「自分より上がいるとは思いませんでしたねー」 byクレッセ


「まずははじめましてですねー。自分はクレッセと申しますー。短い時間ですが、お見知りおき願いますねー。よろしければお名前を伺っても―?」


『わぁー!ヒサビサの日本語だー。なんか懐かし。お言葉間違ってたらごめんなさいね! ユリエですー。旧姓西村ですー。カメラどこ? 佑樹に届くかな~? 見てる~?元お姉ちゃんだよ~!』


「忙しないですねーというツッコミは置いておくとして。なかなかにいい名前ですねー。というか、こうして未知の空間にいきなり飛ばされてきたというのに、意外と落ち着いてますねー」


『寝落ちは特技ですから!……おでこにたんこぶできてなければいいなぁ……』


「回答がずれてますが、まあどうでもいいことですねー。とりあえず、インタビューの謝礼代わりにー、貴女が転世する前の世界で売ってる飲料とお茶菓子を色々と揃えてみましたが、よろしければいかがですかぁー?」


『太っちゃったんで要らないです』


「即答ですねー。まあいいんですがー」


『あ、でもおにぎり食べたいな! その梅干しのヤツ。お持ち帰りよろしい? あっちの世界はお米が無いの!』


「早くも前言撤回ですねー。まあ、どうぞお持ち帰りください。とりあえず、貴女相手にインタビューをせよと仰せつかっているのでー、ゆるりとやらせてもらいますねー」


『あら、私悪いイミで有名人ですけど、いいの? あ! もしかして効率的な雑用のまわしかたについてですか!?』


「……ちなみにですけどー。ユリエさんって、よく「マイペースだね」とか、

「天然さんだね」なんて言われるんじゃないですかー?」


『マイペースかなぁ? でも楽しいと体がひょこひょこしちゃうし、嬉しいとつい抱きついちゃうのよねぇ。自分に正直って素敵じゃない』


「ちなみに、自分はマイペースだとよく言われますよー。自覚もありますし、反論する気はないですけどねー」


『マイペース推進派ですね! 素敵! 私も子分になりますー!』


「結構ですー。ともあれ、そろそろ始めましょうかー。とりあえず、貴女が紡ぐ物語のタイトルを教えてもらう事から始めましょうかねー」


『雑用は、知恵と根性でどうにかなる!』


「あ、無理に答えようとしなくていいですよー。今からこの異空間『ドウニカナール』のご都合主義な側面を最大限に引き出して、真の答えを導き出しますから―」


『え? 私の就職先は雑務中心で……』


「ではではー……うー、にゃー、やー、たぁー。……では、今貴女の頭に浮かんだフレーズを述べてもらってもいいですかー?」


『「歌は世界を繋ぐ愛」?!なんだこれっ!』


「それが貴方の紡ぐストーリーの題なんですねー。字面だけ見ると、随分とロマンチックですねー」


『なんか口から言葉落っこちた! すごい! それ欲しいっ!』


「あげません。じゃあ続いて、貴女の今の状況と、そうなるまでの過程を語っていただけますかー?できれば、自分が退屈しない程度の長さで―」


『飛んできて魔法使い』


「いくらなんでも端折りすぎだと思いますー」


『なんか、元々この世界のラスボスだったのが、まともに育ちますよーに、的な感覚で別の世界へ飛ばされて、この度強制送還されました、的な?』


「長さは適度ですがー、主観的過ぎていまいち状況が掴み辛いですー」


『私もさっぱりなんですよねー。佑樹に、あ、弟に会えないのがものすごく悲しいけど、でもめちゃくちゃ面白いし、好きな人も出来たし、お菓子は美味しいし、まいっか! みたいな!』


「……ユリエさんって、もしかして自分よりも自由奔放な人だったりしますかー?」


『んー、自由に空飛べたら素敵ですよねぇ。今度頼んでみようかなぁ』


「あー、自覚はないんですねー。まーいいんですけどー」


『ん? 私日本語変だったかな?』


「正直、日本語以前の問題かとー。じゃあ次ですー。今いる世界で、貴女と関わりの深い人物を何人か紹介してもらえますかー?」


『まずみーちゃん! かわいい白猫お母さん。ラウールさんは私のイソウロウ先のご主人様。何だかんだで優しい人だよ。次に陛下でしょー? この人はバケモノ的に強い人で、女官長さんの毎朝のゴムタイは大分なれたかな? イシュルゥナは川の精霊のべっぴんさんで、アマラはキレると怖い木の精霊の女番チョー、歩く下半身のシェリダンに、のちのち私と契約するハーピー四姉妹は梟みたいにかわいいよ!』


「やっぱり解説が主観的な上に、表現に遠慮も容赦もないですねー。貴女の脳内には、客観とかオブラートなどの言葉は存在しないのですかー?」


『オブラート? て、なんだっけ?』


「ですよねー。でも、不思議と嫌悪感は感じないですねー。これも一種の人徳でしょうかねー?」


『わぁー! 嬉しい! 結果的に誉められてるー!』


「わー、謙遜って言葉も存在しなさそうですー」


『ホントに仲良くなりたければ、たまには謙遜もどこかにおいて来なくちゃね』


「でも、結果的にインタビューの内容が面白くなりそうだから結果オーライですー」


『やったー! 流されちゃったけど、まるっと誉められたぁ!』


「少しは反省してどうぞー。そして、そんなこんなでそろそろ十二時の鐘が鳴る時間なのですよー。シンデレラは元の世界に帰る時間なのですー」


『え? もう!? カメラは!? 「ナントカナール」でドウニカならない!?』


「居座られても困りますー。最後に、貴女の抱負とか意気込みのようなものを頂けますかー?それでインタビューの締めにしますー」


『お米食べたいからみんなと力を合わせて稲作始めてみます!! その前に稲を頑張って作ります!※本作品の内容とは全く関係ありません※』


「はーい、というわけで、最初から最後までマイペース&フリーダムなユリエさんでしたー。次の機会があればお会いしましょー」







飾らない等身大の地の文が、なかなかに味わい深い一作ですー。↓


『歌は世界を繋ぐ愛』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054897738662

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