どうやら俺は女たらしだと思われてしまったらしい…。

 教室の前で美鈴と縁と分かれてリーシャと手を繋ぎながら教室に入る。

「あっ、来たわよ! 真琴、教室の風紀を守るためにも本人に確かめて来て! 」

 何だろう? 教室の中が異様に騒がしい…。

「ねぇ、みんなが聞きたがってるんだけど朱音って一体誰のことが好きなの? 」


 真琴、なに真剣な顔でそんなことを聞いてくるんだ?

「誰のことが好きって…。みんな好きだよ?(友人や家族だもの)」

 そういって真琴を見ると顔をひきつらせて俺を見つめてくる。

「あぁ、朱音は鈍感だから…。もっとストレートに聞かないと朱音は分からないぞ」


 そういって先に来ていた慶次が岩清水さんと手を繋ぎながら真琴に説明をしている。

「お前酷いなぁ~、俺だってそこまで鈍感じゃないぞ! 」

 そういって皆を見ると

「「「「いや、それは無いなぁ~」」」」

 真琴やリーシャ、慶次だけじゃなく岩清水さんにまで否定をされた。


「俺ってそんなに鈍感なのかな? 」

 首をかしげて4人に聞くとリーシャが腕に抱きついて

「当たり前だ! じゃないと普通気づくはずだ…」

 そういって寄り添ってくる。


「ちょっ、ちょっとリーシャくっつきすぎだって少し離れてよ…」

 そういうとリーシャは腕を離して『ほらなっ』といった顔で慶次達3人を見ている。

「あぁ、なるほど…。そういうことなんだ…、じゃあ噂は噂だね♪ うん、安心した」


 そういって真琴は、さっきの女子達のもとに行く。

「リーシャ、朝はあの時間帯で平気か? 」

 リーシャを見るとリーシャは顔を真っ赤にさせて頷いて微笑んでいた。

「「「おいぃぃぃぃっ、どういうことだよ東雲! なんだよ2人は付き合ってるのかよ! お前このあいだ1年の三ノ宮さんと一緒に飯食ってたじゃんかよ! どういうことだよ! リーシャさん、ダメだよ! こんな女たらしと付き合ったら! 絶対騙されてるから! だから俺達の中の誰かと付き合おうよ」」」


 男子達が血走った目で俺とリーシャを見つめてくる。それに俺は何故か女たらしの認定をされていたらしい…。

「ふざけんなよ! なんで俺がたらしなんだよ! しかも騙すって何をだよ! 特に三ノ宮美鈴は俺の義妹だからな? 一緒に飯を食って何が悪いんだよ! いつも家で一緒に食べてるんだから今更だろうが! それにリーシャを家に迎えに行くのはリーシャから提案された恩返しの方法なんだからな! 俺はリーシャの方から頼まれたんだぞ! 約束を守ってる俺のどこが女たらしなんだよ! 」


 そういって目が血走った男どもに文句を言うと男達は急に黙ってしまう。

「おい、何か言ったらどうなんだよ! 人のことをたらし扱いしやがって! 」

 そういうと男達は悲しそうな顔で

「「「ふざけんなよ! なんでまた東雲と鷹条だけモテるんだよ! まただよ! また櫻高の時と同じでコイツと鷹条だけ何でモテるんだよ…」」」 


 まったくコイツらは何を言ってるんだ…。

「いやいや、モテてないから…」

 そういって苦笑して自分の席に着く。

「そんなことないと思うけど♪ 朱音は優しいしカッコイイから…」

 そういって顔を真っ赤にしてリーシャは俺の前の席に座った。


「そうかぁ~? 俺って優しいか? それにカッコイイって…。目、大丈夫か? 」

 あれ? 周りの女子達からの視線が痛いんだけど俺は何かしたのか…。

「俺って何かマズいこと言っちゃったかな?」

 不安になり真琴に尋ねると

「はぁ、朱音はスゴく鈍感だってことが分かったよ♪ ねっ、みんな♪ 」

 女子全員が同意していた…。


「みんなぁ~、席に着いてくださぁ~い!」

 加藤先生が教室に入ってきて今日の授業が始まる。

◆◇◆◇

 午前の授業は数学、化学、世界史、古典と簡単な授業ばかりだった。

「「「おにぃ!((朱音))一緒にお昼ご飯食べよう! 」」」

 美鈴、縁、リーシャがお弁当を持って一緒にお昼を食べようと誘われた。

「「「私が先だった! 」」」


 3人の声が教室に木霊こだました…。

「ちょっ、3人とも落ち着いて! みんなで食べればいいじゃん! ねっ? 」

 そういって3人を見つめると周りのクラスのメンバーは『はぁ…』とタメ息を吐いていた。


 俺達は3人で中庭の大きな木(たぶん桜)に移動してお昼を食べることにした。

「はいおにぃ! あ~ん」

 そういって美鈴が玉子焼きを箸で俺の口元に持ってくる。

「何をしてるんだ朱音は唐揚げだよな? ほら、あ~ん」

 縁も何故か俺の口元に唐揚げを持ってくる。


「あっ、リーシャのサンドイッチ美味しそう…。そっか、今度はサンドイッチにも挑戦しようかな…」

 そういって2人をスルーしてリーシャのお昼を観察しているとリーシャが恥ずかしそうに

「こっ、交換するか? 私はハンバーグとポテトサラダが欲しいな…。あっ、あ~ん」

 

 そういって恥ずかしそうに口を開けている。

「わっ、分かったよ…。ほら…」

 そういってポテトサラダをリーシャの口の中に入れてあげる。

 リーシャはもきゅもきゅとポテトサラダを食べたあと

「ほら、じゃなくて『あ~ん』って言ってほしかったな…、次はちゃんと『あ~ん』って言ってね♪ 」


 そういってくるのでハンバーグをリーシャの口元に運び『あ~ん』と声をかけると

「私たちを無視するな! 」

 そういって縁が俺の持っていたハンバーグを食べてしまった…。

「あっ、ひどい…。私が朱音からハンバーグをもらったのに何でそんなことをするの!」

 そういってリーシャが縁を睨むと縁は

「ハンバーグなら私の物をあげるよ♪ 」


 そういって縁は自分のお弁当箱の中のハンバーグをリーシャに渡す。

「違うの! 朱音に『あ~ん』してもらわないと意味無いの! 」

 そういって怒っているので

「分かった、『あ~ん』してやるからほら…」

 そういって縁に玉子焼きを、リーシャには縁が渡したハンバーグを口元に運ぶ。


「もぅ~、私には無いの! 」

 美鈴が不貞腐れているので

「お前は家に帰ったらな…」

 そういうと美鈴は

「それなら橘先輩だっ…」

 俺は縁の箸を置いて美鈴の口を塞ぐ。


「縁のことは言うなって、言ったら多分俺はこの学校に通えなくなるぞ! 」

 美鈴の耳元でそう囁くと頷いて理解してくれた。

「でも、納得はしてないから家では甘やかしてもらうからね! 」

 そういって美鈴は俺の口元に唐揚げを持ってきて


「ほら、おにぃ唐揚げ好きだったでしょ♪ 2人にあげるので手、使えないでしょ♪ だからほら…、あ~ん」

 確かにお腹は減ってる…。恥ずかしいけど…。

「あ~ん」

 美鈴から唐揚げをもらって食べる。やっぱり塩麹に浸けた鶏肉を揚げた唐揚げは絶品だ! さすが俺!


「私もする! ほら朱音、サンドイッチをどーぞ」

「それなら私だって朱音、さっきのお詫びだ私の唐揚げも食べていいぞ」

「それならおにぃ、私に『あ~ん』して」

 のんびりお昼が食べられなかった…。





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