「次に会う時は、ただの友人として気ままに話したいな」 by水菜



「……お、きたきた!あんたが今回のゲストだな。えーっと、たしか名前は……そう、田中だ!あたしは神田水菜かんだみずな。短い時間だけどよろしくな!!」


『はい!田中幸葉たなかこうはです。こちらこそ、よろしくお願いします。えっと、ここは…?そもそも、何で私の名前知ってるんですか?』


「あー、わりぃわりぃ。いきなりよろしくなとか言われても訳わからんよな。とりあえず、お茶でもしながら話さないか?……っと、紅茶とコーヒーどっちがいい?」


『あ、紅茶で。お砂糖…とか、ありますか?』


「んじゃ、あたしもそうすっかな。……えーっと、指を二度鳴らすんだっけか。んー、こうか?」


『え、指を鳴らすと、何か起きるんですか?魔法!?あ、特殊能力…って言った方がいいのかな?』


「いや、この世界の仕様っていう方が正しいかな。とりあえずテーブルと椅子を出すか。えーっと、形をイメージして、指をパチパチっと。……うおっ!?ホントに出たな!」


『すごいすごい!私、魔法って初めて見ました!』


「いや、魔法ってわけじゃないんだが……。まあ、説明は後でまとめてするから、とりあえず座っちまってくれ。えっと、指をもう一度パチパチっと。……ほい、お前の分の飲み物な。砂糖はそっちの容れ物な」


『わぁ〜、ありがとうございます!飲み物もパチパチってやれば出るんだ!…これって一体どういう?あと、あなたは?私って何でここに来たんでしょう?』


「えっと、どっから説明すっかな。……とりあえず、ここはお前の夢の中だ。で、あたしはそこにお邪魔してるインタビュアー。オーケイ?」


『夢の中、なんですね。それは分かりました。でも、インタビュアーって?私、有名人でもなんでもないですよ?』


「や、有名とかはこの際関係ないんだわ。なんつーか、逆らう事の許されないとある人達に頼まれて、田中にインタビューするためにここへ来たと。これでちょっと理解できたか?まあ、漫画みてーな話だから、いきなり飲み込めっていう方が無理だろうけどな」


『…そっか。夢なら、魔法でも何でもおかしくないですね!了解です!インタビューなんてされたことないから、ちょっとワクワクするかも』


「ん、空気を読んでくれて助かる。あ、あたしの事は水菜って呼んでくれていいぜ。堅苦しいの嫌いだし。その代わり、あたしもコウハって呼ぶから」


『空気読むのは割と得意なの。よろしくね、水菜ちゃん』


「ホントはレックスっていう男のインタビュアーが来たいって言ってたんだけど、同じ女子の方がいいかと思ってな。上に無理言ってあたしが来させてもらったんだ。まあ、ガサツだし、言葉使いもこんなだから女子っぽくはないけどな。そこは勘弁してくれ」


『あ、そうだったんだ!私が通ってるのって女子校だから、男の子と最後に話したの、小学生の時で。水菜ちゃんが来てくれてよかったあ。ありがとう』


「どういたしまして。そんじゃ、事情説明も終えたところで本題な。今夜はあたしのインタビューに付き合ってもらう」


『はいっ!まずは何から?』


「とりあえず、聞きたいのはコウハの学校生活の話かな。それなら気楽に話せるだろ?それと、ここで話した事はそっちの世界には一切影響しないから、そこは気にしなくていいぜ。約束する」


『うん、確かに。それなら気楽かも。あ、影響しないなら包み隠さず話せるね!』


「とりあえず、コウハは今学生なんだよな。雰囲気からして高校生……はないな。中学生くらいか?」


『一応、中学3年生。この前も小学生に間違えられたけど』


「そっか、中3か。なら、じきに青春真っ盛りってわけだな。……その前に受験とかあるのが憂鬱かもしれねーけど」


『そうそう!女子校だから、恋愛とは無縁だけどね。中高一貫だから、受験は気にしなくていいの。それは楽』


「あー、そりゃいいな。そんで、クラスの面子とは仲良くやってるのか?特に仲いいヤツとかいんのか?」


『結構うまくやってるよ。今のクラス、すごく明るくて元気なクラスなんだ。毎日楽しいよ!色々な人と浅く広く関わってるのには、変わりないけど…番号が近い3人と仲良くなって』


「じゃあ、せっかくだしそいつらの話を聞かせてもらおうかな。どんな子たちだ?」


『 私が出席番号20番で、4人とも番号が続いてるの。17番が滝沢誠奈たきざわせいなちゃん。誠奈ちゃんとは、中2から同じクラスなんだ。ちょっと天然なんだけど、穏やかで話しやすいの。たまに、すごく深いことを言ってくれる時があってね。悩んでたりすると、いつも背中を押してくれる。何より、誠奈ちゃんがいてくれると安心するんだ。中2のころより距離が縮まってるし、これからもっと仲良くなれそう!

 18番が田所希子たどころきこちゃん。中1の時も同じクラスだったんだけど、その時はあまり話せなくて。でも今年は結構話せてる!あ、中1の時に同じクラスだったってことは、私の中1時代を知ってるってこと。大人しいけど、私たちには心を開いてくれてて、自分から話してくれることも増えたの。もっとお互いのこと知りたいな。

 19番が田中愛花たなかあいかちゃん。今年初めて同じクラスになったんだ。クラスメイトからよく言われるけど、私と2人で「ダブル田中」ね。明るいし優しいし、4人でいる時は愛花ちゃんが盛り上げてくれてる。とにかく、愛花ちゃんの笑顔がすごく素敵で!一緒にいると、つられて笑顔になるの。愛花ちゃんと仲良くなったきっかけは“苗字”だから、その点では苗字に感謝してる!たまたま出席番号が続いたってだけなのに、今の私にとっては、この4人でいるのが一番楽しいんだ』


「へぇ。いい仲間に恵まれたじゃねえか。いいなぁ、あたしもそういう学生生活を送りたかったなぁ」


『そうなの!みんなと仲良くなれて、本当によかったなって思う。ん?水菜ちゃんも、友達関係で何かあったの?』


「ああいや、そういうわけじゃないんだが。……まあ、あたしの話は脇へよけといてもらって。聞いてる限りでは楽しそうな交友関係みたいだけど、なんでどことなく不安そうなんだ?」


『え、やっぱり…分かる?』


「いや、ただの勘だけどな。どことなく影があるっていうか、何か抱えてるっぽいっていうか」


『うん。実は、中学校で初めて仲良くなった子たち…その時も4人グループだったんだけど、裏切りっていうか、そういうことされちゃって。それ以降は仲良しグループに、特に4人に、トラウマ?的なのできちゃって。だから、もう仲良しグループには属さないって決めてたんだけど…』


「……あー、それ以上は話さなくていいぜ?軽々しく触れていい話題じゃなさそうだし、あまり思い出したくもないみたいだしな」


『ううん、大丈夫。むしろ、水菜ちゃんに聞いてもらってよかったかも。後々は克服しないとって思ってるから。あと、誠奈ちゃんたちと…今の4人でいると、どうしてもあの時の4人でいたことも、忘れられないんだよね。「私って、4人が嫌なんじゃなかったっけ?」って。だから、ずっと考えてるし、頭の中にはずっとある。あの記憶が。…ごめんね、重い話して』


「別に構わねえよ。的確なアドバイスができるわけじゃねえけど、聞くくらいはできっから。ま、無責任に言っちまうなら、過去を気にするより今を楽しめばいいんじゃねえか?そう簡単な話じゃねえっていうのは重々承知だけどな」


『そうだよね!今の私には、誠奈ちゃん、希子ちゃん、愛花ちゃん…今の私を受け入れてくれる人たちがいるもんね。今の4人で過ごす時間は、大好きだもん。もしかしたら、これが“友達”っていうのかもって素直に思ってるよ。時間はかかるかもだけど、もう一度、友達のこと信じられるようになりたい』


「いいな、そういう前向きなの。ちょっと眩しいくらいだ。……まあ、あたしがそんなアドバイスをしたところで、起きたらこの夢の事はきれいさっぱり忘れてるんだけどな」


『あ、そうなんだ…でも私、どんな夢をみたかとか、結構覚えてるよ!だから、この夢も覚えていられるはず』


「だといいんだけどな。っと、そろそろ時間が来ちまったみたいだな。最後に、もしお前を常に見守ってくれている存在がいるとしたら、伝えたいことはあるか?」


『見守ってくれてる存在…?あ、ご先祖さま的な?えっと私、誠奈ちゃんたちに出会えて、友達の意味が少しずつ分かってきたんです。これからも、みんなと一緒に楽しい思い出をたくさん作っていきたい!この先も、悩んだりするかもだけど。私、今がすごく幸せなんです。多分、友達がいてくれるから。だからこれからも、見守っていてください!これからますます、楽しい日々が待っている予感がする。何より…贅沢かもしれないけど、この幸せがいつまでも続いていてほしい』


「ははっ、いいな、そういうの。んじゃ、これで泡沫の時間は終いだ。インタビューを読んでくれた皆、ありがとな!また引っ張り出されるようなことがあれば会おうぜ!あと、コウハもお疲れさん!またな!」


『色々聞いてくれてありがとう、水菜ちゃん!意外と楽しかったよ。じゃあね』







↓すれ違いや誤解、人を別つきっかけは些細なもの。立ち止まるか、新たな一歩を踏み出すかはあなた次第。さて、今回の彼女は――


『四つ葉のクローバー』


https://kakuyomu.jp/works/16816700429502248233

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