年末年始募集分
「少女と保護者って雰囲気だったな」 byジュデン
「ほとんどの方は初めまして。今日のインタビューは俺が務めさせてもらう。名前はジュデンだ、よろしく頼む。で、まずはインタビュー相手の紹介と行きたいところなんだが……」
『どうかしたの? えと、ジュデンさん?』
『ブウウウン』
『あ、ドラゴンさん。危ないから鼻でツンツンしたら駄目だよ?』
「ああ、いや、なんでもないよお嬢ちゃん。ちょっとばかし、後ろに控えてる従者の
存在感に圧倒されただけだ。その竜に敵意がないのはわかってるから心配しなくていい。ちょっと鼻息がこそばゆいけどな」
『うん。ドラゴンさんは優しいから心配しないで』
『グオオン』
『ドラゴンさん。大丈夫だよ。この人は、敵じゃないよ。だから、にらまなくてもいいの』
「とりあえず、名前を伺おうか。記憶が欠落してるってのは聞いてるから、仮の名前の方でいいぜ」
『うん。私はアリス。ドラゴンさんは、ドラゴンさんだよ』
「短い時間だがよろしくな。できれば、そっちのドラゴン殿も」
『ブウウン』
『あ、ドラゴンさんは話せないけど、気にせず続けろって言ってると思うの』
「なら、お言葉に甘えて質問を進めていこうか。わかる範囲で答えてくれると助かる」
『うん。わかった』
「とりあえず、嬢ちゃんがその竜と出会った時の話を聞かせてくれないか」
『ドラゴンさんはね、私が目を覚ました時に、目の前にいたの。でも、私、記憶がなくなってたから、どうして目の前にいるのかもわからないし、どうしてついてきてくれるのかもわからないの』
「そりゃまた難儀な話だな。で、とりあえず当てもなく彷徨った結果、一つの村だか町だかにたどり着いたんだったか」
『そうだよ。どこに行けばいいのかわからなくて、ドラゴンさんの背中に乗って飛んだり、とりあえず歩いたりしてたら、たまたま町をみつけたの』
「RPGの導入部みたいな展開だな。とはいえ、いきなり竜を引き連れた少女と遭遇した町民たちは、さぞかし肝を冷やしただろうな」
『うん。みんな、こわい顔をして、つかまえろー、とか、追い払えーって、おそいかかってきたの』
『ブウウン』
『そうだね。ドラゴンさんが助けてくれたよね』
「うん、まあ、普通はそういう反応になるよな。俺も、いろいろと経験を積む前ならそうだっただろうしな」
『うん。すごく、こわかったの。でも、リリルハさんって人がきてくれてね、私の話をちゃんと聞いてくれたの。すごく嬉しかった。そのあとも、すごく優しくしてくれたの』
「ま、すったもんだあったとはいえ、受け入れてもらえてよかったじゃないか。人間、居場所は必要だからな。俺はそんな場所を持たない宙ぶらりんな存在だから、余計にわかるわ」
『そうなの? ちゅうぶらりんってどういうこと?』
「まあ、俺の事はいいだろうよ。今回の主役は嬢ちゃんなわけだし。それより、せっかく手に入れた居場所だったのに、紆余曲折あって嬢ちゃんはそこから旅立ったんだよな?何がきっかけだったんだ」
『えっとね。私、自分のことを何も知らなかったの。でも、自分のことを思い出す方法がわかって、そのために旅にでようと思ったの。みんなは、あぶないからって、引き止めてくれたんだけど、守られてばかりじゃだめだと思ったの』
「なるほどな。……嬢ちゃんは強いな」
『つよい? そんなことないよ? 私、何もできないもん』
「普通、人間ってのは安寧と安心を求めるもんだろ?それらを捨ててまで、自らの求めるモノのために旅をするなんて、なかなかできる事じゃねえよ。まして、嬢ちゃんみたいに非力ときたら猶更だ」
『そうなのかな? 私にはよくわからないけど』
「人間、自分の事ほど存外とわからないもんなんだよ。しかし、できる事なら、俺もその旅路を傍で見守ってやりたかったな。……いや、嬢ちゃんには既に頼りになる連れがいるわけだし、殊更に心配する事もないか」
『うん。大丈夫だよ。ドラゴンさんもいるし、一緒にはいないけど、みんなも私のこと、見守ってくれてるから。ね』
『グオオン』
「なら、俺は嬢ちゃんの旅路が明るいものになる事を、せめて神様にでも願っておくとしようか。気休めにもならんがね」
『ううん。そんなことないよ。ありがとう。すごくうれしい』
「こっちが照れるくらい、とびっきり上等な笑顔をどうも。嬢ちゃんが好かれる理由の一端が分かった気がするわ」
『そう? えと、どういたしまして?』
「おう、ご馳走様。さて、そろそろ時間かな。最後に何か、伝えておきたいことはあるか?」
『えっと、みんなも私を見守ってくれたら、うれしいの。ドラゴンさんも何か言う?』
『グオオン』
『特にないって、言ってる気がするけど、たぶん、がんばりますってことだと思うよ』
「んじゃ、これでお開きだな。次にお鉢が回ってくることがあれば、また会おうぜ。じゃあな」
保護欲に目覚めても知りませんよ?↓
『ドラゴンと旅をする少女のおはなし』
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