美鈴のポテトと俺の智恵
「じゃぁ~んっ! 完成です! どうスゴいでしょ! 」
そういって差し出されたのは紫色のスイートポテトだった…。
「なんだ、普通に美味しそうじゃん♪ 」
綾先輩はそういって紫色のスイートポテトを手に取り口に入れる。
先輩は死んだな…。何故って? だって普通に黄色の品種のさつまいもから紫色のスイートポテトが出来るはずがないから…。たぶん普通に作るのがつまらなくなった美鈴が色んな物を混ぜたのだろう…。
「┗(*☆¥)┛&◇◆!§」
綾先輩は顔を真っ赤にして調理実習室を飛び出していった。
「美鈴、アレは何をどうやったの? 」
おそるおそる美鈴に尋ねると美鈴は笑いながら
「大丈夫、死ぬことは無いから! 」
そういって親指を立てて頷いた。
「ナイスプレーだ! 美鈴君! 」
そういって縁は笑いながら美鈴に向かって親指を立てる。
本当に綾先輩と縁は仲が良いんだな。(だって傍からみるとじゃれ合いにしか見えないからなぁ~)
「うっ、うぅ~っ…。辛い、かりゃいよこれぇ~!!」
そういって涙目になった綾先輩が帰ってくる。
あぁ、やっぱり…。だってアレからは辛党の美鈴が家でたまに使うジョロキア? の粉末パウダーの臭いが微量だがしていた。
たぶん一緒にご飯を食べてる縁なら分かってたと思うのだけど…。
クスクス笑ってる縁を見る限り縁は一切教えるつもりがなかったんだろうなぁ~。
「縁ちゃん、何をクスクス笑ってるのかなぁ? もしかして知ってたのかな? 」
そういって縁の頬っぺたを引っ張る。
「ひぃ、ひぃりゃにゃかったですよぉ~!!(クスクス)」
「絶対知ってただろぉ~! この~っ! 」
本当に仲良いよなぁ~…。
◆◇◆◇
「さてと、じゃあ次は俺の番かな? 」
そういって立ち上がり包丁を持って材料を刻んでいく。
「結構フルーツを使うんだね? 」
小鳥遊先輩が俺の手元で刻まれていくフルーツを見ながら不思議そうに首を傾げている。
「次は生地を焼いていかなくちゃ! 」
そういって俺は初めに室温に戻したバターをボウルに入れクリーム状になるまで混ぜる。
「おぉ~!!スゴく手際が良い! 」
そういって小鳥遊先輩が手元を見つめてくる。
そこからは卵を加えて混ぜて、次に
「あとはラップに包んで冷蔵庫で寝かせます」
冷蔵庫で生地を寝かしてるあいだにもう1品作ろう!
俺は材料の豚ももの薄切り肉ともやし、それに上新粉、薄力粉、ココナッツミルク、卵、塩コショウ、酒にゴマ油を用意する。
「ねぇ、コレで何を作るの? 材料を見て何を作るのか分からなかったのか小鳥遊先輩含め、美鈴以外の全員が首を傾げている。
今作っているのはベトナム料理のバインセオって言う料理でココナッツ風味でほんのり甘い生地にゴマ油で炒めた具材が包まれていて美味しい料理。
昔、家族でベトナム旅行した時に現地の人から教わったレシピで今でもたまに作るので美鈴は何を作っているのか知っているのだろう。
「はい、とりあえず1品出来たよ! 」
そういって俺はテーブルにバインセオを置く。
「どうぞ食べてみて! 」
テーブルに置いたバインセオをみんな興味深く見つめている。(美鈴はもう食べていいのかウズウズした目で見つめてくるので首を横に振って待つように合図をする)
「それじゃあ、いただきます! 」
綾先輩がナイフとフォークでひとくち分掬って口に運ぶ。
「ん、うんまぁ~!! 何コレ! スゴく美味しい! 」
他のみんなも頷いている。
「おにぃ、おかわり欲しい! 作って! 」
そういって美鈴がお皿を俺に渡してくる。
「先にフルーツタルト作ってからな…」
俺は冷蔵庫から生地とフルーツを取り出して作り始める。
「おぉ~っ、料理も出来るしデザートも作れる…。どんだけ女子力高いの…」
呆れた顔で綾先輩が見つめてくる。
「いや、普通ですよ…」
そういってタルト生地を型に入れて焼成に移る。
「おにぃ、はやくぅ~! 」
そういって調理台をパタパタと叩いてくる。
「分かった! 分かったから待ってて」
手でパタパタと台を叩いている美鈴の頭を撫でてバインセオのおかわりを作り始める。
「はやくはやくぅ~! 」
そんなことを言われながら出来上がったバインセオを置くと瞬く間に食われていく。
「何か良い匂いがすると思ったら何やってるの? どうして先生を呼んでくれなかったの? 」
扉が開くとそこには加藤先生と忍と凛ちゃんが立っていた。
「先輩! 私達も食べたいです! 」
そういって凛ちゃんが見つめてくる。
「あぁ、もう! 分かったよ!みんなの分も作ってやるよ! 」
そういって俺は追加のバインセオと持ってきた材料の中にあったパンケーキを作り卵白と砂糖を混ぜてホイップクリームを作る。
「ほら♪ これで大丈夫か? 」
そういって彼女達に追加の料理を渡す。
「うわぁ! このホイップクリーム美味しいですよ先輩! 」
「何で先生より女子力が高いのコレ(バインセオ)美味しいからレシピ教えて! 」
「先輩の料理はやっぱり美味しいですね! お弁当のおかずもそうですけど甘いものもいけるんですね! 」
(忍の場合は奪い取ってきた感じだけどな…)
ピピピピッ!
フルーツタルトが焼き上がる音がする。
「みんな、出来たからそっちに持ってくぞ」
そういってフルーツタルトを持っていくと雪ちゃんが包丁を構えて俺が持ってきたタルトを均等に切っていく。
「ねぇねぇ雪ちゃん、私の少し大きく切って」
美鈴が雪ちゃんにお願いをしているが…。
「ダメです。みんな均等に切り分けます」
美鈴は残念そうにタルトを見つめながら切り分けられたタルトを食べ始める。
「先輩の作ったタルト美味しそうですね! 何だか食べるのが勿体無いです」
凛ちゃんが嬉しそうに俺を見て微笑んでくる。
「ねぇねぇ縁ちゃんと楓ちゃん、私ね良いこと思いついちゃった! 」
そういって綾先輩が縁と楓さんを教室の隅に連れていく。何だか嫌な予感しかしない…。
「えっ、いや…。それは無理ですよ! 」
「無理じゃないって彼に協力してもらえばいいじゃない? たぶんあの子は彼がお願いすれば、きっと……よ♪ 」
何故俺を見ながら話し合ってるんだ?
◆◇◆◇
手招きをされたので3人のところにいくと
「ねぇねぇ朱音君、彼女たちも手伝って貰おうよ! 可愛い子が増えれば集客出来るでしょ! 」
綾先輩の指先を見ると凛ちゃんと忍が居た。
「じゃっ、任せたよ色男! 」
綾先輩に背中を押されて2人の前に出て
「なぁ、2人にお願いがあるんだけど…」
『俺たちと一緒に喫茶店をやらないか? 』
そういって手を差し出した。
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