2人の関係(1日目の夜)

「朱音、待つんだ! 美鈴君は違うって言っていただろ!」

 縁が俺の手を握ってくる。

「知ってる! けど何か腹立つ! たぶん冗談だってことは分かる! だけど言って良いことと悪い事がある! だから少し意地悪する」

 そういって部屋に戻ることにする。


「なんだ、朱音は美鈴君が本気で言ってないって知っていたんだね? 」

 縁が俺に尋ねてくる。

「義妹だからね、付き合いも長いしそりゃあ分かるよ…」

 そういって部屋のベットに倒れ込む。

「あっ、……朱音、そこ私のベットなんだけど…」

 リーシャが顔を赤くして俺が寝ているベットの足元に腰を下ろす。


「あのね朱音、私も横になりたいんだけど…」

 そういってリーシャが俺の足をツンツンしてくるのでベットの端に寄り

「どうぞ( ゚д゚)ノ」

 と言ってリーシャを見るとリーシャは顔を真っ赤にしてオロオロしながら『失礼します』と言ってとなりに寝っ転がる。


「あのさ朱音、君は気にしてないかもしれないけどリーシャ君と一緒のベットって絵面的にアウトだからな…」

 俺も何となく分かってたけど、そんな冷たい視線で俺を見るなよ縁…。

「わっ、私は別に一緒でも構わない…。ただ朱音、喧嘩は良くない…、だから早く仲直りしなよ♪ 」

 リーシャは俺の背中にピッタリと背中を合わせて恥ずかしそうにそう呟いた。


 どうやら2人に気を使わせてしまっていたらしい…。

「ごめん2人とも」

 そう呟くと2人は笑いながら

「「気にしなくていいよ♪ 」」

 といって縁はおデコにデコピンを、リーシャは背中に肘鉄を入れてきた。

 1人じゃなくて良かったと不覚にも思ってしまった。

◆◇◆◇

「朱音、ほら起きるんだ♪ 」

 目を覚ますと辺りは暗くなっていた。

「おはよう? 今何時? 」

 縁に声をかけると

「もう夕飯の時間だ、起きて食べに行こう♪」

 

 リーシャが俺に手を差し出してきた。

「分かった、それじゃあ行こっか♪」

 差し出された手を握って立ち上がりホテルの食堂に向かった。

◆◇◆◇

「どういうことかな? わざとだよね? わざとこんな席順にしたよね! 」

 そういって向かい側に座る人物を見ると

「そんなこと無いですって! 偶然ですよ♪ ぐ・う・ぜ・ん♪ 」

 楓さんが俺と隣に座る縁と美鈴を見て笑っている。


「あのさ…、おにぃお昼はごめんなさい…」

 美鈴が姿勢を正して俺に頭を下げてくる。

「どうしたの三ノ宮さん? 俺は君のお兄さんでもないし家族でもないんだからおにぃなんて呼ぶのはやめてほしいんだけど? 」

 笑いを必死に堪えながら冷静を装い返事をすると


「あのさ、人が真剣に謝ってるんだから笑いを堪えるのやめてくれないかな? おにぃと何年間一緒に暮らしてると思うの? おにぃのことなんか大体分かるんだから♪ 」

 そういって美鈴が睨みつけてくるので、たまらず笑ってしまった。


「もうおにぃヒドイ! 」

 そういって美鈴は俺の右腕をポコポコと優しく叩いてくる。

「ごめんごめん、でもどうしてあんなこと言ったんだ? 冗談とはいえ結構ショックだったぞ」

 そういって美鈴の頭を軽くチョップすると美鈴は顔を真っ赤にして

「あのさ、言葉の意味伝わってなかったのかな? 私、結構勇気出して言ったんだけど…」

 と言って頭を抱えている。


 何かマズいことをしてしまったのだろうか…。

「本当に朱音って鈍感すぎるな…」

 左隣に座る縁が呆れた様子で俺を見つめてきた。

「いうほど鈍感じゃないですよね? 」

 正面に座る楓さんに意見を求めると

「どうだろうねぇ~♪ 」

 顔を反らしたらそれは否定しているのと同じ様な気がするのだけど…。


「 朱音と美鈴ちゃんが仲直り出来て良かった♪ 2人とも相手が本気じゃないって分かってたんだね♪ 」

 美鈴の隣に座るリーシャが笑顔で俺達を見ている。

「まっ、当然ですよ♪ おにぃとは以心伝心ですから♪ 」

 美鈴は胸を張りドヤ顔で俺を見つめてくる。


「それよりごめんな、いきなりこんな大勢で一緒に食事することになっちゃって…」

 楓さんの隣に座る凛ちゃんに微笑みかけると凛ちゃんはオロオロしながら

「そっ、そんな! 私みたいなミジンコに謝らないでください! 私は空気みたいに扱ってくれて大丈夫なので! 」

 そういってくるので俺は立ち上がり凛ちゃんの後ろに行き。

「ミジンコ何かじゃないって凛ちゃんは可愛い女の子だって! それに空気って無くちゃ困るんだよ♪ だから凛ちゃんだってここに居てくれなくちゃ困るからね♪ 」


 そういって頭を撫でると凛ちゃんは顔を真っ赤にして俯き

「もぅ、勘違いしちゃうじゃないですか! 先輩のバカ! あぁ、でも私みたいなミジンコを好きになる人なんて居ないはず」

 心の声がダダ漏れなんだけど…。

 この子はもう少し自分に自信を持ってもいいのかもしれない…。荒療治だけど…。

 俺は少し屈んで椅子に座る凛ちゃんのおデコにキスをする。


「自分に自信持ちなって! 凛ちゃんはミジンコじゃないよ♪ 」

 そういうと凛ちゃんは頭から煙を出して机に突っ伏してしまった…。

「おにぃ、それは私の気持ちを知ってのことなのかな? 」

 何故か美鈴が怒っている…。


「おにぃは誰にでも優しいんだから…。私だけでいいの! 私だけを見て! 」

 そういって美鈴は立ち上がり俺の前に立ち、俺の両頬を掴んで唇にキスをしてくる。

「これで前の関係には戻れなくなりました…。私はおにぃ…。ううん、東雲朱音さん貴方のことが大好きです! だから義妹いもうとのふりはもう無理です! 今すぐに返事がほしいなんて言わない、だっておにぃは優柔不断だから、でもいつか答えが出たら教えてください♪ それまで待ってるから♪ 今まで通りってのは無理かもしれないけど出来る限り普段通りに接するからおにぃもそうしてね♪ わっ、私は部屋に戻るね! 」


 何が起きたのか見て感じていたけど理解できていない…。頭の中がショートを起こしたかの様に何も考えられない…。

 美鈴が俺のことを…。

 そんなこと1度も考えたことは…だって義理とはいえお兄ちゃんだぞ…。妹のことを好きになるわけにはいけないだろ!

 だから俺は好きになるわけにはいかないと思ってたのに美鈴はそんな壁なんてぶち破って土足であがってきやがった…。まったく美鈴らしいといえば美鈴らしいんだけど…。


「はわぁ、はわわわぁ~! 情熱的なキスだった。わっ、私が先輩にキスされたのが気にくわなかったのでしょうか! 私なんかがスミマセン! 」

「あらあら、まあまあ…朱音君モテモテね♪」

「やっぱり…。強敵が出来ちゃったかなぁ~」

「美鈴君は前から朱音のことが好きだったんだろうね♪ でも朱音は相変わらず鈍感だね♪ お昼の喧嘩の時に彼女『家族は嫌』って言ってたのに朱音はまったく気づかないんだもん驚いたよ! 」


 他人事だと思って(確かに他人事なんだけど)みんな好き放題言いやがる!

 あぁ~!明日からどんな顔して美鈴に会えばいいんだよ! 義妹としてじゃない美鈴に…。




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