「観察するにはもってこいの人間ね」 byマイ
「……あら、お目覚め?ご機嫌はいかがかしら?」
『ん……? っ、て、テメェ誰だ!? 俺の屋敷にこんな女いなかったよな!?』
「貴方の綺麗なお人形さん達なら、ここにはいないわよ?それとも、私がメイドのコスプレでもすればよかったかしら」
『それはいいや。……いや、そんなことよりここ何処だよ!? 少なくとも俺の屋敷じゃねえな!?』
「ありきたりな台詞ね。でも、答えてあげましょう。ここは何処でもない世界。貴方の元居た世界とも、今居る世界とも別の場所よ」
『別の場所……また異世界転移か!? あぁもう、さっきの世界でやり残したことがあるっつーのに……! いっそこの力で、世界の境界ぶっ壊して――』
「残念だけど、ここでは貴方の相棒も、授かった異能も力を発揮しないわ。まあ、管理している存在が別なんだから当然よね?」
『……は? は、はぁ!? なんだそれふざけんなさっさと帰せ!』
「まあ安心しなさいな。ちゃんといい子にしていたら、あのユートピアへと、五体満足で帰してあげるから」
『なんだそりゃ、胡散臭ぇ。お前、この俺をこんなところまで引きずり込んで、一体何が目的なんだよ。ろくでもないことだったらぶっ飛ばすかんな』
「そんなに警戒しなくてもいいわよ。してもらう事はなんてことない、ただのインタビューなんだから」
『……インタビュー? こんな大層な真似してまでインタビューか?』
「そう、インタビュー。貴方の異世界での活躍っぷりを聞かせてもらうだけでいいわ。簡単でしょ?」
『そのためだけに俺をここに引きずり込むたぁ、酔狂な連中もいるもんだな。……まぁ、俺を選んだのは見る目があるな。それに俺の活躍について語るのも悪くない。受けてやろうじゃねえか!』
「素直な子は好きよ。……じゃ、前置きが長くなったけど始めましょうか。とりあえず、向こうの世界で名乗っている名前を聞かせてもらおうかしら」
『
「私はマイ、たかだか十数分程度の付き合いでしょうけどよろしく。それで、貴方が異世界へ飛んだきっかけは?」
『それは正直よくわかんねえんだよな……寝て起きたらいつの間にか、どっかの城の中庭に倒れてたんだよな』
「まるで昔のRPGみたいね。……で、そこでギヴァっていう都合の良い存在に出会ったってわけね。よかったじゃない。彼のおかげでいい夢を見させてもらってるんだから」
『なんか棘がある言い方だな。……まぁいい。ギヴァは俺が望めばどんな力も寄越してくれるんだ。無限回復に剣技、魔族の浄化能力、果ては洗脳にも近い魅了能力までな! 便利ったらありゃしねえぜ、ははっ。……自覚ある振る舞いがどうのこうのって、たまにウザいこと言うのが玉に瑕だけどな』
「あらそうなの。それじゃあ次は、そんな貴方達が異世界に降り立った後のご活躍を聞かせてもらおうかしら」
『よくぞ聞いてくれたなぁ! 俺とギヴァは魔族の共同戦線と戦いを繰り広げてるんだ。たった二人で連中……特に魔神種はもう半壊まで追い込んだ! あとは邪神種も倒して、最後に両方のボスを叩き潰したらハッピーエンドって訳なんだよっ、どうだすげーだろ!』
「大層なご活躍ね。さぞかし充実した生活を送ってるのでしょう。並の人間から見れば羨ましい限りでしょうね」
『ずいぶん皮肉っぽいな……。ま、充実してるのは事実だよ。英雄様と崇め奉られるのは喜ばしいし、魔族どもを微塵切りにするのも楽しいことだしな。帰ったらメイドたちにも癒してもらえるし? ギヴァがたまにウザいのだけ腹立つけど、それ以外は思い通りにならないことなんか何一つない。まさに理想郷って感じだな!』
「ま、その調子でこれからのご活躍にも期待してるわ。それなりに応援してあげるから、せいぜい飽きさせないで頂戴」
『いったい誰目線で言ってんだよ……腹立つな。ま、そっちこそ、せいぜい俺の英雄譚を目に焼き付けるこったな!』
「ええ、そうさせてもらう事にするわ。さて、それじゃあそろそろ理想郷に帰してあげましょうか。最後に何か言い残しておくことはあるかしら?」
『そうだな……このインタビューを見るだろうお前らも、俺の英雄譚、しかと見届けろよ! そしてこの俺を救世の英雄様と崇め奉れ!!』
「はい、お疲れさま。それじゃ、次の機会があればまた会いましょうか」
↓夢を見る事にすら代償が付き纏うという現実を突きつけられる物語。ある種のアンチテーゼにして、不変の教訓。
『ヒーロー・エクスマキナ』
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