「美しい華には棘ありか……気づくのが遅かったなぁ」 byレックス

「ちわーす。インタビュアーだっけ?それを押し付けられたレックスです。適当によろしくでーす。じゃあ、今回のゲストに登場していただきましょう。えっと、自己紹介からでいいんだっけ?まあいいや、どうぞー」


『私の名はアリーシャだ。この現場がどのような場所かは知らないが、どうにも愉快な会話を楽しめそうじゃないか』


『私はフィーネ。……アリー、これはどういうことなの』


「ひゅう。異世界から来ただけあって、二人とも可愛らしい!ぜひ、今回の席だけでなく、プライベートでもよろしくしてほしいところだけど、どうかな?」


『ぷらいべーと……? 意味は分からないが、察するに我々を口説いていると見ていいのだろうか? もしそうならば、残念だ。私には助手くんと言う大事な存在がいるのでね』


『アリー、そんな恥ずかしいこと真剣に言わないで! それに、こんな軽薄な人に少しでも気のあるような言い方しちゃだめだよ!』


「は、はは、手厳しいな。ともあれ、本来の仕事の方を果たすとしようか。まずはタイトルと、簡単なあらすじから教えてもらおうかな?」


『ふむ……我々の知らない言葉が点々と現れてくるな。しかし前後の文でおおよそ見当はつくからよしとしようか。そのたいとる、と言うのはおそらく〝異世界奔放奇譚いせかいほんぽうきたん〟と言う作品名のことだろう』


『え、なに? あらすじって私が言うの? えとちょっと待ってね────はい! 今作者から聞きました! えっと……発明家のアリーとその助手である私のゆりゆりれんあいものがたり──いや絶対違うよね! アリーの変な発明品のせいで飛ばされた異世界でいろんな事するんだよね! 私たちの作者って大丈夫なのかな……』


「アリーシャさんは発明家で、フィーネさんは助手、と。聞いた話では、フィーネさんは奔放なアリーシャさんに振り回されっぱなしだとか」


『私は助手じゃありません! でも、アリーが好き放題やってくれるのは本当だよ。……まあ、別にアリーのやることに文句はいわないけど、それでアリーが危険な目に遭うのはやめてほしいな』


『まったく、君は本当に愛おしいな! 君さえいれば例え世界の果てだろうと、怪物の巣食う混沌とした世界だろうと、死ぬ未来が想像できないな』


「この様子からすると、案外お互い様なのかもな。何にせよ、仲が良いのは分かった。そんな二人の掛け合いが、作品の魅力の一つと言ってもいいのかな?」


『作品の魅力などは知らないが、彼女の愛らしさは間違いなく、全てを虜にするほどに魅力的と言っても過言ではないだろうな』


『だからやめてよアリー! あなただって十分魅力的なんだよ? どうしていつもいつも、そんな恥ずかしいことを真剣な顔で言えるのか教えて欲しいな!』


「うん、胸焼けするくらい仲が良いね、君たちは。他に、アピールできるポイントはあるかい?」


『むう……流石に判断に困る──ん? ああ、そう言うことか。私からは助手くんの愛らしさを推させてもらおう。特に、絶品料理を食べた時の彼女の反応と言ったら、生まれたばかりの仔猫を見ているかのような気持ちにさせられる』


『アリー、さっきから私のことしか言ってないよ! 作者だって、私たちのいく予定の世界のこととか、話の先に隠されてる真実だとか、今は話せない秘密の話とか、いろんなこと言いたかったと思うんだっ!』


「とりあえず、フィーネさんは落ち着こうか。なんなら、俺が抱きしめてあげても――」


『レックスさんは黙ってて! 怒ってる時の私は手加減できないよ?』


「思ってた以上にアグレッシブ!?自分、調子乗りました!!だから、その徒手空拳の構えをやめて頂きたい!」


『さあアリー、作者の心の声をみんなに伝えるんだよー』


『ところで助手くん、彼の前でそんな激しく動いてもいいのか? 大胆なのはいいことだが、君にしては恥じらいが不足しているように感じられるな』


「なんだかわからんが許されたとみていいんだろうか。思わぬ命の危機だった。あと、アリーシャさんはマイペースすぎやしないかね?」


『作者の速やかな翻訳に感謝しよう。発明家として、自分の意思を貫けないようでは未熟としか言えないだろう。つまり、そのまいぺーすと言う言葉は称賛として捉えさせてもらおう』


『──アリー、早く終わろ。私もうやだ……』


「心が折れているらしいから、締めに入ろうか。じゃあ、最後に一言ずつ貰おうかな。内容はお任せするよ」


『私は助手くんの魅力をまだ言い足りていないわけだが、このまま彼女について話し続けると言うわけには──』


『アリー、早く終わらせて。終わらないなら私が終わらせるよ?』


「おおう!?これ以上はまずい気がする!と、ともかく、今回はこれで終了だ。また次回があることを祈るとしよう」










「ところでお二人さん、ちょっと気になってたんだが?」


『おおよその見当はつくが、あえて聞くとしよう。なにが気になると?』


『ねぇ、私は早く帰りたいの。なんで足止めしようとするの?』


「この世界に来た時、どうして二人は一糸纏わぬ姿だったんだ?」


『是非こと細かく説明したいところではあるが、君は触れてはいけない事に触れてしまったらしい。憐憫れんびんの情だけでも送るとしよう』


『うん。さようなら』


「え、ちょ――」



――その後、レックスの姿を見たものはいない。















※来週には何事もなく復活します。






マイペース&ハイキック(?)な二人の異世界漫遊はこちらで↓


異世界奔放奇譚

https://kakuyomu.jp/works/1177354054892404240

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