「なかなか見物だったぜ」 byクゼツ


「おいっす、両大統領。奇想天外、驚天動地の異常事態が起こって大変な中、力づくで連れてきて申し訳ない」


『一体何のつもりでここに連れ出して来たのかは知らないが、国の最高権力者を強引にここに連れ出すという思考は、如何なものか』


『はぁ…悪いが、なるべく早く用を済ましてくれるようよろしく頼むよ』


「うん、こっちにヘイトを向けつつ、お互いの出方を伺っているあたりはさすが一国のトップだ。とりあえず、自己紹介を交換するというのはどうだろうか。ちなみに、オレはクゼツだ」


『なるほど、私は第5代目ロシア連邦大統領のアレクセイ・スネシュコフだ。とりあえず貴方は隣にいる大統領も含め国のトップを連れ出せた事に感謝でもしたらどうなんだ?』


『第47代目アメリカ合衆国大統領のアンドリュー・ウェスリーと申します。ライバル的存在がいるのと強引に連れ出した点に関しては私は不満ですがね』


「まあそんな怖い顔すんなって。確かに、手刀や腹パンで気絶させてここに引きずり込んだのは悪かったけどよぉ。別に、身代金要求とか洗脳して手駒にしようとかそーいうつもりはねえからさ。手段は乱暴だったかもしんねえけど、目的はもっと平和的なのよ、これでも」


『平和?何を考えているんだ?たとえ我々みたいな超大国でもない国のトップであったとしても、そいつが正体不明の何者かに拐われたりなんかしたら大事件になるのは計画性の無い貴方でも分かるはずでは?』


『そもそもクゼツ…だったかね?君が私とスネシュコフにした事は一種のテロみたいなものだ。今頃あっちではスネシュコフと私が突如消えた事に大分騒いでるだろうね』


「ま、そうだわな。現状のオレの認識はテロリストと同一だろうしな。じゃあ、いっそ本職のテロリストに倣って先に要求を突き付けてみるとするか」


『おい?正気なのか?冗談半分で言ったつもりなのならただでは帰らせないからな?そもそも貴方の言動は明らかに目上の人物に対する敬意がなってないぞ。言葉遣いというのを心得てないのかね?』


『はぁ、これだから…これだからスネシュコフは。スネシュコフさんもそろそろ冗談ってのを理解しましょ?そんな固い頭じゃいつまで経っても我々と友好になれませんよ?』


『君の方こそ大統領という国の代表としての立場の意識を重くしたらどうなんだ?そんな軽はずみな行動ばかりしかしないからベトナムで調子に乗って不名誉の敗北になったんだよ?分かるか?』


『スネシュコフさんったらそんな態度をして本当ロシア国民の恥ですねぇ。そっちだって日露戦争で日本に負けて、第二次世界大戦の時フィンランドにボロ負けした国が言う立場じゃないですよ?まだ認めないんですか?』


『このやろ──』


「はいはい、政治討論はそのくらいにしておいてくれ。とりあえず、こっちの要求はインタビューだ。理性的に話をしようじゃないか」


『うむ…先程はすまなかった』


『申し訳ありません、ライバル関係ですからヒートアップするのは致し方ない事なんです』


「まあ、そんな反応になるのも無理はないわな。要は、あんたらが置かれている状況を中心に、いろいろと話を聞かせてもらいたいだけなんだが。先に牽制しておくと、オレはその理由なんて知らねえ下っ端なんで。情報をこれ以上引き出そうとしても無駄だぜ」


『はぁ…なんでこんな奴と一緒にインタビューしなければならないんだか…』


『それはこっちの台詞ですがね』


「てなわけで、これ以上前置きが長くなるのもあれだから、ちゃっちゃと進めさせてもらうぜ。とりあえず、今あんたらの世界に何が起こってんのか聞かせろや」


『まあいい、とりあえず手短に言おう。まず4月1日を境にして突如として地球が別の星系に飛ばされたって訳だ。幸い地球と月を周回してる人工衛星と宇宙ステーションは何の影響も無かったが、火星とかの惑星にいた人工衛星との通信は全部途絶した。惑星が無い以上予定されていた探査機の打ち上げも未定になったという事だ』


『まあその問題に関しては我々の宇宙望遠鏡が偶然にも解決してくれましたがね』


「表面上は素直でよろしい。で、あんたらはそんな異常事態に対して、どういう対応をする腹積もりなんだ?とっくりと聞かせろや」


『地球大転移という地球史上例を見ない大事件だからな。何が起きるのか分からない以上、状況が良い方向に傾くまでは少し行動は慎重にしていないとな』


『実は我が国はこの事態を受けてロシアとも一部条件付きで協調を図ろうと考えています。ちなみにロシアの南には中国という国家がありますが、それに関しては思想が全く違うので協調する気なんてありませんが…』


「まだちっと固いな。うーん、そうだな……よし、あんたらが元の世界に戻った時、ここでの記憶は持ち帰れないと明言しておこう。これなら、少しは赤裸々に話せるか?」


『ここでの記憶はあっちに持ち帰られないとしても赤裸々に話すのはかなり不安だ。重要な事に関しては私は控えめに話をさせてもらう』


『ええ、私もです。』


「慎重なことで。まだまだ手札を隠してそうだが、まあこれ以上は勘弁してやるよ。それで、あんたら以外の国についてはどうだい?興味深い動きをしてるところとかはあんのかい?」


『そういうのはウェスリー大統領に聞いたらどうだ?あいつなら大統領としての意識が軽いだろうから堂々と話してくれるだろうからな』


『皮肉るのも程々にした方が良いですよ?…まずは先程言った中国、この国は数十年前から宇宙開発が急成長を続けているんです。ですのである意味中国の方がロシアなんかよりライバル的な存在が合ってるかもしれませんね。あとはインドもですかね。ここも大転移する一年前に有人宇宙船の打ち上げに成功しましたからね。無論、地球大転移によってそれらの勢いは止まりましたが』


「はっは、それぞれ思惑はあるみてえだな。今後の世界情勢がどうなるか楽しみだぜ。文字通り、オレは高みの見物でも決め込ませてもらうとするわ。せいぜい、人間同士協力したり反発したりしながら足掻いてみるといいさ」


『その上から目線発言もそろそろいい加減にしてくれないか?貴方の話す口調を聞くだけで不愉快極まりない』


『すいませんね、この人って本当頭が固くて。冗談が理解できない人間ですから…』


「まあ、この性格が反感を買いやすいってのは充分自覚してっから構わねえよ。ともかく、これが最後な。こいつは話せる範囲でいいんだが……今後どういう事態に直面しそうか、未来の予想や展望を教えてくれや」


『詳しい事は言えないが、今後我々はアメリカが見つけた惑星に向けて探査機を打ち上げる予定だ。本来打ち上げるはずだった探査機が保管されているからそいつの仕様を少し改変して使う。打ち上げ予定日もとっくに決めてある。恐らく今後は大転移前より更に技術等が大進歩するだろうと考えている』


『まあ…とりあえず惑星に知的生命体が本当に存在していたら人類が抱く謎の一つが解決されるかもしれませんね。それが我々と似た容姿をしていてなおかつ友好的なのなら私は大歓迎ですが、敵対視するのなら前代未聞の惑星規模での戦争が起こるでしょう。もちろん、そんな事は起きて欲しくないんですが…』


「うい、あんがとよ。じゃ、そろそろタイムオーバーだし、あんたらをもとの世界に帰してやるとするよ。消える前に、何か一言ずつ遺していきな」


『今これを読んでいる読者の内の誰かがロシアに訪れてくれる事を願っておく。アメリカには無いモスクワとサンクトペテルブルクにある歴史的建造物や、バイカル湖やシベリアといった大自然も満喫出来るぞ?』


『ロシアに訪れるのは構いませんが、ちゃんとアメリカにも観光に来てくださいよ?ロサンゼルスやニューヨークでしか見られない大都会の光景や、フロリダやハワイにあるビーチ等魅力が豊富ですよ!』


「はっ、悪くねえセリフだ。そんじゃ、今回のインタビューはここまでだ。あばよ両大統領、並びに読者諸君」







その時、歴史と地球が動いた!↓


『2025年地球大転移』


https://kakuyomu.jp/works/1177354054917388869

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