「どっかの誰かみたいな、冷めた皮肉屋さんでした」 by密柑




「えーと、みなさまこんにちは。久しぶりに呼ばれました、密柑みかんです。とりあえず、今日のゲストの方をお呼びしちゃいますね。ではどうぞ」


『全く、クラス転移の次はなんなんだい? ゲストねぇ。君、どうやら呼ぶ相手を間違えたようだね。僕じゃなくてイケメンで人気者の光輝君を呼んだら良かったのに。君も疲れるだろう? 人選は慎重にしないと』


「あはは、私にはその権限がないもので。ともあれ、今日はよろしくお願いします。色々大変な目に合ったみたいですけど、その辺りの話はおいおい聞いていきますね」


『大変な目ねぇ。僕としては今のところ新たな人生を謳歌してるつもりではあるんだけど……死にかける以外大変なことってあったかなぁ??』


「なんでしょう、すごく大物な気がします。……えっと、手元の資料によると、テンプレのクラス転移に巻き込まれたとか書いてありますけど、これって事実なんですか?」


『んー、それは君の想像に任せるかなぁ、普通ならあり得ないことだしねぇ。僕はこれでも頭は常識人だ。あり得るはずのないことを口走る君みたいにはなりたくないからねえ』


「まあ、非日常が日常なんで、今更って感じですね。それはさておき、クラス転移のきっかけになったその勇者ってのは誰だったんですか?」


『まぁ、いいや。だから最初に言った光輝君だよ。男女共に人気者で、イケメンの彼女待ち、更に性格は聖人君子みたいな人だ』


「あー。スクールカーストの格付けがそのまま適用されたみたいな感じだったんですね。納得も理解もできるし適任だとも思いますけど、それはそれとして舌打ちの一つもしたくなるやつですね」


『まぁ、僕にとってはどうでも良いんだけどね。いつかどこかで野垂れ死んでもなにも思わないかな。元から関係は無かったんだから』


「想像以上に冷たいっ!?というより淡白!……じゃなくって、勇者には愉快な取り巻きが不可欠ですよね。そのあたり、適役はいたんですか?」


『何かと僕を嫌う喧嘩っ早い人やゲームオタク、天然な女の子に生まれも育ちもお嬢様がいたかな。もし僕が今あの中にいたら……もっと早く殺されていたかもしれないね』


「勇者よりも取り巻きの方が個性が強い奴ですね。というか、自信家な様に見えて、客観的な判断はされるんですね。まあ、そっちはどうでもいいとして。貴方はその後どうなったんですか?」


『んー? 牢屋にぶち込まれてすぐに処刑……ではなく国外追放が決まったね。王様は全く素晴らしい人格者だと思うよ。僕の持つ能力を見限ってすぐに手放せるんだから。判断が早くて助かるよ』


「え。捕まったんですか。何か恐ろしい能力でも持っていて、それを封じ込めるために監視下に置いたとかですか?」


『それは僕に対する皮肉かな? なに、無能だよ無能。そりゃせっかく召喚した勇者の中に最低の弱者がいるんだ。怒る気持ちはよく分かるよ』


「ああ、真逆の理由だったんですね。どちらにしろ、納得する材料はありませんけど」


『よほど僕が気に入らなかったんだろうね。例え別の結果だとしても、これほど優しい王様からは自分から抜けていただろうさ』


「少なくとも獄中死なんて結末は回避できただけ良いのでは?」


『そうだねぇ。逆に僕が死んでも良いやなんて思ってたらそこでゲームオーバーだったよね。とっても親切な看守さんのお陰だよほんと。』


「結果として自由の身にはなれたわけですか。勇者として神輿に担がれるよりは気楽かもしれませんね。……生き延びる術さえあればですが。察するに、貴方にとってのそれがスキルだったわけですか」


『そういうことになるんじゃ無いかなぁ? 背後から暗殺されようが、爆弾で吹っ飛ばされようが、結局は当たりさえしなければ生きられるんだから』


「それってあれですか?ドッジボールで弾避けだけやたらうまい人をスケールアップしたような感じですか?」


『簡単に言えばそうかなぁ。実際避けている間は現実から見たらとても素早く動いているように見えるんだから。その速さも相まって突進力も上がるっていうね。一体どれだけ早く動いたらあれだけの力が生み出されるかまでは分からないけど』


「躱すだけでなく、意外と応用は効くんですね。それで、結局どうやって生計を立てる事にしたんですか?」


『そうそう。途中で冒険者って人達に出会ったから成り行きでね。金稼ぐならこれが一番手っ取り早いって話も聞くからさ。君もどうだい? こんな所で縛られるより大分自由だよ』


「まあ、妥当な選択ですよね。あと、私はとある環境下でないと戦闘能力は皆無なので、お断りしますね。ともあれ、今は一冒険者として異世界生活を謳歌してるって事でいいんですかね?」


『ま、そんなとこかな。実は転移前より楽しく生きていたりして……』


「良かったじゃないですか。ちなみに、目的とかはあるんですか?クラスメイトを見返してやるーとか、王様をけちょんけちょんにして自分が玉座に座るとか」


『いいや特に? んな僕はそんな危険なことやらないよ。てかどうして感情に任せて復讐とか考える人がいるのか不思議でならないね。復讐なんてしたって何にも残らないんだからさ。自由気ままに生きようよ。とは言っても……なんか勇者君とか知らず知らずに被害被ってるらしいけど……? 目的を敢えて言うなら自由で楽しい生活が出来るするとかかなぁ……」


「そうなんですね。まあ、毎日ぼんやりと惰性で生きていくよりはその方がいいですよね」


『どっちでも良いんだけどねぇ。ぼんやりと生きていくのも良いと思うよ。でもそれは王国から売られてる喧嘩をしっかり破棄するまでだよね。』


「ちなみに、冒険者になってからの思い出とかありますか?印象に残っている出来事や人物があれば聞いてみたいです」


『んーそうだなぁ。グレイブって人かなぁ。年齢は通算して300歳超え。あ、見た目は16〜18くらいの青年だよ。もちろん真人間さ。先代皇帝の記憶なんてもの持ってて……最終的に歴史変えちゃうほどの大義成しちゃうんだよね。あれは良い思い出だよ』


「ありがとうございますです。そろそろ終わりが近いので、最後に一言だけもらってもいいですか?何を叫んでも宣言しても構わないので」


『特にないかな……? 別に僕は叫んだり何かを宣言する性格じゃ無いからね……?』


「やっぱりですか。まあ、それでいいならインタビューは終了です。どうもお疲れさまでした。読者の皆様、また次の機会があったらお会いしましょう。それでは」






 ↓斜に構えた主人公もまた一興


『クラス転移で一人だけ地味スキル【回避】が無能だと判断され理不尽にも追放された男の復讐劇』


 https://kakuyomu.jp/works/16816452220557623381

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