第1章 Let'sショッピング!

 アウトレットモール

「ねぇ、何でわざわざ木更津のアウトレットまで行くんだ? 近くのアオンで良かったんじゃ…? 」

 縁が隣に座る俺の裾を引っ張りながら不思議そうに尋ねてくる。

「たしかに近くのアオンでも大きいし問題は無いと思うけど、せっかくみんなで出掛けるんだから普段あんまり行かないところに行ってみたいじゃん! 」

 そういって笑いかけると縁は納得してくれたみたいだった。

◆◇◆◇

「やっと着いたぁ~っ! 」

 駅からバスに乗って、やっと着きました三ツ井アウトレットパーク! リーシャ、電車やバスの中、お疲れさまでした。

 リーシャって風紀委員やってるだけあってみんなをまとめるのが上手い。


「おにぃ、バスはやっぱりキツかったぁ~! ヤバいおにぃ! エチケット袋! 」

 美鈴は車酔いが凄まじい。

「大丈夫か? 美鈴? 」

 そういって背中を擦る。


「美鈴君、車に酔い易いんだね」

 背中を擦る俺の姿を見て、縁が心配そうに美鈴を見つめている。

「あぁ、子供の時から車は本当にダメで 」

 そういって縁と喋っていると


「おにぃは、もう少し私のことを心配するべきじゃないのかな? 」

 そういって美鈴は俺を抱き寄せてくる。

「分かったよ、大丈夫か? 無理そうなら少し休んでから中に入るか? 」

 そういってベンチを指差すと

「もぅ~っ、そういうことじゃないの! おにぃ、手! 」


 そういって俺を見つめてくるので俺は渋々手を差し出すと

「今日は、ずっと握ってて♪ 」

 そういって美鈴が耳元で囁いてくる。

「ダメに決まってるだろ♪ 独り占めなんてさせないからな♪ 」

 俺達のすぐ前を歩く縁が俺と美鈴の間に入ってくる。 


「体調大丈夫? 顔が少し青いよ…。飴でも舐めて少し落ち着かせよ♪ 」

 そういってリーシャが美鈴を連れていく。

「まったく、油断も隙もない…。朱音、今日は何か買う予定はあるのかな? もし無いなら私達の買い物を手伝って欲しいのだけど? どうかな? 」


 そういって縁や前を歩く女性陣が俺を見つめてくる。

「分かったけど何を手伝えばいいんだよ? 正直、嫌な予感しかしないんだけど…」

 そういうと彼女達は互いの顔を見合わせて

『ソンナコトナイヨー』と片言な返事をしてくる。

 俺は腹を括り、彼女達の買い物を手伝うことにする。

◆◇◆◇

「おにぃ♪ どの服が私に似合う? 」

 さっきから『可愛いよ』か『似合ってるよ』しか口にしてないから、そろそろ違う言葉を言わなくちゃマズいけど…。

「めっちゃ可愛いよ♪ (どうでもいいんだけど…)」

「あっ、また言った! おにぃ、面倒くさって思ってるでしょ! 」

 相変わらず、こういうときの勘は鋭いな我が義妹は…。


「ソンナコトナイヨー」

 そういって辺りをキョロキョロしていると

「朱音、こっちに来ないか? 」

 そういって縁が手招きをしているのでそちらに向かうと

「朱音、この服を着てみないか? 朱音に似合うと思うんだけど…」


 渡された服はワインレッドのシャツだった。

「俺が着るのか? 似合うかな? 」

 半信半疑ながらも受け取ったシャツに腕を通す。

「やっぱり似合うよ♪ 格好いい…」

 そういって縁はスマホで写真を撮ってくる。


「そんなに似合うのか? う~ん、じゃあ買ってくるか」

 そういってレジにむかうとレジには何故か列が出来ていて先頭では女の子がワタワタとポーチの中を確認している。

「無いっ、無い! お財布が無い! 」

 よく見ると凛ちゃんだった…。


「どうしたの凛ちゃん? 」

並んでいる人に迷惑にならないように列を外れて外側から声をかける。

「ふっ、ふわぁぁぁぁぁぁっ~先輩! お財布が、お財布が無いんですぅ~( ;∀;)どうしましょう」

 そういって俺に駆け寄ってくる。


 うわぁ~っ、周りの視線が痛いよぉ…。

「とりあえずお金を貸すから商品を買ってから考えよう! 」

 そういって凛ちゃんに財布を渡すと凛ちゃんは泣きながらレジでお金を払い終えた。

 おぉっ、財布が軽くなってる…。


「先輩、どうしよう! お財布どこに行っちゃったんだろう!」

 そういって凛ちゃんはオロオロしている。

「とりあえず落ち着こう、お財布にはいくら入ってたの? 」

 そう尋ねると凛ちゃんは少し考えて

「うぅ~ん、確か電車の往復代かな? 」

 ん? じゃあ俺の持ち金50,000円がぶっ飛ぶ程の量をどうやって買おうとしていたんだ?


「だけど先輩、お財布の中にはお父さんから貰った黒いカードがあって、それで買い物が出来るから落としちゃうとマズいんです!」

 あぁ、凛ちゃんってお嬢さんなんだ…。

 一瞬で理解が出来たけど事の重大さが分かった、彼女はブラックカードの入ったお財布を落としたんだ!

 俺はスマホを取り出して今日一緒に来ているメンバーにグループ電話をかける。


「おにぃ、どうして逃げたのハッ倒すよ♪ 」

 怖いからやめようね美鈴。

「あっ、朱音買えたのかい? 」

 いいえまだです。

「先輩、凛ちゃん見なかったですか? 凛ちゃん財布を僕に預けたままどっか行っちゃったんですけど! 」

「それだ! 忍、お前何処に居る? 」

 

 凛ちゃん、財布を忍に預けたのを忘れるなよ…。

 隣で嬉しそうにピョンピョン跳ねる凛ちゃんは可愛かったけど、しっかりしてくれとも思った。

◆◇◆◇

「なるほど、それでみんなに電話してきたんだね? 」

 縁が注文したパスタを食べながら確認をしてくる。

「はい、私がおっちょこちょいで先輩や忍君に迷惑かけちゃって…」

 そういって凛ちゃんは不思議そうにハンバーガーを見つめたあと大きく口を開けてハンバーガーを頬張る。


 あのあとみんなと合流して今はフードコートで食事をしている。(周りの男性から睨まれて)

「先輩、どうしたんですか? さっきから食べてないですけど? あ~ん、します? 」

 何で今日に限って男の格好じゃないんだよ忍! 何で食べないのかって? 周りの視線が痛いんだよ! そのせいで胃がキリキリして食欲が出ないんだよ!


「おにぃは気にしすぎだと思うなぁ~、ほら♪ 食べないと午後も大変だぞぉ~! あ~ん、しなさい! 」

 そういって美鈴が俺のうどんを横から箸で掬い上げて『ふぅ~、ふぅ~』と息を吹き掛けて俺に差し出してくる。


 なぜ俺は温かい天ぷらうどんを注文したのだろう時間が戻せるなら自分をぶん殴ってやりたい!

「ほら、猫舌のおにぃのために冷ましてあげたからしっかり食べてよ♪ 」


 もうこうなったら仕方ない! 本当に仕方ない!

 えぇ~い、なるがままよ!

「ふふっ、おにぃと間接キスしちゃった♥」

「あっ……」

 

 周りの男性からは嫉妬の視線が…。

 そして忍以外の女の子達からは『私もするから朱音(先輩)覚悟! 』とってたかって俺の口に物を詰めてきた。

 正直、窒息死するかもって思った…。

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