第1章 よろず部始動
誤解を招くお弁当(主に義妹が原因です)と犬
挨拶も無事に終わり俺達は教室に戻り、午前中の授業をこなす。授業の内容は
そんなこんなで授業は問題なく終わりお昼の時間になった。
「腹へったよ~、朱音! 一緒に購買か学食に行こうぜ! 」
慶次が財布を持って席を立ち上がり俺の腕をつかむので
「それはいいけど場所分かるのかよ? お前教室が分からなくて遅刻したんだろ? 」
そういって慶次の顔を見ると慶次はリーシャを指差して
「だぁ~かぁ~らぁ~! 迷ったのはコイツのせいだから俺が1人だったらゼッテェー迷ってねぇ~から! 」
とわざとリーシャに聞こえるように言うとリーシャが
「私だって迷いたくて迷ったわけじゃない! それに私だって、こんなヘッポコと一緒だったからたまたま迷っただけで朱音の様なシッカリ者と一緒だったら迷わなかったわ」
そんなことを言うけど正直、俺と一緒でも変わらなかったと思うぞ…、だって体育館に移動するあいだだけで何度列を外れそうになったことか…。
「まあまあ、2人とも落ち着いて! それじゃあ私が案内するから皆で行こっか♪ 」
さすが真琴! クラス委員長ってだけあって彼女が話に加わってくれると話がスムーズに進む。
そういうことで4人で席を立ち上がり学食に行こうとクラスの扉を開けると
「あっ、朱音♥ お待たせ! 手作りお弁当2人分作ってきたから一緒に食べよ♪ 」
静かだった教室に爆弾が投下された…。
◆◇◆◇
「どういうこと、あの子1年生の三ノ宮さんじゃない! えっ、何…もしかして付き合ってるの? 」
「手作りのお弁当だって!! スゴい! 」
「でもこのあいだまで彼氏なんて居ないって言っていたのに…悔しい後輩に負けるなんて」
うわぁ~誤解が広がる…、義理の妹だって説明しなくちゃだよな…。
美鈴のことをどうやって紹介するか考えていると
「何ポカンとしてるの? ほら♪ 行くよ♪ 」
俺の腕を抱き寄せて、呆然としている俺を尻目に美鈴は歩きだしてしまった。
「三ノ宮さん、週明けは朱音と飯すっから貸してくれよ! 」
後ろから慶次の声と真琴とリーシャの驚く声が聞こえた。
◆◇◆◇
どこをどう歩いてきたのか呆然としてて分からなかったが道行く人達には確実に誤解されてしまってる…。
しかもこんなに人の多い中庭で美鈴からお弁当を受け取り、今まさにア~ンの状況だから非常にマズイ…。
「何考え事してるの? おにぃ、ほら♪ ア~ン」
お弁当のおかずが箸で掴まれて俺の口元まで運ばれてくる。
「美鈴、何で箸が1膳しか無いの? もう1膳無いのかな? 」
箸を持つ美鈴に尋ねると美鈴は笑顔で
「忘れちゃった…。もしかしておにぃ困ってる? 私のお弁当迷惑だった? 」
なんて言って泣きそうな顔になる。
そんな顔をされたら…。
俺は勇気を振り絞り口元に運ばれたおかずを食べる。
うん、美鈴の煮物はいつ食べても美味しいんだよな♪
「どうおにぃ? 美味しい? 」
そういって美鈴は俺の顔を見つめてくる。
「うん、やっぱり美鈴の作った料理は旨いよ♪ でも何か悔しい、2年前は俺の方が上手だったのに」
そういうと美鈴は少し呆れた顔で
「あの時はお
そういって胸を張る美鈴は頼もしかった。
「それよりさ、おにぃ…。ア~ン♥ 」
今度は美鈴が口を開けてご飯をせがんでくる。
「えっとさ、美鈴…自分で食べるって選択肢は無いのかな? 」
美鈴に確認をすると美鈴は頬を膨らまして
「私はア~ンしてあげたのにおにぃは私にしてくれないんだ! 酷いおにぃ! 」
これ以上機嫌を損ねて夕飯が俺の嫌いなトマトのフルコースになるのも嫌なので腹をくくり、ここは美鈴に合わせることにした。
「ごめん美鈴、ちょっと恥ずかしくてさ♪ 」
そういって美鈴の頭を撫でて箸を持ち、おかずを取って美鈴の口元に運ぶ。
「ほら、ア~ン」
美鈴は顔を真っ赤にさせて小さな口で俺の運んだおかずをパクっと食べる。正直この時は俺も顔が真っ赤だったと思う。
「美鈴、口元に付いてる」
そういってポケットからティッシュを取り出して口元を拭ってやると美鈴はワタワタして俯いてしまった。
「大丈夫か美鈴? 」
そう声をかけると美鈴は
「おにぃってさ時々大胆になるよね? そういうおにぃも嫌いじゃないけど心の準備が…ねっ? 」
と言って真っ赤になっていた。
◆◇◆◇
美鈴のお弁当もなんとか食べ終わり学校の話になった。
「おにぃは部活、何に入るか決まった? 」
部活か…。サッカー部あるのか?
「ちなみにサッカー部なんて無いからね」
俺が考えていることが分かるのか美鈴が先に答えを教えてくれた。
「マジか…。どうすっかな…」
妥当に考えれば放課後部活を見て回るのが1番だろうなぁ~
「おにぃ、私は部活があるから放課後、一緒に廻れないから迷子にならないようにね♪ 」
確かに広いけどリーシャみたいに迷うことは少なくともないだろう…。
そんなことを思っていると中庭の向こう側からこっちに何かが駆けてくる。
「誰かその犬を捕まえて! 」
よ~く見るとこっちに向かってきてるのは犬で後ろでは女の子が必死に犬を追いかけている。
俺は立ち上がり腰を低く構えてサッカーボールと同じ要領で犬に飛びついて捕まえる。
どうやらキーパーをしていた経験が活かせたようだ。
「ほら、よしよし♪ どっから入ってきたんだお前は? 」
そういって捕まえた犬の首輪を見ると住所と電話番号が書かれていた。
「ハァハァ…、あの…ハァハァ、犬を…ハァハァ、捕まえて…ハァハァ」
「いや、息整えてからで大丈夫だから」
黒髪ロングの女の子は見るからに文化部系の女の子で肩で息をしてとても疲れている様子だった。
『キーンコンカーンコン』とお昼休みの終わりを告げるチャイムが学校に響く。
「あっ、朱音♪ 私次の授業が体育だから先に戻るね♪ 」
そういって美鈴は食べ終わったお弁当箱を片づけて教室に戻っていく。
「ハァハァ…、ありがとう♪ さすがに1人で犬を捕まえるのは無謀だったみたい…。貴方、名前は? 」
黒髪の女の子は髪を結わえながら俺を見つめて名前を聞いてくる。
「1人でって大変だな。ほら飲みかけで良ければお茶飲めよ♪ 俺は東雲朱音、今朝転入生代表で挨拶したんだけどな? そっちは? 」
飲みかけの『こ~いお茶』のペットボトルを渡して自己紹介をすると
「ありがとう朱音君♪ 私は
これが彼女との初めての出会いだった。
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