「いろいろな意味で充実した生活を送っているようで何よりだ。いずれ、そちらの世界に赴くことがあったら、ぜひ案内してもらいたいな。件のパン屋にも寄ってみたいしね」
『ぜひ! 私の働いている『猫のパン』は、すごく美味しいんですよ!
それに、どんなに食べても飽きないんです!
私も、毎日残った余り物をもらって食べてますから、間違いないです!
普通のパンだけじゃなくて、シフォンやタルトなんかの甘いものもありますし、サラダやスープも取り扱ってますから、きっと気に入っていただけるものがあると思います!
あ、そうだ。サンドイッチとかを買って、食べ歩きもおもしろいですよ。
遠いところから来ていただけるようですし、そのときは頑張って時間をつくって、私が案内とかサービスしますね!』
「それだけ饒舌になるあたり、さぞかしいい店なんだろう。機会があることを楽しみにしておくとしよう。ああさて。楽しい時間だったが、そろそろ刻限のようだ。最後に一言、何でもいいから締めの言葉を頂けるだろうか?」
『はい!
たしかにたまにはちょっとびっくりすることもありますけれど、みんなの笑顔が輝いているこの日々が、私は大好きです!
だけど、ですから、もっともっとたくさんの人と一緒に居られると嬉しいな。
あ、なので。もしよろしければ、みなさんも一度遊びに来てください!
たいしたおもてなしも出来ませんけれど、私のところを訪ねてくだされば、いろんなところを案内させていただきたいとおもいます。
そうだ、1つくらいになっちゃいますけど、『猫のパン』のサンドイッチなんかも、サービスしたいです!』
「それは魅力的だね。今日は付き合ってもらって悪かったね。読者の皆も、彼女の(自称)日常を覗いてみてはいかがだろうか」
非日常な日常を、今日も彼女は駆けていくのだろう↓
『主観的には普通な少女の、彼女にとっては日常的な日々の話』
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