通常依頼分
「近頃の警察って進んでるんだね。斜め上にだけど!」 byフィー
「こんにちは!ツッコミマイスターの癖に笑いには耐性ある系のおにーさん!あたしはフィー。今日はインタビューを受けてくれてありがとね!」
『ああ。俺は
「うん、よろしく!短い時間だけど、楽しく漫才しようね!」
『何故そうなる。漫才じゃなくてインタビューだろ』
「早速いいツッコミをありがと!まるで、満点の夏の夜空の下、篝火に照らされながら、ただ一人で腹踊りを続けるおっちゃんの動きみたいにキレのあるツッコミだったよ!」
『いや全く伝わらん。無駄に詳細なのに1ミリも伝わらん。まず、おっちゃんの腹踊りにキレがあるのか甚だ疑問なんだが』
「ありゃ、もしかしてわかりにくかったかな?じゃあ、マスタードとライムシロップでコーティングされたわたあめの味みたいに鋭かったよ!……これで伝わる?」
『いや、逆に意味不明さが加速したぞ。そんなもの食ったら舌がバグる。というかそれ以前に、わたあめをコーティングしたら溶けるだろ』
「むぅ。おにーさんとフィーの感性は合わないみたいだね。アマチュアのバンドが、音楽性の違いで解散するときってこーいう感じなのかな?」
『……音楽性の違いって、それ大体表向きの理由だと思うんだが。実際の解散理由はカネだったり異性関係だったりするらしいぞ……本当に音楽性の違いで解散したバンドもなくはないだろうが』
「まあ、そんな益体のない考察は核融合炉の中にでも捨てておくとして――」
『そんなところに捨てるな。変な核反応起こして爆発したらどうする』
「――さっさと本題いこっか。とりあえず、貴方は警察官って聞いてるんだけど、どーいうお仕事してるのか詳しく教えてくれる?」
『はぁ……まあいい。俺は「腹筋崩壊させる系犯罪者」への対策班に所属している。最近その手の犯罪者が急増しているからな。警察側も手を打たざるをえないんだ。普段は各地の交番だの警察署だのに詰めて、例の「腹筋崩壊させる系犯罪者」が出たら出動することになっている』
「えっと、近頃の警察って斜め上に進んでるんだね。『腹筋崩壊させる系犯罪者』への対策チームなんてものもあるんだ。……念のために訊くけど、深読みせずに文字通りの部署ってことでいいのかな?」
『ああ。何されても笑わない俺たちが出動して、職質するなりしょっぴくなりするってわけだ』
「んーと、フィーはそれに対してどんな反応をすればいいのかな?一つ、ドッキリみたいだねって笑い飛ばす。二つ、大真面目に馬鹿な事やってるんだねって呆れる。三つ、多様化する犯罪に対して、警察もあれこれ手を打ってるんだねって感心してみせる。さて、どれが正解?」
『……一番近いのは二番目だな。正直、俺もこの対策班候補に選ばれた時は、正直バカみたいだとは思った。今はそんなバカみたいなことを大真面目にやってるんだがな……はぁ……』
「うん、まあ、なんていうかお疲れ様?さすがのフィーでも同情するくらい混沌としてるね」
『本当だよ……何で「腹筋崩壊させる系犯罪者」なんて奴らがいるんだ、全く』
「そんなかわいそーなおにーさんには、この片方しかない靴下をプレゼント!記念に持って帰ってね」
『要らん。片方しかないってことは、誰かが片方失くしたやつの片割れかもしれないだろ』
「大丈夫だって!心配しなくても新品だから!妙にリアルなアオダイショウのイラストも可愛いでしょ?特にここ、この鱗の質感とか!」
『いや全くもって可愛くない。それに明らかに履き心地最悪だろ。人に見せるものでもない靴下で見た目を追求するな。とにかく、要らん』
「むー。そんなに拒絶しなくてもいいのに。まあ、それならそれで、これはフィーが使わせてもらうよ。クリスマスになったら、サンタさんのために飾ることにするよ」
『それ飾られたサンタの気持ちにもなれ。プレゼント入れるの躊躇うだろ』
「で、最近はなんか事件とかあった?例えば、現代世界に転生してきた異世界勇者が、この世界の常識を知らないまま赤信号を横断してしまって、大型トラックに跳ね飛ばされたとか」
『ない。どこのギャグラノベだ。そんなことが現実にあってたまるか』
「なら、天上の世界から降臨してきた自称神様が、地下アイドルに一目惚れして誘拐を試みたとか」
『ない。ここは古代ギリシャじゃないんだ。そんな簡単に自称神様が降臨してたまるか』
「もしくは、貴方の妹と変人代表の女の子が、コンビニ付近で人目を憚らずに傍迷惑な言い争いをしてたとか」
『……それはあった。というか、どこでそんなこと知ったんだ』
「ふふ、情報ソースは内緒。乙女には秘密がつきものだからね。政治家の後ろ暗い献金と同じで、そう簡単には答えられないのさ!」
『乙女の秘密と政治家の献金を一緒にするな。一気に低俗になったんだが』
「それはさておき、具体的には何があったのさ?読者のみんなにもわかるように簡潔に説明して?」
『ああ。通報を受けて現場に向かったら、警察学校時代に出会った人……俺は「おかん」って呼んでいるんだが、そのおかんが妹と言い争いをしていた。遠目に見たら刃物に見えなくもないハモを使って。帰るように説得したが聞き入れられず、逆に俺を笑わせようとする始末だ』
「うん、説明ありがとう。でもごめんね。ツッコミどころとシュールレアリスムがインフレしすぎてて、今のフィーにはさっぱり理解できない。まさにアンインストール」
『アンストするな。……補足すると、おかんが妹と言い争いをしていたのは「マジ卍という言葉はどういう意味なのか」という話だ。初対面の人間にそんな話題を吹っ掛けるなって話だがな。おかんは警察学校で俺の部屋を頻繁に掃除しに来たんだが、その度に何かしら忘れたって言うから大変だったよ……ああ、そうそう、ハモは普通に生きているハモだ。俺の説得の最中にもぬめって逃げようとするし、大変そうだったよ……主におかんが』
「ああ、うん。懇切丁寧に捕捉されてもなおさらわからない。久々に、理解することを放棄したい気分だよ。どこを掘り下げて、どこから突っ込めばいいのか見当もつかないや」
『お前が言うな。因みに、最終的におかんは帰った。ハモだけ俺に寄越して。最後まで訳がわからないことばかりのたまっていたし、駅の反対側に自信満々で歩いていったが……その後は知らん』
「まあ、とりあえず一件落着はしたってことね。……これって、落着してるのかな?むしろ、着陸失敗を通り越して墜落してる気もするけど」
『漫画によく出る宇宙人の乗り物か。……いや、こういうことは日常茶飯事だし、俺の感覚が麻痺しているだけかもしれないが』
「いや、まあ、おにーさんがそれでいいならフィーは何も言わないけど。なんていうか、愉快痛快後悔な日常を送らされてるのはわかったよ」
『傍から見ればそんな感じだろうな……俺としては全くもって笑えないが。こういうことが頻繁にあるし、いちいち笑っていられるほど暇じゃないんだよな……』
「じゃあ、そんな忙しそうなおにーさんをあんまり引き留めるのも心苦しいし、そろそろお開きにしよっか。何か、読者の人たちに言っておきたいことはある?」
『そうだな……俺の日常は傍から見ればただのカオスだという自覚はある。無理に理解するより、頭を空っぽにしてなんとなくで読んでほしい』
「だってさ。それじゃ、今日はこれでおしまい!次回もまたよろしくね!!」
↓読了後、唖然とするのか笑いが止まらないのか――はてさて貴方はどちらのタイプ?
『ハモとおかんと笑わない俺』
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