慌てん坊のサンタクロース
マッチ売りの少女ver.2
「失礼します! 」
そういって俺達は生徒会室に入る。
「あっ、おにぃ来たんだね♪ どーぞどーぞ」
美鈴に案内されて席につく。
「あれ?楠木さんと凜ちゃんが居るけど? どうしたの? 」
楓さんが俺達を見つめて不思議そうにしている。
「2人は今日からよろず部の一員になったんだよ」
そう伝えると何故か美鈴が俺の腕を抱き寄せて
「おにぃは私のだからくれぐれも変な気を起こさないようにね♪ 」
そういって美鈴は凜ちゃんと楠木さんを睨み付ける。
「俺がいつお前の物になったんだ? それに大事な後輩を睨むな」
「あわっ、ちょっ何するのさ! おにぃ! 」
睨んでいる美鈴の頭を軽くチョップすると美鈴は俺を見つめてくる頬を膨らましている。
「お前の気持ちは教えてもらってるけど、だからってお前に特別優しくするつもりはない。それにダメなことはダメってしっかり伝えるからな」
そういうと美鈴は渋々頷いて席に戻っていく。
「それじゃあ楓、早速どんなことをする予定なのか教えてくれないか? 」
縁が楓さんに尋ねると楓さんは頬を掻いて苦笑いをしている。
「まさか決まってないのか? 」
縁が呆れた顔でそう尋ねると楓さんは頷いて
「だってここのところ文化祭だったり合唱コンクールの準備とかあって全然出来なかったんだもん! だからお願い! 力を貸して! 」
そういって楓さんは縁に抱きつく。
「あぁ~っ、分かった! 分かったから離れてくれ」
縁はそういって楓さんを引き剥がす。
「だかクリスマスか…。無難に考えれば演劇じゃないか? 私達に力を借りるより演劇部には相談したのか? 」
………。
「あぁ~っ!!!!!! 」
どうやら俺達に頼る以外考えていなかった様だ…。
「バカか楓は! ちなみに言っておくが演劇部はその日、近くの幼稚園で公演があるって今朝の生徒総会で言っていたからな…」
お前、糠喜びさせるなよ楓さん、めっちゃ落ち込んでるじゃん。
「まったく本当に仕方ない奴だな…。そういうことだから一緒にどんな演劇をするか考えるぞ朱音」
あぁ~、うん…。この感じはたぶん俺が考えるんだろうな…。
そんなことを思いながら合同会議を始めることにした。
◆◇◆◇
「それじゃあ、どんな演劇をするか決めよう」
そういって生徒会役員とよろず部で考えることにしたのだが…。
「だから、それだとお金がかかるんですよ! 会長も何か言ってやってくださいよ! 」
「金、金、金ってお前は金の亡者か! 来てくれる人を楽しませようって気持ちはあるのか? 」
縁と副会長君が口論を始めてしまった。
「ちょっ、2人ともいい加減にしろって」
そういって俺は仲裁に入るが
「朱音(お前)は黙ってて(ろ)!! 」
といって聞く耳を持ってくれない。
「先輩、あっちは放っておいて私達だけで決めましょう」
そういって雪ちゃんは湯呑みにお茶を淹れて俺に渡してくれる。
「放置でいいのか? 」
残りの生徒会メンバーとよろず部員に尋ねると楓さんと雪ちゃん達は頷いて
「彼は、ああなると面倒だし、しばらく続くから…。それに縁も頑固なところがあるから長くなりそう」
そういって楓さんは副会長君と縁を見つめる。
なるほど2人のことをよく見ているんだなと思った。
「それでおにぃ、何か劇のアイディアはある? きっとおにぃなら何かあるよね♪ 」
妹よ、兄のことを過大評価しすぎじゃないか? さっきの今でそんな…。
「マッチ売りの少女? とかはどうだ? 」
クリスマスの定番中の定番だよね…。
「定番中の定番だね。おにぃはそれをアレンジしてストーリーを書き直すんだね♪ さすが私のおにぃ! 」
えっ、おい! いつのまn…。
「朱音はそんなことも出来るの? さすがだね♪ 」
ちょっ、リーシャ! なに期待した目で俺を見てるの!?
「先輩さすがです! 」
ちょっ、凜ちゃんまで…。
そんな中、雪ちゃんと楠木さんは
「無理しないでくださいね。無理なら無理って言っていいですからね? 」
さすがの洞察力だよ雪ちゃん…。
「先輩、私も脚本作るのてっ、手伝いますよ♪ いっ、一緒に考えまちょっ…。いひゃい…、べりょかんひゃった…」
楠木さん、思いっきりベロ噛んじゃったな…。
「分かった、それじゃあ手伝ってね楠木さん」
彼女の耳元でそう伝えると彼女は顔を真っ赤にして
「ひゃいっ、こちらこそです! 」
と嬉しそうに頷いてくれた。
「それじゃあ俺が脚本と配役は考えてくるから絶対に文句は言うなよ! 」
そんなこんなで演目はマッチ売りの少女(アレンジ版)キャストは生徒会メンバー&よろず部ということになった…。
「それじゃあ、早速脚本と配役を考えるからアシスタントに楠木さんついてきて」
そういって俺と楠木さんは図書室にむかうことにした。
「だから予算がだな…ガミガミ」
「だから金に糸目をつけるから…ガミガミ」
まだ続いてるよ…。
◆◇◆◇
「先輩、グリム童話とかの本を持ってきましたよ! 」
そういって楠木さんは俺が使っているテーブルに本を数冊置く。
「ありがとう。ちなみに楠木さんってマッチ売りの少女がどんな物語だったか覚えてる?」
そう尋ねると彼女は少し考えて
「あれですよね? 雪の降る寒い夜にマッチを売り切るまで帰ってくるなって家を追い出されて『マッチ、マッチはいりませんか?』って道行く人に尋ねて次の日に凍死してしまっている彼女がいたっていう…」
うん、大まかな話は大体あってるな…。
でも重要なところがちょっと曖昧みたいだな…。
「うん、大体はOKだね♪ 問題はコレをどういう風にアレンジするかなんだよな…。楠木さんはハッピーエンドがいい? それとも童話と同じバッドエンド? それともダークな感じのエンドのどれがいい? 」
「なんですかダークな感じのエンドって…」
不思議そうに尋ねてくるので俺は説明を始める。
「ダークな感じのエンドはマッチ売りの少女が自分を追い出した家を『おばちゃんが消えて居なくなってしまう! 』って言って燃やします。そして、もちろん放火なので警察に捕まって終わりです」
これは縁にマッチ売りの少女をやらせたら絶対ハマると思う。
「ちょっ、先輩! そんなサイコなマッチ売りの少女をやったら公民館に集まってくれたちっちゃい子たち泣きますよ! ダメ、そんなサイコなマッチ売りの少女は絶対ダメです! 」
却下された…。
「ここは王道のハッピーエンドを考えましょう! 」
俺と楠木さんはハッピーエンドのマッチ売りの少女を書き始めることにした。
服の乱れは心の乱れ-俺の青春ラブコメは騒がしい!- 兎神 入鹿 @Destiny
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