キャンプファイアーとフォークダンス(5日目)
「真琴に話があるんだけど少し良いか? 」
次の日、教室に入った俺とリーシャは真琴に声をかけて廊下に呼び出す。
「急に呼び出してすまない…。実は真琴に関する依頼が届いていて…」
俺とリーシャは意を決して真琴に五十鈴ヶ丘さんのことを伝える。
「あぁ、やっぱりなぁ~。うん、何となく気づいてはいたんだけど、やっぱりかぁ~」
話を聞いた真琴はそういって頭を抱えていた。
「真琴に気が無いならしっかり断らないと大変だぞ…」
真琴に伝えると彼女は頷いて
「分かってるんだけど、どうやって断ればいいんだろう? 」
俺達3人は腕を組み考えていると廊下の向こう側から加藤先生が手を振りながらやって来た。
「おはよう♪ 3人とも廊下で何してるの? 」
先生は顧問だし話しても大丈夫だろう…。
「実は先生からも助言が欲しいのですが…」
そういって俺とリーシャで依頼の内容と真琴のことを説明する。
「なるほど…。確かに私だったら無理ね! 私は私を優しく包み込んでくれる男性じゃなきゃ! 」
何故そこで俺を見つめてくるんだ…。
「先生は先生の王子さまを見つけてくださいね♪ 応援してますよ♪ 」
そういってリーシャは笑って俺の腕にしがみついてくる。
「ふふっ、もう大丈夫だよ♪ リーシャ、先生だって昨日のは冗談だって! ねっ、先生♪」
真琴に話を振られた加藤先生は頷いて
「昨日のは忘れて…。私もフラれて癒しを求めてたみたい…。だから安心して鷺ノ宮さん♪それより授業を始めるから部屋に戻ろう」
そういって先生は恥ずかしそうに頭を抱えていた。
◆◇◆◇
勉強滞りなく終わり俺とリーシャは真琴を連れて部屋に戻ることにした。
「「ただいま~っ!」」
「お邪魔します」
そういって部屋の扉を開けると中から
「あぁ、お帰り♪ その様子だと依頼は達成出来そうにないんだね? まぁ、私も嫌がってる相手をくっつけるわけにはいかないからね…。それで、直接ここに連れてきたってことは断り方を聞きにきたんだね?」
そういって縁が襖を開けて俺達を見つめてきた。
「あぁ、簡単に言うとそんなとこ♪ 何か良い案あるかな? 」
そう尋ねると縁は少し考えて
「朱音、今日のフォークダンス真琴君と踊れ!」
◆◇◆◇
「それで何故だか俺と真琴が踊ることになったんだけど、そこのところどう思う? 」
隣で俺の手を握りオクラホマミキサーに合わせてステップを踏む真琴に聞くと
「いや、私に聞かれても困るんだけど…それに美鈴さんがなんだかずっとこっちを見つめてくるんだけど…」
真琴の視線の先には美鈴が俺達をジッと見つめている。
「あぁ、うん…。ウチの
そういって辺りを見るといくつか俺達をジッと見つめる視線がある。
真琴の背後を見ると情報にあった五十鈴ヶ丘さんが俺に『死ね』とジェスチャーを送ってくるので苦笑いをしていると真琴が不思議に思ったのか振り返ると五十鈴ヶ丘さんは笑顔で真琴に手を振っていた。
真琴は手を振ったあと俺の方に向き直り小声で彼女が五十鈴ヶ丘さんだと伝えてくる。
うん知ってる、だって今も真琴が見てないからって『死ね』ってジェスチャーしてるもん…。愛が重いなぁ~…。
五十鈴ヶ丘さんも見つかったので俺達はフォークダンスの輪から外れて五十鈴ヶ丘さんのところに行く。
「先輩♪ お疲れ様です♪ 何か飲みますか? 」
そういって五十鈴ヶ丘さんはスポーツドリンクを真琴に渡す。
「ありがとう♪ それより皐に彼のことを紹介しようと思って…。いいかな朱音? 」
縁の作戦は簡単にいうと『真琴君に彼氏が出来たらいいんじゃないかな? 』と言われて俺が彼氏役に抜擢されたのだが…。
「こんな女たらしが先輩の彼氏なんですか? 納得できません」
あぁ、やっぱり俺はいろんな人に『女たらし』って思われてるんだ…。
俺がガックリと肩を落としているとその様子を見ていた真琴はクスッと笑ったあと
「確かにそう見えるかもしれないけど彼はこう見えて一途なところがあるの♪ だからこれからは…」
「証拠を見せてください! この女たらしと付き合ってるって証拠を見せてください! そうですね私の前でキスをしてくれたら信じます! 」
俺と真琴は互いを見つめる。
「どうしたんですか? やっぱり嘘だったんですね? 」
そういってゴミを見るような目で俺を見つめてくる。
「キスするか? 」
真琴に尋ねると彼女は首を振って
「するわけないじゃんバカ! ありがとう付き合ってくれて♪ もう大丈夫、きちんと話すから2人にさせてくれる? 」
そういって手を離してきたので少し心配になり声をかけようとすると
「おにぃ、いいからこっちに来て! 」
いつのまにか俺の隣に来ていた美鈴に腕を引かれてフォークダンスの輪の中に戻っていく。
「いや、まだ解決してないだろ? どうして邪魔するんだよ? 」
美鈴を見ると美鈴は苦笑いをして
「あぁいうのは当人同士が話し合わなくちゃ何ともならないの! それに橘先輩の作戦だとしても私はおにぃが他の人の彼氏になるなんて堪えられなかった…。おにぃはこんな私のこと嫌い? 」
そういって少し寂しそうな顔で俺を見つめてくる。
「いや、嫌いなはずが無いじゃん! ただ急に美鈴から告白されて嬉しいって気持ちもあるんだけど義理とはいえ妹に好意を寄せられて、それに流されて男女の関係になっていいのか? っていう葛藤があって正直どうすればいいのか分からないだから俺の気持ちが纏まるまで待っててほしい。そのあいだ美鈴には今みたいな嫌な気持ちにさせるかも知れないけど」
そういって美鈴に今の気持ちをしっかり伝えると美鈴は恥ずかしそうに頷いて
「知ってるよ、おにぃが真剣に私のことを考えてくれてること…。だからおにぃのことを嫌いになったりなんかしないよ! だけど嫉妬して一昨日みたいに蹴ったりしちゃうかもしれないけど許してくれる? 」
あぁ、うん…。一昨日のは青痣になってたなぁ~。
「義妹の嫉妬ぐらい受け止めるよ♪ 」
そういって美鈴に手を差し出す。
「本当にキザなんだからおにぃは…。でもそんなところも全部引っ括めて大好きだよおにぃ♪ 」
涙を流しながら俺の手を受けとり身体を寄せてきて頬にキスをしてくる。
「それじゃあ踊ろっか♪ 」
人の心に土足であがってかき乱す小悪魔はそういって俺と一緒にオクラホマミキサーのステップを踏むのだった。
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