「納得する事を放棄しました」 byクスト


「こんにちは。貴方が僕の待ち合わせ相手という事でよかったのかな?」


『そうです。初めまして。名前は……まともなのじゃないんで、今回はパスで。でも、《前に[その方面]に関わりがあった人》とでも思ってもらえると』


「承知しました。っと、名乗るのが遅れましたね。僕が今回インタビューを申し込んだクストです。以後お見知りおきを」


『ええ。と言うか公園のベンチで話す内容じゃない気がするので、バイクの後ろに乗ってもらって……。ヘルメットは後ろの席に置いてあります。なんで、それを被ってもらって。

インタビューなら、後付けしておいたバイクインカムで出来ますよ。スイッチ操作無しで会話出来るので、その辺は気にせずに』


「これはご丁寧にどうも。……早速ですけど、最近奇妙かつ愉快な出来事に立て続けに遭遇されたとか。確か、妖怪だか怪異だかと遭遇した、なんておっしゃってましたよね?これ、事実なんですか?ジョークや比喩ではなく?」


『まぁそうですね。全部ホントの事です』


「もしかして、怪しい薬とかやってますか?」


 おクスリキメたねなんて言う名前の、どこかの製薬会社が作ってる子供向けゼリー状オブラートのパクリみたいなやつも使ってませんし、そもそもクスリもキメてません』


「残念。もしそうなら、季節外れの怪談よりもそっちの方が美味しかったんですが」


『 』


「……ちなみに、脳検査とか精神鑑定とか受けましたか?なんなら、いい病院知ってますけど」


『それなら知り合いの所で十分ですよ……』


「まあそう言わずに。こういうのは自覚がない分厄介なんです。それに、今から紹介する病院って、その筋ではものすごく有名なんですよ?」


『ほぉ。それは興味がある。話を聞きに行きたいなぁ』


「ええ。なにせ、幽霊が出たって噂がひっきりなしで、オカルトマニアの間では抜群の知名度を誇りますから」


『それ、たぶん知り合いのところですわ……』


「なんという偶然!でも安心してください、一割は冗談ですから」


『どの一割ですか…』


「それはさておき、あくまでも自身が実体験した事実だと仰るんですね?順を追って話を伺う事にしましょうか。最初の未知との遭遇……つまりは貴方と怪異とのファーストコンタクトはどんな形だったんですか?」


『それをさて置かれた!!1番さて置かれたくないところを!!まぁいいや。それで、ファーストコンタクトは、トイレの花子さんです。小学生の頃でしたね』


「ベタというか、日本では知らない人の方が少ない話ですよね。ちなみに、どんな状況からスタートしたんですか?」


『下痢しちゃってたんでトイレに駆け込みましたね。教室が3階にあって、なんでかたまたまその日は手前から3番目しか空いてなかったんで、入ったんですけどそしたら急に近くのドアをノックする音が聞こえてきてですね』


「もうのっけからおかしいですよね!?」


『まぁまぁ……。続けますけど、激しめに3回だったんですね。「あ……なんか…………コレ……」そう思った瞬間、目の前からノック音が聞こえて来たんでとりあえず「花子さんいらっしゃいますか?」って聞いてみましたね。

そしたら、「うん。と言うか早く開けて!! 間に合わないから!!」って怒鳴られて。挙句に【バンッ!!】って音を立てて開けられてね」


「いや、開けんなや!プライバシーもクソもないな!トイレだけに!」


『プライバシーもクソもねぇなぁ!! と俺も思ってたから、怒ろうと思ったら「門限!!」って言われて驚いたよね。「は? いや、は!?」って出かけたよね。《門限》って』


「門限って何さ!?丑三つ時とか!?」


『さぁ?なんでしょうかね……。んでまぁ、かくかくしかじかで何故か学校公認になりました笑』


「いい話風に締めてますけど、最初から最後まで謎だらけだったんですが!?」


『次にメリーさんですかね』


「ああ、これもよく聞く怪談の一つですね。で、私たちがよく知ってるそれとはどう違ったんですか?」


『TwitterのDMに「私メリー。よく分からない星に居るわ。ロケットに乗って行くわ」って来たのが、メリーさんとのファーストコンタクトですね。

その後4日後にブラジルに落ちたから、「ファーストクラスに乗って行くわ」って言われましけども。とりあえず1回目のメリーさんの襲撃の情報はここまでにしておきますね』


「うん、ちょっと待ってもらっていいですか。さっき話の以上の情報の暴力にさらされて、理解が追いつかないんですが」


『2回目は更にぶっ飛んでますよ……。如何せん月の重力圏から跳躍だけで脱してますから。ついでに月兎の携帯パクって。ああ。そうそう。忘れてたけど、生身で大気圏に突入したらしいし』


「ツッコミどころが渋滞してますね!クラクションはどこにありますかねぇ!」


『クラクションならこれですけど』

【プァー】


「いや、ただの比喩的な意味だったんですがっ!」


『あ……。いや、目の前でメリーさんが羊を連れてたもんで……』


「都市伝説でなく童謡の方!?僕は動揺が隠せませんが!?」


『ははは……。うちのメリーさんは困ったもんです……』


「困ったもんですなんて言葉で済ませていいんですか、これ?そして、メリーさんが現代社会だけでなく宇宙空間にも適応しているっていうね。歌は世につれ世は歌につれ、なんて言いますけど、怪異もそうなんですかね?」


『さぁて。どうなんですかね?』


「真実は彼女のみぞ知る、ってところですかね。……それで?他にも面白おかしい怪異談があるんですか?」


『まぁあともう1つだけあるんですけど』


「訊ねといてなんですけど、まだあんの!?」


『口裂け女なんだけど、やっぱりメリーさんが絡んできて…』


「またお前か!存在感出し過ぎだ!?」


『その時の口裂け女の服装はなかなかに凄かったですね……。赤い着物の上に白コート。赤ベレー帽とサングラスにマスク。白のブーツを履いて手には赤い傘。なかなかな格好してましたね。』


「あー、ストップストップです!これ以上聞いてたら、脳細胞が溶けますから!もういっそのこと、自身の赤裸々な体験談を文章化して、その手のサイトにでも投稿でもしてみたらどうですか?きっと、ウケると思いますよ?」


『それも良さそうですね』


「ちなみに、もし実行するとしたらどんなタイトルを付けますか?」


『《誰か助けて!! 怪異達が自分の本領を忘れてるから!!》ですかね』


「ははは、そりゃあいい!まさにってタイトルですね!インパクトもあって、でもシュールさも感じ取れる、味のあるいい題かと思いますよ」


『もっとましなタイトル考えなきゃダメそうですけどね。ははは……(呆れ笑い)』


「ええ。その時は、僕も読ませてもらうとしますよ。本音を言うと、続きが気にもなりますから」


『おお。それはありがたい。……と。そろそろ待ち合わせの公園に着きますよ』


「さて、それじゃあ僕はこのあたりでお暇させてもらいますね。今日はありがとうございました」


『こちらこそ本日はありが……ん?メリーさんが羊を連れてこっちに。手紙を届けに来たよ?いや待てやおい!!羊に食われかけとるがな。えーっと……《マジでネタ求むby作者》……だそうです。皆さん。よろしくお願いしますね。じゃあ今度こそ。

今日はありがとうごさいました。クストさん』





「……ああ、そうそう。一つ言い忘れてましたよ。病院の予約は取っておいたんで、ちゃんと受診してきてくださいね?」


『いや、だから勝手によやkイヤナンデモアリマセン』


「さっき話したのとは別の病院なんでご安心を。ただ、どこからともなく『赤いちゃんちゃんこ着せましょか』って声が聞こえてきたら、気を付けてくださいね?それじゃあまた!」


『全身武装が必要そうだな……』





愉快で奇怪な怪異たちをご覧になりたい方はこちらへ↓


『誰か助けて!!怪異達が自分の本領を忘れてるから!!』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054896765374

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