「人、異形、どちらも見かけだけではわからぬものです」 byルース
「ようこそ、お客人。私めはルースと申します。まずは、その黒いローブをお預かりしましょうか。お話はそのあとで」
『ア……コレハ……』
「ああ、心配はいりません。これでも執事の端くれ。お客人がどんなお姿をしていても誠心誠意もてなさせていただきますとも」
『ソレジャア……』
「……ふむ、これは失礼な言い草かもしれませんが、確かに人とは違った面妖なお姿ですな。しかし、見ただけで恐怖するほどではありますまい」
『……アナタモ、怖クナインダ』
「では、そちらの椅子に掛けていただけますか。インタビューをしろと主から仰せつかってはいますが、堅苦しいのはお互い好むところではありますまい。お茶でも共にしながら、お話を伺わせていただければ」
『ウン』
「ではシナモンティーをどうぞ、口に合うといいのですが」
『ア、ゴメン……私、食ベ物ヤ飲ミ物ガ飲メナイノ……吐イチャウカラ』
「これは失礼いたしました。そういえば、まだ名前を伺っていませんでしたね。よければ、お名前を頂戴いたしたく」
『タビアゲハ……ッテ言ウノ』
「ちなみに、あなたはいったいどういった存在なのでしょうか?なんとなくなのですが、異形の中に人間の面影があるように見受けられるのですが」
『私、変異体ナンダケド……ア、変異体ッテイウノハ、ソノ……コンナ感ジデ化ケ物ミタイナ見タ目ニナッタ人ノコトデ……元人間ナノ。デモ、私……人間ダッタコロノコト、ゼンゼン覚エテイナクテ……』
「なるほど。ですが、人間社会では、さぞかし異端視されているのではありませんか?彼らは自らと異なるものを容易には受け入れないものですから」
『ウン。変異体ノ変ワッタトコロヲ、普通ノ人間ガ見ルト、恐怖ノ感情ヲ引キ起コシテシマウンダッテ。坂春サンハ、一種ノ科学反応ダッテ言ッテタ。ダカラ、警察ハ変異体ヲ見ツケルト捕マエテ、ドコカノ施設ニ閉ジ込メルカ、ソノ場デ殺シテシマウノ』
「予想通りですね。でも、あなたは幸運にも自らを受け入れてくれる人間と出会った。そうですね?」
『私……ズット路地裏ノ狭イトコロニイタノ。外ニ出ルト、ミンナ怖ガッテシマウッテワカッテイタミタイ。ダカラ、ズット外ノ世界、世界ノイロンナ景色ヲ想像シテタ。ソコデ、坂春サントデアッテ……坂春サンガ旅ヲシテイルッテ聞クト、体ノ中カラ何カガワキ上ガッテ……ソノ黒色ノローブヲ着サセテモラッテ、ソノママ一緒ニ旅ヲサセテモラッチャッタ……』
「懐の広い方ですね。で、ともに旅を始めた二人は、行く先々で様々な経験を積み重ねていくわけですか」
『ウン。私ノ想像シテイタヨリモ様々ナ場所ガアッタノ。ソコデ、イロンナ人間、変異体ト出会ッタ。人間ナノニ変異体ニ商品ヲ売ル商人サンニ、変異体ニナッテ夢ガ実現デキタ人形ヲ作ル人、チョット怖イケド……人間ヲ襲ウ変異体ヲ処理スル人タチモ』
「ちなみに、特に印象に残っている出来事はありますか?」
『一番印象ニ残ッテイルノハ……大雨ノ中ノ結婚式ニ参加シタコト。足マデ雨水ガ溜マッテイタケド、2人ガ結バレルトコロヲ見レタノ』
「実りのある旅なようで何よりです。ちなみに、お連れ様の男性は、あなたから見てどういった方ですか?」
『坂春サン、スゴク怖イ顔ヲシテイルノ。ダケド、トテモ優シイノ。旅ノコトヤ、コノ世界ノコト、イロイロ教エテモラッタ。初メテ出会ッタ時ハチョット暗イトコロモアッタケド、今ハ明ルクナッテル』
「なるほど。互いの巡り合わせに感謝しなければなりませんね」
『ウン。坂春サント出会ッテイナカッタラ、コウシテ旅ガデキナカッタ』
「では、次に視点を広げまして。あなたたちが生きているのはどういった世界なのですか?抽象的な訊ね方で申し訳ないのですが、お答えいただけると」
『私ガ旅シテイル星ハ……地球トソックリニ作ラレタンダッテ。地域ノ気候ノ違イガ激シイケド、地球ノ建物ガイロンナトコロニ建ッテル』
「さしずめ、地球の現身ですか。また大掛かりなことをやってのけたものですね」
『ウン。工事トカ……ドノクライカカッタンダロウ……』
「ふむ。その規模となると、工事などでどうにかなるものなのでしょうか?……いや失礼、少し思考の海に沈んでいました。ああさて、残念ではありますが、そろそろ時間切れのようです。恐縮ですが、最後に何か一言いただければと」
『ア、エット……ウマク説明デキタカナ? 私、説明ガヘタダカラ……』
「大変有意義な内容だったかと思いますよ。本日はお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。どうか、今後も良き旅を」
彼らは旅をする。まだ見ぬ何かに出会うために↓
『化け物バックパッカー』
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