下着選び…。

「ゲホゴホ…」

 花畑が一瞬見えた気がする。

「大丈夫? 」

 大丈夫じゃありません! お花畑と死んだじいちゃんが一瞬ちらついたから!


「大丈夫じゃないから! 」

 そういって俺は咳き込んでいると隣に座る美鈴が水の入ったコップを渡してくる。

「ありがとう? 」

 原因は美鈴なのだが…。


「まったくおにぃは、がっつきすぎなんだよ♪ 」

 がっついてないからね? それに関しては主にお前が原因だけどな!

「先輩、実はこのあと買い物に行きたい場所があるんですが良いですか? 」

 そういって俺を見つめてくる。


「もちろん、今日は凛ちゃんのお願いで来てるんだからそれくらい良いよ♪ 」

 その言葉をあとあと俺は後悔する…。

◆◇◆◇

「朱音、この服どうかな? 」

 女の子の買い物は長い、長すぎる!

「似合ってると思うよ♪ 」

 正直、さっきの服と何処が違うのか理解が出来ない。


「じゃあ、さっきの服と何処が違うのか説明して! 」

 俺がいい加減な感想を言ったのがバレたのか縁が俺をジーっと見つめてくる。

「いや、さっきの服の方がフンワリしてて可愛かったよ? 」

 なんだよフンワリって…。思わず心の中で自分自身にツッコミを入れると

「はぁ~っ、やっぱり見てなかっただろ? だってコレさっきの服のサイズ違いで変わったのはサイズだけだぞ! それにフンワリってどんな感じだよ…。私だからまだ良いけど美鈴君だったら絶対怒ってたからな…」

 

 そういって縁は俺に下着を2着渡してくる。

「なにコレ? 」

 持ってるだけでも恥ずかしいのだが…。

「適当に私の服選びをあしらった報いだ、朱音にはその下着からどちらの方が私に似合ってるのか力説してもらおうと思う! 」

 ちょっと待って、言ってる意味が分からないのだけど…。

「ちょっと待って、それって俺が好みの下着を縁に選べってこと? 」

 縁は頷いて


「そういうことだ♪ さっ、早く選んでくれ」

 はぁ~っ、頭痛い…。

 周りに居た他のお客さんが俺たちを見て

『なになに、あの子達今日が初めてなのかな? そこは彼氏がビシッと決めてキスしなさいよ! 』

『いいなぁ~っ彼氏、リア充爆ぜろ! 』

『ロリっ娘、ペロペロしたいでござる』

 明らかに不審者が居たな…。


「どうしたの? 決められない? なら試着室行って着た姿を見せてあげよっか? 」

 止めい! 余計居づらくなるから!

 渡された下着はピンクのレースと黒のレースの下着だった。


「決めなきゃダメか? 」

 縁に聞くと縁は頷いて

「ダメ、真剣に選んで」

 どうやら逃げ道は無いらしい…。

 俺は仕方なく縁に下着を宛がって見ると


「ヤバい、メチャクチャ可愛い…」

 無意識のうちにそう呟いてしまった。縁はかなり恥ずかしいのか顔を真っ赤に染めて俺を見つめてくる。

「どっ、どっちの方が朱音の好みだ? 」

 確かにどっちも似合ってるのだが…。


「もうちょっと淡い感じの方が縁には似合うかも…」

 そういうと腕をグッと掴まれ

「なら、一緒に探して♥」

 いらんことを言わなきゃよかった…。


「ねぇ、こっちはどうかな? 」

 そういって淡い紫の下着を恥ずかしそうに持ってくる。

「う~ん、何か色が違うかも? 」

 もう自棄だ! こうなりゃ絶対縁に似合う下着を見つけてやる!


「じゃあコレは? 」

 そういって真っ赤な下着を持ってきた。

 凄く情熱的なんだけど何か縁のイメージと違うかも…。

「そっか違うか…。じゃあコッチは? 」

 そういって縁は水色の下着を恥ずかしそうに差し出してきた。


「かわいい…。メチャクチャ可愛いよ縁!」

 そういうと縁は恥ずかしそうに

「あっ、ありがとう…。だけどさ、ここはお店の中なんだよ? だから大きな声は…」

 周りを見ると近くに居たお客さんたちがクスクスと笑っている。


『可愛いわね彼女、顔を真っ赤にさせちゃってるわよ』

『リア充○ね! 爆ぜろ! 』

『ロリっ娘、可愛いでござる。某もあんな彼女が欲しいでやんす』

 すみませ~ん、店員さん!警察を呼んでくださ~い! 変質者が居ますよ~!


 縁は嬉しそうに俺が選んだ下着を抱えて会計にむかって俺の手を引きながら行く。

「ありがとうございます。(リア充爆ぜろ)お会計は2点で8,532円です」

 俺が選んだ水色の下着と自分で選んだ淡いピンクの下着で約8,500円…。案外するんだな…。

「下着の大きさはFカップでお間違えないですか? (彼氏とイチャイチャですか良いですねぇ~)」

 この店員さん、さっきから心の声がだだ漏れなんだけど…。


「はい、あってます」

 あれ? でもこのあいだは…Eだったよな? 不思議そうな顔をしていると足を踏まれた。

「変なこと思い出さないで良いからな! 」

 思った以上に協力な踏みつけだった…。痛い…。

◆◇◆◇

「フフフッ♪ 私は嬉しいぞ朱音♪ 」

 そういって俺の腕に抱きついてくる。

「恥ずかしいから! それに歩きづらい」

 そういって俺が腕を振りほどこうとすると

「そんなことを言ってるけど本気で振りほどこうとしないのは何でかな? 」

 そういって俺の顔を覗き込んでくる。


「それは昔、色々あって女の子には手をあげられないし、ましてこのあいだまでは美鈴と母さんしか触れられなかったんだから」

 そういうと縁はハッとした顔で俺の腕を離す。

「いや、今は大丈夫だから! 」

 そういって縁の手を握る。

「大丈夫? 無理してないかい? 」

 少し不安そうに見つめてくる。


「今は大丈夫」

 そう伝えると縁が俺のことをジーっと見つめてくる。

「朱音、どうしてそんなに女性のことが苦手なんだ? 」

 あんまりその話はしたくない。


「その話は美鈴に聞いてくれるか? 美鈴なら知ってるから、それにその話はしたくない」

 そういうと縁は頷いて再び俺の腕に抱きつく。

「ねぇ、朱音…。私、朱音のことが……きだよ♪ 」

「居たぁ~!! 橘先輩~!💢 なにおにぃを独り占めしてるんですか💢 」


 向こう側から美鈴達がやって来る。

「ヤバい、2人での買い物がバレた…」

 縁がオロオロしている。

「あっ、それに橘先輩Triumphの袋持ってますよ! 」

 凛ちゃんそれはツッコまないで…。


「おにぃ、橘先輩とそこに買い物行ったんなら私達とも行けるよね?💢 」

 俺が助けを求める視線を縁に送ると縁は首を横に振って諦めていた。

「おにぃ、私は水着が買いたいなぁ~♥」

 微笑みながらこっちに来るけど目が笑ってないから! 怖い! 怖いから!


「捕まえた♥ それじゃ、みんなでおにぃ好みの水着を選んで貰おぅ~! 」

 下着のあとは水着ですか…。どんだけ俺のHP削れば気が済むんだよ!

「水着か、ちょうど良いな! 明日、午前中だけじゃないか授業、よろず部は授業に出なくていいから学校の室内プールを掃除するように頼まれていたんだ。そこの3人も一緒に掃除するかい? 」


 3人は頷いたあと俺を逃がさないように腕を掴んだまま水着売り場に向かっていく。

「恥ずかしいから、もう嫌だぁ~! 」

 俺のお願いは聞き入れてもらえなかった…。

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