オウムを追って…

「本当だ…何だろうねアレ…? 」

 どうやら2人とも見えているらしい…。

「やっぱり出るんだよ! この学校、結構歴史あるし! 」

 そういってリーシャは俺の背中に抱きついて身を隠す。


「ちょつ! 背中押すなって!リーシャ! 」

 リーシャは俺の背中を押して白い靄に近づく様に指示をしてくる。

 なんあああああで怖がってるのに押すんだよ!

 うわっ、白い靄が動いてるよ! なんだよアレは!


 しかもその靄は階段をおりていく

「マジかよ! とりあえず追ってみるか…」

 警戒しながら階段に近づいていくと白い布が階段に落ちていた。

「なんだ、幽霊とかじゃなくてこの布だったんだ…」

 リーシャにそう伝えるとリーシャは震えながら階段を指差して


「ここの階段って昔、事故があって女の子の幽霊が出るって聞いたことがある…」

 そういって俺の背中に隠れて震えている。

「大丈夫だってコレはただの白い布だよ♪ 」

 そういって拾った白い布を持とうとすると上の階から楓さんと美鈴が息づかいを荒くして走ってやってきた。


「触らないでおにぃ! 逃げちゃう! 」

 何が? そう思ったときには遅かった! 白い布の中からオウムが飛び出していってしまった…。

「あぁっ、逃げられた…」

 そういって美鈴は俺を見つめてくる。


「えっ、俺の責任? 」

 思わずそう尋ねると美鈴は頷いて

「どうせおにぃのことだからリーシャ先輩に抱きつかれて鼻の下伸ばしてたんでしょ!」

 なんで美鈴はそんな風に俺を見るのかな? たしかにリーシャの柔らかくて大きい物が背中に当たっててニヤけてたかもしれないけど…。


「それより、どうして学校の中にオウムが居るんだ? 」

 上の階からおりてきた楓さんと美鈴に尋ねると2人も首を横に振って

「わかんない? 何か居るって思ってライトを向けたらオウムが居たから捕まえようとしたら逃げられて…」

 そういって俺を見つめてくる。


「何か? 」

「おにぃが逃がすんだもん! 」

 そういって美鈴が俺を指差してくる。

「俺の責任なのかな? 」

 そう尋ねると美鈴は頷いて 

「おにぃ達が騒いでオウムを驚かさなければ上手く出来てたかも…」


 そういって俺を見つめてくる。

「それより、今回のお化け騒動はあの子が犯人なんじゃないかな? 」

 楓さんがそういって俺と美鈴を見つめてくる。

「そうかもしれないですね…。でも仮にそうだとしたら噂になるの遅くないですか? 特に羽音とかで幽霊ではないってことぐらい分かると思うけど…」


 俺はそういって首を傾げて不思議そうにしていると後ろにいたリーシャが嬉しそうな声で

「なんだお化けじゃないんだ…。あのオウム絶対捕まえてやる! 」

 そういってオウムが飛んでいった1階に降りていってしまう。


「とりあえず今はあのオウムを捕まえなくちゃね♪ 」

 そういって俺達もリーシャを追って1階に向かった。

◆◇◆◇

「うわぁぁぁっ! なっ、なんだアレは! 」

 縁の驚く声が廊下に響き渡る。

「橘先輩、落ち着いてください! アレはオウムです。どうして校内に居るのかは不明ですけど…」

 雪ちゃんの落ち着いた声が聞こえる。

「なんだオウムだったのか…。どうして学園内に居るんだ? 」

 不思議そうに考えている縁の姿がやっと見えてきた。


「お疲れ縁! それよりさっきの悲鳴はどうしたの? (笑)」

 そういって縁を見つめると

「うっ、うるさい! すっ、少し驚いただけだバカっ! 」

 恥ずかしそうに頬を赤らめて俺を小突いてきた。


「あっ、楓先輩! あのオウムがお化け騒動の元凶ですか? 」

 雪ちゃんが楓さんに尋ねている。

「ねぇ、それよりリーシャがこっちに来なかった? 」

 リーシャが見当たらないので2人に尋ねると2人とも首を横に振っている。


「朱音! 朱音どこぉ~! 」

 リーシャの泣きそうな声が聞こえてくる。

「廊下に居るぞ? リーシャこそ何処に行ったんだ? 」

 声をかけると近くの教室から『ガタッ』と音がする。

「そこに居るのか? 開けるぞリーシャ? 」

 そういって教室の扉に手をかけてドアを開けると…。


「えっ? ちょっ! 待って! 」

 扉を開けるとそこには体操着姿のリーシャが居た…。

「なにやってるんだ? ってかよく見たらここ保健室じゃん…」

 そういってリーシャを見ると彼女は頬を赤らめて

「なっ、何でもないから! それより早くオウムを捕まえようよ! 」


 何事も無かったかの様な感じで俺の腕を掴んでくる。

「リーシャ先輩、着てた服はどうしたんですか? 」

 雪ちゃんの疑問をスルーしてリーシャは保健室を出て探しにいこうとする。

 保健室にあった洗濯機が回っていたのはそういうことなのだろう…。


「そういえばオウムは何処に向かっていった? 」

 雪ちゃんと縁に尋ねると2人は職員室を指差す。

「マジか…」

「うん、マジだよ…」

 職員室に無断で入るのはマズイような…。


「生徒会長権限でOKもらってるから入っちゃお~! 」

 そんな軽いのりで良いのか? 疑問に思いながら半開きになった職員室のドアを開けて電気をつけるとグチャグチャになった先生達の机があった…。

「俺達の責任にはならないよな? 」

 楓さんも苦笑いをして困っている。


「ねぇ! コレって…」

 雪ちゃんが教頭先生の机の引き出しにあったフサフサした物を指差していた…。

「雪ちゃん、それは見なかったことにしよう…。たしかに噂で教頭先生は髪の毛盛ってるとか話しはあったけど…」

「教頭先生ってカツラだったんだ…」

 そんなストレートに言っちゃダメだって縁…。


「オウムはこの様子だと校長室に逃げ込んだみたいだね! 」

 職員室から繋がるドアから羽音がする。

「おにぃ、コレ使って! 」

 そういって渡されたのは提灯と折り畳み式の釣竿それにこんにゃくだった…。

「お前、コレを何に使う予定だったんだ?」


 美鈴は苦笑いをして

「夜の学校でやることは1つ! 『肝試し』でしょ! 」

 俺はその発言にため息をして

「コレじゃあ捕まえられないだろ…」

 渡された道具を美鈴に返して校長室の中に入る。


『クルナ!クルナァ~!』

 オウムが叫びながら天井をクルクル回っている。

「朱音コレを! 」

 そういって縁から渡されたのは教頭のカツラだった…。

「どう使うんだよ💢 」

 思いっきりカツラを投げるとたまたま飛んでいたオウムの顔が隠れるような形になる。


『クルナ~!』

 そう叫んだオウムは前が見えず壁に思いっきり当たり床に落ちる。

「オウム確保!? 」

 捕まえられると思ってなかったのでかなり驚いた。

「とりあえず生徒会室に使わなくなったゲージがあるからそれに入れてお化け退治終了かな? 」


 オウムを持って生徒会室に行きゲージに入れて帰ることにした…。

「俺、リーシャと一緒に保健室に向かうね?」

 そういってリーシャと保健室に行くことになった。

 2階にある俺達の教室を通りすぎた時、教室の中に女の子が居た。

「ねぇリーシャ、今8時だけど、この時間に生徒って居ないよね? あの子何やってるんだろう? 」

 リーシャに尋ねると…。

「誰の事を言ってるの? 」


 教室には誰も居なかった…。


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