「こういう奴を交えて、ポーカーや人狼ゲームとかやってみたいよな」 by蛍斗
『……(陸が固まっている)』
『どうした陸?せっかくのお客様だ。早くお茶を出してやれ……すみません、お茶菓子はないですけど』
『なぁなぁ……青葉。インタビュアーって、可愛い女の子なんじゃねぇの?どうしてこんな……』
「期待を裏切ってすまんな。俺の名は蛍斗、今回インタビュアーとやらをさせてもらうからよろしく頼むよ、学園の革命児殿」
『性別など関係ないだろう?大事なのは能力がどれだけあるかだ……あぁ、宜しくお願いします。俺は青葉優、こっちは若葉陸。俺たちは今、大事な時期です。良い記事を書いて下さることを期待していますよ(目を細める)』
「それは君次第といったところだな。なにせ、今回の記事はこれから話す事をそのまま文字へと起こすだけだからな。余計な脚色もしなければ、特定方向へのベクトルを加える事もない。……ああさて、余計な前置をするのはお互い好むところではないだろうし、早速本題に入るとしようか」
『えぇ、なんなりと』
「じゃあまずは何から訊くか……そうだな、今の自分が物語の主人公だとして、だ。その物語に君はどんな題をつけるかな?」
『題名か。そうですね……「青帝国学園のエゴイストたち」。確かに自分は主人公かもしれませんが、それは見方にもよる。読者の方々にはあらゆる視点で、あらゆる人の思考を楽しんでもらいたい』
「なかなか皮肉の籠ったタイトルじゃないか。それで、君はどんなストーリーを紡いでいくつもりなんだ?物語でいうならあらすじというやつだ」
『この学校にいる皇帝を取り合う……ただ、それはもう終わりました。今年の皇帝が出した「コンクエスト」によって、今や俺たちは派閥内争いに走っています。皇帝を支持する「皇帝権威派」。逆に皇帝を無用とする「独立派」。どちらにも属さず変人が多いとされる「自由派」そして我々「王党派」。そこへどう皇帝が侵入してくるのか……お恥ずかしながら分かりませんね。今は課題を与え傍観者に徹しているようですが』
『裏で動いてるかもしれねーけどな』
『あぁ、勿論、警戒は怠らない』
「そっちの学園のシステムについては多少調べさせてもらったが、なかなか興味深いな。絶対皇帝制を掲げてみたりとか、その皇帝とやらに選ばれた生徒が教師以上の権限を持っていたりとかな。これらは事実か?それとも噂に尾ひれがついただけの与太話か?」
『全て事実ですね。現にコンクエストはもう行われ、全校生徒、果ては教師までも巻き込んでいます』
「皇帝自らが嵐を起こすってのは尋常じゃないな。普通、皇帝ってのは嵐の中心にいても、自ら嵐を呼びこむなどと言う無用な真似は進んでしないものだ。天才故の先見に基づいた策か、あるいはただの遊戯のつもりか。なんにせよ、刺激的な青春を送れそうで何よりだ」
『遊戯、それは今の皇帝に一番合うかもしれませんね』
「それで君は、その嵐に流され呑まれる側なのかな?それとも、別の嵐をもってそれを呑み込む側なのかな?まあ、意気込みについてだけなら聞くまでもないんだが」
『事前に色々と調べて下さったようで。そうですね、正直に言えば、今は飲み込まれざるを得ない。新参者だと言い訳をするつもりはありませんが、俺も陸も、他の三年生のリーダーに比べて知らないことが多い。ただ、条件さえ揃えばいつだって見返す気でいますよ。それこそ、学園を反転させるぐらいの』
「いい心構えと面構えだ。もし俺がその学園とやらの一員だったら、きっとお前についただろうな。ちなみに、君には頼れる仲間はいるのかな?それとも、自分一人で何でも思い通りになると己惚れる類の人間か?」
『おいおい?……優に対して結構な言い分じゃあねーか。オレらについてくるって甘いことじゃ——』
『そうですね……自惚れはしますが、これからはそれが出来なくなるでしょう。あなたもご存知のはず、今年唯一仲間に引き入れた水雫《みずな》。あいつは人を超えている。この学園の誰よりも優秀な人間です』
『(陸がジト目をして青葉を見る)』
『勿論、一年のときから陸は最高のパートナーです。まぁ……そんなところで、今のところは三人。約百人規模の皇帝権威派にとっては黒点並みでしょうね』
「赤々と燃える太陽の中にありながらも、温度の低さを保つ黒点、か。周りがヒートアップする中でも、冷静に物事を観ている君たちにはぴったりかもしれんな。……まあ、少数精鋭というのも悪くないさ。いくら腕を増やしたところで、うまく扱えないのでは意味がないからな。使い方を誤って怪我の元にでもなれば尚更だ。さてさて、君の陣営の紅一点ははたしてどちらになるかな?」
『ははっ、これは面白い質問だ……いえ、すみません、俺も少し陸に似てきたようで(満面の笑み)。あいつは未知数だ。出来ないことはないでしょう。ただ、扱いを間違えれば大変なことが起こる。だから俺は、まず出方をみようと思っています。それなりに注目は集めるでしょうから、周りがどう近づいてくるのかを』
『でもよ、水雫は優にめっちゃ懐いてるだろ?てめぇの意見なら何でも聞くんじゃねーの?』
『あいつにもあいつの、この学園へ来た目的と、バックがある。そう簡単にはいかないな』
「一般的なそれとは違うが、ともかく互いに信頼しているようで何よりだ。……それでもあえて一つだけ、助言というか忠告だ。国家が滅びる時は、たいていの場合内的要因が大きく関わってくる。歴史上、強力な国家が外敵の侵攻のみで滅ぼされたケースはほぼない。それに、内と外両方を警戒しなければならないという状況は、戦略的にも戦術的にも好ましくない。君の事だし、そんな事は承知の上でリスクとリターンを天秤にかけているんだろうがね」
『ご忠告、ありがとうございます。あぁ、残念だ。今日は水雫も来させるつもりだったのですが……』
『やめとけよ。その気になったらあいつの空気だけで、このインタビュアーは失神するぜ』
『彼女の凄さと恐ろしさは対面しないと分からないでしょう。今度また、いらして下さい。その時には』
「では、邂逅できる機会を楽しみにするとしよう。っと、インタビューという趣旨からはだいぶ逸れてしまったな。多忙な君の時間をこんな些事で浪費させるのも忍びないし、ここらでお開きとしよう。最後になにか、このインタビュー記事を読むであろう不特定多数の人達を相手に、君から伝えておきたい事はあるかな?」
『もしあなたに覚悟があるのなら、ぜひこちら側へ来て欲しい。頭脳戦、心理戦、時には暴力に訴え、裏切りが水面下で行われている、汚れた……いいや、天才たちの高貴な戦いを、直に感じて欲しい、こんなところでしょうか』
『ファンレターとか、待ってるからなー!』
「結構。君が実りと波乱の多い学園生活を送れることを期待するよ」
知略に謀略、策略と計略が渦巻く学園を、主人公たちはどう攻略するのか。
『青帝国学園のエゴイストたち』
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