「やたらと疑問符の多い奴だった」 by氷月
「よう、少年。人生楽しんでるか?」
『うわああああ!なんだーー!?』
「ああ、確かに唐突だったか。それにしても面喰らいすぎじゃないか、いくらなんでも。リアクション選手権にでも出場する気か?そんな馬鹿馬鹿しい企画があるかは知らんが」
『だれ? お前、だれ!?』
「なんにせよ、今という時間は二度と戻らない。せいぜい、後悔のない青春の日々を送るといい」
『人の話聞けーー! だれだよ!?』
「ああ、前置きが長くなったな。まあ、何が言いたいかというとだな」
『は?』
「今からお前にはインタビューに付き合ってもらう。もちろん拒否権はない。貴重な青春のうちの一ページを俺"たち"のために磨り潰してくれ」
『はい? 』
「というわけで、今回はこの俺、氷月がお送りさせてもらう。ゲストは、そこでぎゃあぎゃあと喚いている、哀れな学生だ」
『哀れな学生じゃない! 杉原弦音(すぎはらつるね)だ!』
「ほう、予想外にいい名前じゃないか。気に入った」
『そっ……そうか……(照)』
「その名前、忘れるまでは忘れないでおくとしよう」
『結局、忘れるんかい!!』
「さて。まずはお前が本来いるべき世界の題を述べてもらおうか」
『はい? せっ……世界の題?』
「まあ、わからないよな。それが当たり前だ。世界の中にいるお前にはその世界の題なんてわかるはずもない」
『意味わかんねえ』
「ああ、無理に理解しようとしなくていいぞ。とりあえず、このノートに書いてある題を読み上げてくれればそれでいい」
『えーと、“かぐら骨董店の祓い屋は弓を引く”?』
「ご苦労。褒美にクッキーを一枚やろう」
『ありがとうございます』
「礼ならいらんぞ。さっき、俺が食べようとして床に落としたやつだからな」
『ぶっーー!(口から吹き出す)』
「安心しろ。ちゃんと、三秒以内に拾っておいた」
『ふざけるなーー!口にいれちゃったじゃないかーー!(涙目)』
「騒々しい奴だな。少しは落ち着いたらどうだ?そんな事では男子にモテないぞ?」
『大きなお世話だ!』
「それはともかく、最近お前の周りで変わった事とかはなかったか?それこそ、何かの物語が始まる予兆のような」
『は? 変わったこと? そういえば、弓道場に知らない男がいたなあ』
「始まりを告げる来訪者、か。それで、そいつはどんな人物だった?」
『とにかく、口が悪い! 会ったばかりの俺に下手くそとか、弓道は合ってないとかいいやがったんだ!』
「そりゃまた愛想のない男だな。俺といい勝負なんじゃないか?」
『はい? 』
「ちなみに、お前は仲のいい学生仲間とかいるのか?いるなら、何人か紹介してみてくれ」
『うーん。バレー部の秋月亮太郎(あきづきりょうたろう)とか、クラスメートの江川樹里(えがわきさと)とか、同じ文化祭実行委員仲間だけど?』
「ふむふむ。察するに、最初の男が物語の中心で、こいつの周りにいるのはさしずめ……なるほどな」
『はっ?』
「ああいや、こっちの話だ。すまんな、忘れてくれ」
『なんだ? こいつ……』
「ちょっと中二病を患ってるだけの、ただのインタビュアーだ。ちなみにお前、あまりよくない相が出てるぞ?近いうちに面倒ごとに巻き込まれるかもな」
『なんだよ!? いきなり!』
「まあ、あまり気に病むな。どうせ、逃れられない運命だ。腹をくくれ。それが嫌なら首をくくれ」
『いやいやいや、つうか、まったく理解できないんだけど……』
「まあ、俺には関係ないからそれはおいておくとして」
『人の話聞いてないよね。この人……』
「ここまでいろいろ話してきたが、思えばおまえ自身の話を聞いてなかったな。簡単でいいから自己紹介でもしてくれるか」
『俺? 俺は山有高校二年の杉原弦音です。弓道部所属で、家族は両親と妹と俺の四人家族……』
「……」
『聞いてる?』
「……ああ、すまん。義務だから訊いてはみたんだが、正直興味なかったからスマホいじってた」
『ふざけるなーー! あんたが聞いてきたんだろうがーー!』
「いや、最近スマホの音ゲーにハマっててな。次の曲を早く解禁したいんだわ」
『おいおいおい』
「まあ、そう怒るなって。貴重な時間をがっつり無駄にさせてるだけだろうよ」
『俺の貴重な時間をなんだとおもってんだよ! こらっ!』
「まあ、ネタばらしすると、俺はお前の見ている夢にお邪魔しているだけだから、そこまで被害はないはずだが」
『はい? 夢?』
「さて、そろそろタイムリミットだな。もうすぐお前の意識が眠りから覚める」
『おいおい』
「インタビューに付き合ってもらった謝礼代わりに、最後にこの言葉をお前に送るとしようか」
『はい?』
「強く生きろ」
『意味わかんねえ』
「それでは、また次のインタビューで会おう。あばよっと」
『なんだったんだ? これ?』
「……ああそうだ、もう一言告げておくことがあった。今度は実益のあるアドバイスだ」
『また、出たーー!』
「起きたら、とりあえず涎を拭け」
『へっ?』
――弦音は先生の叱咤する声で強引に覚醒させられたのであった。
よだれを垂らしながら寝ていた弦音がクラスの笑い者になったのはいうまでもない――
※本編はもっと真面目な内容です↓
かぐら骨董店の祓い屋は弓を引く・1~矢が射貫く一輪の花~
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