「終末世界のアダムとイブ……というのは少し違うかしらね」 byメルティ


「ようこそお客様。いろいろ言いたいことはあるでしょうけど、まずは自己紹介をさせてもらいますね。私はメルティ、今回インタビュアーを務めさせていただきますわ」


『えっと…よろしくおねがいします。一つ…いや、大量に!質問させてくれ!人間なのか?それともアンドロイドか、ロボットなのか?あと、ここは俺のいた世界か?…いや、ちがうよな?ここはどこなんだ……って、すまない。言葉の通じるものを少女以外で久しぶりに見たもので…。』


「なら、次のうちから一つ質問する権利を上げますわ。一、私が何者なのか。二、此処が何処なのか。三、何故貴方が呼ばれたのか。さあ、どれにします?」


『一…かな。一番知りたい。人間かどうかを知りたいんだ。』


「というわけで、インタビューをはじめさせていただきますわ」


『質問しといてそんなひどいっ!』


「あら、どうして答える必要があるのかしら?たしかに質問する権利は与えたけれど、こちらに回答する義務はないはずよ?」


『正論を言ったら暴論で返された…。』


「なら、代わりに一つ教えてあげましょう。貴方はとある義務を果たさなければ、この世界から出ることはできません。その義務が何かはもうお分かりね?」


『あなたは回答する義務が無いのに、俺にはあるのか…まぁ、分かった。あと、ここが俺のいた世界とは違うこともわかった。』


「じゃ、改めてインタビューをはじめますわ。まずは、貴方が本来いるべき世界についてなのだけど。あそこって、事実上既に滅んでるわよね?」


『そうだな、愚かな先人の戦争やらのせいでな。』


「典型的な終末世界ね。人間は絶滅寸前で、文明もスクラップや瓦礫と化したと」


『正直、文明は本当にあったのかと、最近は思い始めているんだ。まぁ、ごろごろ転がってるロボの残骸を見るに、あったらしいけどな。』


「……で?貴方はどうして生き残っているのかしら?シェルターにでも避難してた?それとも、見た目は人間だけど、中身はアンドロイドとか?」


『母曰く、家の地下にある冷凍の装置の中で、母と一緒に赤子のまま何十年か眠っていたらしい。目覚めた時にはもう、人類は殆ど残っていなかった。』


「先見の明のある誰かが事前に手を打ってくれたのかしらね?それで、貴方はそんな終わった世界で今何をしているの?」


『アンドロイドの少女と共に、旅をしている。あいつも、あの世界で最後のアンドロイドなんだ。』


「旅は道連れ世は無さげ、かしら?まあでも、自分の他に知能のある存在がいただけよかったのではないかしら?少なくとも、話し相手には困らないわけだし」


『あぁ、あいつが居なかったら、俺は多分もう死んでると思う。旅に連れ出してくれたのはあいつだし、知識があるから、歴史も、危険も、色々知ってる。俺はあいつのおかげで生きてるんだ。』


「それで、その少女ちゃんはどんな子?」


『いつも微笑んでるのが印象深い…かな。微笑んでる時ばかりで、あまり表情は変わらないんだ。あとは、アンドロイドで、本好きで、色んなこと知ってて…あと、明らかに旅に向かない格好をしてるくせに、俺よりも大きいリュックを背負ってるな。』


「あら、体も精神もなかなかタフなのね。アンドロイドに精神力があるかはさておき。それで、二人の馴れ初めは?」


『短くまとめると、人間はもう滅んだと思っていた少女が俺の家にやって来たんだ。でもまぁ、俺の家な訳だ、もちろん俺は生活している。で、休もうと家のドアを開けた少女は俺に向かってこう言った。「「なんで死んでないの…!」」とね…。失礼な話だ。』


「えらく冴えない出会いね。もっとこう、ロマンチックな出会い方を期待していたのだけど。例えば、倒れていた少女ちゃんを貴方が三日三晩かけて介抱したとかね」


『いやぁ…会ったら分かって頂けると思うが、倒れている所を想像できないからなぁ。あと、倒れていても、介抱する為の知識は俺には無い…と思う。恥ずかしながら。』


「まあ、話を聞いている限りでは貴方よりもしっかりしていそうだものね。でも貴方も、絶望的な世界に置かれてもなお、淡々と生きているのは評価点かしらね」


『生まれたときからあんな感じだったのはあるな。嘆いても人類が戻ってくる訳でも無いし。逆に、止まってる時間が巻き戻り始めるなりして人類が戻ってきたら、どうすれば良いかわからずに淡々とは生きられなさそうだ。』


「変に前向きなのか、それとも単なる惰性で生きているだけなのか。判断付きづらいわね。特にこれからの当てがあったりはしないのでしょう?」


『そうだな、どこに行きたいとも思わないが、少女の選んだ場所に行きたい…と、思う、多分。』


「なら良かったじゃない、いろいろな所へ連れまわしてくれる仲間ができて。何をするでもなく無為に時を重ねるよりは余程いいと思うわよ?」


『そうだな…色んなことを学べるし、旅は楽しいしな。』


「それじゃ、そろそろ時間も迫っていることだし、閉幕としましょうか。最後に何か言っておきたいことはあって?」


『俺の駄語りを聞いてくれてありがとう。俺の旅を見守ってくれたら嬉しい。』


「だそうよ。それじゃ、今夜はこれでおしまい。また会う日を楽しみにして頂戴」






↓終わる世界を二人旅


『砂のない砂漠』


https://kakuyomu.jp/my/works/16816452219084122441

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