「楽しいお茶会……じゃなくてインタビューだったよ!」 byフィー


「いらっしゃい、そしてこんにちは。あなたがスノウちゃんで間違いないかな?」


『もうすぐ19だから、スノウちゃん、と呼ばれるような歳じゃないけど、スノウで間違いないわ。ええ、私はたしかにスノウよ』


「良かった、ちゃんと繋がったみたいだね。私の名前はフィーだよ。呼び捨てなり、ちゃん付けなり好きに呼んでくれていいよ!ちなみに、私的におススメの呼び方は"フィーにゃん"だよ!」


『フィーにゃん。かわいいわね。じゃあそう呼ばせてもらうわ。で、私は宇宙をイヴァンと旅してる途中のはずだけど、どうしてフィーにゃんとお話しているのかしら?』


「えっと、まずどういう状況か説明しなきゃだよね。スノウはね、こう、なんていうか、ご都合主義で摩訶不思議な空間に囚われてしまったわけ。そして、この摩訶不思議空間から出るには、私のインタビューに答えなければいけません。オーケー?」


『お互いの作者のご都合主義よね。この摩訶不思議空間は。私は作者にせいぜい自分たちの物語をアピールしてこい!って放り出されたようなものかしら』


「ぶっちゃけ、わけわかんないよね!フィーも自分で言っててわけわかんないもん」


『……フィーにゃん、インタビュアーなら、もうちょい責任感が欲しいところなんだけど』


「責任という言葉はフィーとは無縁なの。とりあえず、インタビューが終わったら元の世界に返してあげられるから、ちょっとだけ付き合ってくれると嬉しいな。今なら、サービスでお菓子とお茶もついてくるんだけど、どうかな?」


『うーん、そう言われると、私、生まれも育ちも貧しいものだから、美味しいものには弱いのよね』


「いいお返事をありがとう!じゃあ、そこの椅子に座っちゃって!」


『はい、じゃあフィーにゃん、失礼します』


「遠慮なく好きなお菓子をどーぞ。緑茶のお代わりは、そこのポットから勝手に注いじゃってね。ちなみに、紅茶じゃないのはフィーの趣味なのです!」


『グリーン・ティなんて洒落たもの、初めて飲むわ。……あら面白い味』


「じゃあ、とりあえず最初に、スノウの自己紹介をお願いしてもいいかな?」


『えーっと、私はスノウ、18歳の女の子……って言っていいのかしら。女の子っていうには、戦争や家族のあれこれの事情で、街で体を売って暮らしていたから、汚れているわね。今はそこから逃げ出して、イヴァンという元軍人の男の人と旅をしているけど……』


「うん、ありがとね。あと、辛いこと思い出させちゃってごめんね」


『ありがとう。フィーにゃん。私、結構、暗い過去だから読んでいる人も重苦しくならないかちょっと不安だわ』


「お詫びに、ちょっぴり高級なカステラをプレゼント。元居た世界には持ち帰れないから、今のうちに堪能しちゃってね」


『フィーにゃん、やさしいのね。まるでイヴァンみたい』


「で、話を戻すけど、今はそのイヴァンって人と旅をしてるんだよね?」


『そうなの。ある日偶然街で出逢って、何故か私は惹かれてしまって。そして、私を夜の世界から連れ出してくれた大事な人なのよ』


「いいなぁ、男女二人旅なんて羨ましい。欲を言うなら、気楽で気ままな旅ならもっとよかったのにね」


『そうね。でも彼は戦争中の記憶を一部失っているし、家族のことは覚えてないの。イヴァンはそれを追い求めているから、なかなか気ままという訳には行かないのよ』

「どうせなら、追手からの逃避行でなく、二人の愛の逃避行にしちゃえばいいよ!そっちのほうがロマンチックだし!」


『私もそうしたいわ。けどね、彼には奥さんや子どもがいるかもしれないし、だから私は彼が記憶を取り戻してしまったら、旅が終わってしまうのではないかと始終怖いの……』


「それもそっか、余計なおせっかいだったね。じゃあ次の質問にいこっか」


『ええ、構わないわ、フィーにゃん』


「イヴァンって、スノウから見てどんな人?」


『大事な人。右眼は戦時中の傷で失ってしまったけど、左目はそれは綺麗な薄いブルーでね。見つめられるたびにこの人を失いたくないって思う。でも、私のこと、子供扱いして抱いてくれないけど、それも彼の優しさだと思って受け入れることにしているわ。けれど、戦闘となるとそれは冷徹で無情で。そのギャップに私、時々、戸惑うの』


「ふむふむ。もう既にメロメロですなぁ。聞いてるだけで胸焼けしそうだよ。……と言いつつ、それ以上に胸焼けしそうなスイーツの山に、私は手を伸ばすんだけどね」


『でも、イヴァンは私の過去のこと、本当に、受け入れていっしょに旅をしてくれるか、私を汚らわしく思ってないか、いつも不安よ』


「過去が苦いのなら、この先の未来を甘くして上から重ねちゃえばいいんだよ。どんなに苦い緑茶でも、上からメープルシロップをしこたま流し込めば苦みが減って美味しくなるはずだしね」


『未来ねー。私達の旅はどうなるのかしら。私の過去はともかくとしても、イヴァンの消えた記憶には、大きな陰謀や疑惑が隠されているんじゃないかと思うと、旅も一筋縄で行きそうにないのよね。それに、フィーにゃん、グリーン・ティはなにも入れずに飲むのがいちばん美味しいって、聞いた事があるんだけど」


「……前言撤回。緑茶とシロップは混ぜるもんじゃないね。実際にこうしてやってみたわけだけど……なんていうか、味が斬新すぎて眩暈がするよ」


『フィーにゃん、もしかしてあなた結構お馬鹿さんなのかしら?……あ、私ストレートに言いすぎたかしら?」


「大丈夫大丈夫!紅茶はストレートが好きだから!ミルクティーも捨てがたいけどね」


『(小声で)こっちの事情もストレートに話すとね、この小説、いかにイヴァンがどこまで私に手を出さないでいるか=据え膳食わないでいられるか、の耐久レースみたいな物語でもあるのよね。その辺を期待してる読者の方もいらっしゃるんじゃないかな。でも私は抱かれたいのに、イヴァン、どこまで焦らすつもりかしら?……あら、私、ちょっと下品だったかしらね。フィーにゃん、みなさん、失礼いたしました』


「にゅ~、クッキーを一つかじったらだいぶマシになったよ。やっぱり、甘いものと苦いものは別々に味わうべきだね」


『苦い思いだけなら散々してきちゃったけどね、私』


「でも、苦いものがあるからこそ、一層甘味の甘さが引き立てられるわけで。人生も、きっとそうなんじゃないかな?」


『そうだと良いんだけど。でも、イヴァンとの旅が甘い思い出になるかどうかは、作者次第だから。そして、結構、この作者、今の今までいろんな作品でいろんなキャラを酷い目に合わせてきたドSって評判がもっぱらなのよねー」


「……あれ?でもそうすると、甘味があるからこそ苦みも引き立つってことになるのかな?」


『それも言えるわね。イヴァンが優しくしてくれると、嬉しい反面、過去のこととか、彼の妻子のこととか考えちゃって苦しくて仕方ないし』


「むむむ、人生って難しい。これはもはや哲学だよ!"甘味と人生"って題で、本を出してもいいレベルだよ!」


『……ちょっと大袈裟な気もするけど、無事に私達の旅が終わることができたなら、そういう本でも出してイヴァンとふたりで、ゆっくり印税生活したいわ』


「全世界の哲学者さんは、ぜひこの難問にチャレンジしてみてください!」


『そうねー、結構これから、恋愛話だけでなく、戦争中の事件とかが絡む、ちょっと小難しい話になっていく予定って作者は言ってたから、チャレンジするにはもってこいかもね』


「で、これって何の会だっけ?お菓子パーティだったかな?」


『インタビューよ、インタビュー。フィーにゃん、やっぱりお馬鹿さんなのかしら』


「むぅ、お馬鹿じゃなくてお茶目なんだよこれは!でもそうだった、インタビューだったね、うん。……でも、正直言うとフィーはもうお腹いっぱいなんだよね。二重の意味で。そっちはどう?甘味は堪能した?」


『私もお腹いっぱい。なんだか重い話ばかりでフィーにゃんにも、これを読んでくれている方にも悪かったわ。後は是非小説を読んで堪能してもらうことにしましょうか』


「それがいいかもね。じゃあもうお開きにしよっか。最後に、スノウを取り巻く世界に題をつけるとしたら、あなたはなんてタイトルをつける?」


『インタビューとちょっとかぶるけど、「何処までも苦くて甘い人生の旅路」って感じかしら。謎も多く闇も深いけど、時に美しい星も瞬く宇宙、みたいな。上手くまとめられなくてごめんなさい」


「お洒落な題だね!それじゃ、ちょっと名残惜しいけどここでお開きにしよっか。機会があればまた会おうね!スノウも、このインタビューをよんでくれているみんなもね!」


『ありがとうございました、フィーにゃん、読んでくださったみなさん!ドシリアスな話だけど、恋愛ものとしても、イヴァンの記憶を巡る謎解きとしても楽しめる話になってます。是非、私とイヴァンの旅路、その行方を確かめに来てくださいねー』







 ひょんな事から旅路を共にする事になった男女の物語。二人の織り成す硬派な世界に浸りたい方はこちらへ↓



『ディ・ア・レ・スト』


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054935099985

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