第八回募集分
「あいつ、今日も今日とて奔走させられてんのかなぁ」 byレックス
「うぇーい。果てしなくやる気が湧きませんが、本日のインタビュー、行っときたいと思いまーす。はい、読者の皆様方拍手ー。じゃあ、これにて今日のインタビューは終了でーす。オツカレサマデシタ」
『おいコラちょっと待て。何も、何一つ始まってすら無いんだが?何これ新手のタイムスリップ?それとも俺の記憶が飛んだのか?そうじゃ無ければ進行台本の書き間違いじゃないかな?』
「いやいや、間違ってないから。もう今日のインタビューはオレの中では終わったから。脳内略式即決裁判で答え出たから。主審も副審も異議なし、被告も原告も異議なし、傍聴席は大喝采!はい、勝訴」
『何で皆俺の敵なの。あと拍手喝采なのおかしくない…?いや、問題はそこじゃ無い。真面目にやれ。お前の中で勝手に終わらせるな。』
「……はぁ。わかった、わかりましたよ、やりゃいーんでしょ?」
『…何でそんな感じなんだよ。初対面だよな…?俺が何をした…』
「あん?なんでこんなやさぐれてるのかって?どうしても聞きたい?覚悟はあるんか?おん?」
『(どうしよう…コイツめんどくさいヤツかもしれない…)』
「まあ、なくても話してやるけどな!嫌だといっても聞かせてやるぜ!!」
『(もっとまともなインタビュアーおったよな…チェンジとか言っても良いかな…)』
「まあ本命に入る前に、インタビューも兼ねてお前について整理しようか。とりあえず、名前からな」
『…俺は、漆黒の騎士ジェド・クランバルだ。』
「オレはレックスだ、お前の名前は一生忘れねえからな!」
『(ヒェ…何か変なヤツに一生覚えられてもうた…)』
「で、お前は変わった体質というか性質があるみたいだな。特定の何かを引き寄せるっていう。具体的にそれはなんだっけ?」
『俺の特異体質か…信じて貰えるか分からないが…俺は、悪役令嬢呼び寄せ体質なんだ。』
「……」
『幾らファンタジーとは言えこんな体質、にわかには信じ難いよな……ん?何でそんな顔してるの?え?キレてる…?何で?俺何か変な事言った??いや、変なことではあるが…』
「そりゃキレるわ!!なんだよその特殊能力!!のほほんと生活してるだけで、美人美女がホイホイ寄って湧いて降ってくるって!?しかも、そいつらはお前への好感度高めで!?下手すると依存気味で!?なんなら告白までされて!?……んだよそれ!ざけんじゃねーぞ、てめえ!!ただ呼吸してるだけでハーレムとか、今時ラノベの主人公でもんなご都合主義な奴なんざいねーっての!!」
『ちょっと待て、何か誤解と語弊と早とちりと勘違いが複雑に入り混じっているぞ。お前が思っている事は何一つ一切無いし、全然一昔前のラノベハーレムでも何でもないが??というか悪役令嬢だぞ??』
「いやいやいやいや!!性格だの経緯だの立場だのはどうあれ、美女が向こうから言い寄ってくるってのには変わりないんだろ!?全国の非モテ男子が血の涙を流すぞ!!」
『(俺も彼女居ない歴=歳なんだが…正直に言ったら余計怒られそう…)』
「……はぁ。興奮しすぎてちょっと疲れてきた。あと、叫びすぎて喉痛い。軽くお茶ガブ飲みするから、自分の来歴やらでも語っておいて」
『(コイツの情緒どうなってんの…)えーと…コホン。俺は、剣聖を生み出すクランバル公爵家の子息であり、皇帝ルーカス陛下が治める帝国においてこの剣の腕を認められ、帝国騎士団の騎士団長を務めている。』
「へぇ、騎士団長ねえ。ちなみに、今までに手引きしてきた令嬢の数は?」
『…手引き…?そんな物一々覚えている訳が無いだろう。酷い時は3連続で来たりとか、数人纏めて救いを求めに来たりするんだぞあの悪役令嬢達は。』
「……ステイ、ステイ。まだオレは我慢できる。まだ堪忍袋の緒はつながっている。……すぅーー、はぁーーー。よし、落ち着いた」
『…いや、マジでお前が思っているような事は全く無いぞ。』
「まあ、うらやまけしからんのはさておき、お前自身はなかなか有能って事はわかった。でなきゃ、それだけの数の令嬢を救えやしないだろ」
『(…実は実際何とかしてくれているのは陛下とか宰相なんだが…)』
「……あと、ものすごく苦労してるのもわかった。ほれ、緑茶でも飲めよ。奢りにしといてやっから」
『(有料だったの…ちょっと美味しいと思っていたんだが)ズズズズ…苦労は伝わっているのか。』
「いやまあ、そんなゲンナリとした表情されたら嫌でもわかるわ。こう、なんていうか、オレが思ってたような理想郷生活ってわけでもなさそうだな」
『全く以てその通りだ。代わって貰える物ならばお願いしたい位だ。』
「まあ、なんだ。せっかくだし、今までにどんな目に合ったか話してみろって。愚痴の一つや二つくらいは聞いてやるよ。どうせ、向こうではそんな事すらできねえだろ?」
『愚痴る前に次の令嬢が来るからな…』
「気の休まる暇もねえな。……とりあえず、今までの活躍の中で特にインパクトの強かったやつでも語ってみてくれや」
『1番か…どれもこれもヤバイやつだったが…サンドワームが悪役令嬢だとか言われた時はマジで意味が分からなかったな…。しかも婚約者バジリスクだし。』
「……うわぁ。なんていうか、嫉妬が吹き飛んで同情しか残らないわ。人間ですらないし」
『分かってくれて嬉しいんだか悲しいんだか分からんな。』
「あー、まあ、なんだ。ここはお前の本来いる世界からは隔離されてるから、いきなり厄介事が向こうから押しかけてくることはない……と、思う。せめて、今の時間だけでも脱力して寛いどけよ。茶菓子もサービスしてやるからさ」
『ワーイ!いやぁ、ここめっちゃ良い所だな。お茶も美味いしなーんも心配事無いし。』
「……断っておくと、永住したいってのはナシな」
『…ぴえん』
「ぴえんて……。ちなみに、他にはどんなトンデモ設定をひっさげた疫病神と出会ったんだ?」
『えーと…俺、霊感無いから悪霊令嬢とかは見えなくて苦労したし、意外と多いのが腐女子系悪役令嬢?あいつら薄い本を帝国に広めようとしてヤバイ。それから、100キロを超えるお太めの悪役令嬢のダイエットに付き合わされたのは地味に苦労したな…あと、橋が悪役令嬢とか、呪いの人形とか悪役令嬢の持つ魔剣の中身が―』
「――あー、もうそこまででいいわ。なんていうか、全部聞いてたら夜が明けそうな気がするし。えっと、とりあえずあれだ。強く生きろ」
『もっと聞いてくれても構わないんだが…』
「で、安心しきって緩んでるところ悪いんだが、非常に残念なお知らせがあってな。……そろそろお帰りの時間らしいぜ?」
『え??もう??嘘だろう??最初の冗談だと言ってくれ!!…帰りたくない…シクシクシクシク』
「うん、まあ、嘆きたくもなるわな。……最後に一言、天からお前を見守ってくれている誰かさんたちに向けてコメントを頂けると」
『…分かった。最後まで見てくれてありがとう。悪役令嬢予備軍の異世界人の方々、俺の苦労話はこんな物ではない。他にも沢山の悪役令嬢がホイホイされ、更に変な勇者や変な魔法使いや変な聖女達のせいで俺の苦労はどんどんと増していく…良かったらレックスの代わりに俺の苦労話を聞いてくれ。レックスもありがとう、最初は変なヤツかと思っていたが、結構良いヤツだったな。お茶、美味かったよ。』
「はい、お疲れさん。……いや、向こうの世界の方がお前さんにとっては疲れるかもしれんけど。とりあえず、インタビューは終了だ。また次回をお楽しみにってな」
↓押し寄せる悪役令嬢の群れの中心で、今日も忠臣は哀を叫ぶ。
『悪役令嬢なんて知りません!〜悪役令嬢ホイホイの騎士団長は今日も歩けば出会ってしまう』
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