「善人とも悪人とも言えない不思議な人だったのですよ」 byモイ



「えっと……そろそろ予定時刻なんですが――ああ、来ましたね!こんばんわですよ、ゲストさん!」


『……。此処は何処だ? 予定時刻? そんな無駄な予定など入れた覚えは無いのだが……そしてゲストだと? お前は一体?』


「モイはモイです!そしてここは、あなたが今までに属していたどの世界にも当てはまらない場所です!」


『ほう、何処にも当て嵌まらない場所か。つまり、不正確な場所に連れ込むと言う事はまさか私を拉致したと言う事か? ぼかしてないで正直に答えろ……。』


「じゃあ、いっそ正直に答えちゃいますけど、何であなたがこの世界に呼びだされたのかは、モイも知らないのです。モイはただ、あなたに対してインタビューをするように申し付かっただけなのですよ」


『インタビューか……。誰の指図か知らんが、私はお前に何かを答える権利は無い。ふざけていないでその上の者に『さっさとこんな下らない物を終わらせろ』と言って来い』


「それができれば苦労はないのですよ。とりあえず、元の世界……あなたの転生先の世界に帰るためにはインタビューを一通り終えなきゃいけないのです。お互いの為にも、円滑な進行にご協力お願いしますのです」


『ッチ……。仕方が無いか……私が答えた情報は周り、不特定多数の何処かに伝わる事は無いだろうな? あくまでもお前の上司に報告するだけか? それだけが心配だ……』


「少なくとも、あなたとあなたがいる世界に影響はないのですよ。さて、とりあえずお名前を教えて欲しいのです」


『私の名前は……首狩執刃くびかりしつばだ……。』


「ほやぁ。変わった名前なのですねぇ。本名なのですか?」


『良く言われたさ。だがこれは私の本名だ。偽名など今の所使う気は無い。私の名がもっと広まる事が有れば使っても良いが……』


「そうなんですねぇ!でも、なんか特別感があってカッコいいと思うのですよ!」


『そうか……。お前がそう思うのならそうなのだろう。私はこの名は嫌いだがな……』


「あやや、そうなのですか。それはそうと、首刈さんは前世では何をしてたんですか?」


『執行者。死刑執行人だ。今まで沢山の罪人をこの手で殺して来た。いや、私が罪人を選ぶ権利は無いからな……中には罪無き者も含んでいたかもしれないが、それは今や今更と言うに過ぎない』


「そんなあなたが、どうして異世界に?」


『嵌められた。いや、恨みを買ったと言うべきか。罪人でも中には家族や友人やそれらの過去を持つ者もいる。恨みを毎日の様に買うのは当然の事だと思うが……復讐されたのはあれが初めてだな。私に対して復讐してきた相手が誰を殺された事で此処まで恨む事になったは分からないが、何度も叫びながら滅多刺しする程だ。相当な恨みがあったのだろう』


「にゅ、そうだったのですね。だから、そんなに目つきが悪くなってしまったのですね」


『目つきは元からだ。あんまり人を外見で判断しない方が良いぞ? 私に対してなら何とでも言っても構わないが、それだけで激情して殺しに来る輩もいるからな。そう、特に相手の地雷を踏めばな』


「き、気を付けるのですよ。でもでも、前世でそんな目にあったのなら、せめて新しい世界では楽しみを見つけないとですよね!今の世界では何をしてるんですか?」


『あぁ、そうだな。新たな世界に来たからには処刑人としての足は洗おうと思っていた。だが、最寄りの街に入れば脱走兵扱いされ、牢獄に投げ込まれては看守の良心で脱獄できた物の、"大罪人"として重要指名手配され、私が望む"新しい生活"をするにはもう少しこの仕事を続けなければならないという事が分かった』


「なんていうか、こっちでも災難続きなんですね。で、その執行者っていう肩書は何なんですか?」


『肩書き……? あぁ、特に意味は無いがそう呼ばれていただけだ。だが、これのお陰で私が死んだ時に会った死神に少しでも生きやすくする為に【執行】と言う名の力を貰った。この力は、相手の急所を斬る事で一撃で殺害。さらに死んだ時に復活する為の残機を得られる。何とも恐ろしい力だ……。何故こんな力を死に神は与えたのだろう。今になっても全く理解出来ない』


「……え。えぇっ!?それってすごい能力じゃないですか!でも、なんていうか、すごく業の深い能力ですよね」


『そうだな……。相手の命を奪うのだからな。その命を斬り捨てるだけならまだ弔う猶予があるが、私はそれらの命を"所持"している。人の命など管理する気なんざ一切無いんだが……死ねばその命使って復活出来る。正直なところ良い能力なのか、悪い能力なのか曖昧な所だ』


「まあ、どんな力も使い方ですよね!部外者のモイが言うのは筋違いもいいとこですが、せめてその力に溺れないようにして欲しいです」


『そんな事はあり得ない。力に溺れるなどそれは力無き者が、力だけを強く望んだ者に限って仕出かす事。私は正直こんな力は求めてはいない。溺れるなぞ似ての外だ』


「っと、話が逸れちゃいましたね!そういえば、新しい世界ではお友達や恋人さんはできましたか?」


『今の所そう言う関係になった者は居ないな。一部勝手に頼りにされている所はあるが、特に友人や恋人など作る気は無い。例え作ったとしてもいつか利用する他にはならない。相手になんと言われようが私は自分が確実に生きる道を選ぶ。ただし、その選択が裏手にでる様なら手助けもする時はあるが……』


「よかったです!一匹狼っぽいオーラを漂わせてるから、てっきり人と関わらないようにしてるんじゃないかと。でも、杞憂にして余計なお世話だったのですよ!」


『そうだな。私がお前に心配される筋合が何処にあるか分からないが、私の本当の性格を知れたのならそれで十分だ。』


「じゃあ、これが最後の質問なのです。あなたは、今の自分が物語の主役だとしたら、その物語のタイトルにどんな名前を付けるんですか?」


『私が主役のタイトルか……自由に生きたいだけなのに何をしても災難ばかり、だが私は特に狙ってやっている訳ではない。強いて言えば私が移った世界があまりにも厳しすぎると言った所か。それを踏まえるなら……『執行者の気まぐれ冒険譚』じゃないか? 私は冒険する気は更々無いのだがな。冒険せざるを得ないと言えば正しいか』


「奇をてらってなくていいと思いますです!ではでは、今回はここまでなのですよ!最後まで読んでくれた皆様、ありがとなのですよ~!」






色んな意味で真っ当ではない主人公の、なり行き異世界冒険録はこちらから↓



『執行者の気まぐれ冒険譚』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054898677685

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