学校の怪談

「やだ! 絶対嫌だ! 私行きたくない! 」

 リーシャは俺と縁がしっかりと腕を掴みながら夜の学校に連れていく。

「うわぁ~、容赦ないね…。おにぃと橘先輩」

 嫌がるリーシャを無理矢理引き摺っていく俺と縁の姿を見ながら美鈴が呆れた顔で俺達を見つめている。


「だって仕方ないだろ人手が必要なんだから! 」

「そうだよ! リーシャが居ないと困るんだよ! 」

 俺と縁はそういってリーシャを引き摺っていく。

「だからって嫌だっていってるのに無理矢理連れていこうとするのはダメだと思うんだ! だから私を助けて美鈴ちゃん! 」


 リーシャは美鈴に助けを求める

「いや、私に言われても…。私達生徒会も今回は楓先輩と雪と私の3人だから人手は欲しいんだよね♪ 」

 そういって口笛を吹いて視線をそらす。

「そんな…、ヒドイよ! 私を助けてくれると思ってたのに美鈴ちゃんまでそんなこと言うなんて…」


 ついにリーシャは諦めたのか抵抗が止みリーシャは俺と縁に引き摺られてまま夜の学校に着いた。

◆◇◆◇

「みんなありがとう♪ 助かるよ! 」

 そういって楓さんが手を差し出してくる。

「私はいい迷惑です! 生徒会の仕事に私達を呼び出さないでください」

 俺達に無理矢理連れてこられたのに腹が立っているのかリーシャが文句をいって楓さんを睨み付ける。


 そんなリーシャを見て楓さんが俺を手招きしてくる。

「ちょっと朱音君、何でリーシャさん機嫌が悪いの? 」

 不思議そうに楓さんは、リーシャを見て俺に尋ねるてくる。

「あぁ、リーシャって実はお化けとか幽霊とか苦手なんですよ、だから夜の学校とか本当にダメらしいんです…」


 俺が苦笑いをしながらそのことを伝えると楓さんも苦笑いしながら

『ゴメンね、人手が必要だったから…。リーシャさんのフォローお願いしてもいい? 』と尋ねてくるので俺は端からそうするつもりだったと伝えると楓さんは微笑んでいた。


「されと、じゃあ皆揃ったね! 」

 楓さんがそういって俺達を見つめてくる。

「来たので帰っていいですか? 」

 そういってリーシャが帰ろうとする。

「待ってリーシャさん! ちょっとお話があるの! 」

 楓さんがリーシャの肩を掴んで帰ろうとするリーシャを捕まえて耳元で何かを囁いている。


「分かった! 私頑張るね! 」

 どんな心境の変化があったのだろうリーシャは楓さんから話を聞いたあとスゴくやる気に満ちていた。

「どんな手を使ったの? 」

 楓さんにこっそり聞くと彼女は人指し指を鼻にかざして

『乙女のひ・み・つ』

 と言って笑っていた。


「それじゃあチーム分けしま~す! 今回は2人1組で手分けして噂の真相を確かめようと思います! じゃっ、クジ引いて! 」

 そういって楓さんは最初にクジをリーシャに引かせる。

「紙に数字が書いてあるからね! 」

 最後に引いた俺は紙を見ると『1』と書かれていた。


「朱音は1番だよね♪ 」

 リーシャが俺の腕に抱きついて紙を見てくる。

「うん、そうだけど…? リーシャが1番?」

 そう尋ねるとリーシャは頷いて目を閉じて唇を突き出してくる。

「リーシャ君、私達が居ることを忘れてないかな? 」


 そういって縁と美鈴が俺達を見つめてくる。

「おにぃから離れてよ! クジもう1回引き直そうよ楓先輩! 」

 美鈴がそういって楓さんに詰め寄るが楓さんは苦笑いしながら美鈴の意見を受け流していた。

◆◇◆◇

 結局俺とリーシャのペアで美鈴は楓さんと縁は雪ちゃんと見回ることになった。

「朱音、怖いから握ってていい? 」

 返事を聞く前に既に抱きついてますよね? なんて野暮なことは言わない…。

「この学園にも七不思議とかあるんだろうな…。何か知ってる? 」

 話題を反らすために何か話しかけようと思ったけど苦手な人にするような話じゃなかった! 」


 そう思いリーシャをチラ見すると彼女はニヤニヤした顔で俺の腕に抱きついていて話を聞いていない様子だった。

「リーシャ、本当にこういうの苦手なの? 顔ニヤけてるよ…」

 そういうとリーシャは指で頬を恥ずかしそうに掻きながら俺を見て

「だって好きな人に抱きついていられるんだもん♪ ヘヘヘッ♪ 」

 と言って上目遣いで俺を見つめてくるうえに柔らかい2つの桃を押し当ててくる。


 気持ちは嬉しいのだか一時の感情で行為をおこなってはいけないと思い、必死に理性で本能を押さえつける。

「俺達の担当は2階フロアだけど第一理科室とかあるから若干怖いよな…」

 そう言いながら先を行こうとするとリーシャが急に立ち止まってしまった。


「バカっ! 何でそんなこと言うの! 人が思い出さないように話をそらしてたのに! 」

 そういって泣きそうな目で俺を見つめてくる。

「ゴメン、俺が悪かっただからサーっとみてサーっと帰ろ? 」

 そういって怖がっているリーシャの頭をポンポン撫でるように叩く。


「何か悔しい! ズルいよ朱音は…」

 そういって頬を膨らませて俺を見つめてくる。

「何かしたのか俺? 」

 怒らせる様なことをしたなら謝らなくちゃと思いリーシャに尋ねるとリーシャは顔を赤くして


「もぅ~っ、鈍い!鈍いよ朱音! 私、このあいだ告白したよね? あのね朱音、女の子は好きな男の子に頭をポンポンされたり弱ってるところを優しくされると嬉しくなるのは当たり前だと思うんだけど」

 そういって俺にデコピンをしてくる。

「それにしても、こんなに暗い中誰か居るってことはないだろ…」

 そういいながら進んでいくと首筋に何かヌルッとしたものが当たった様な気がする。


「ねぇ、何か当たらなかった? 」

 そう尋ねるとリーシャは怖そうにしながら抱きつく力を強めてくる。

 どうやらこの様子だと何も知らないようだ…。

「いや、俺の気のせいだったみたい」


 そういうことにしておこう…。

「ねぇ、あっあああ朱音! アレッて何? 」

 リーシャの指の先には白いもやの様なものが浮かんでいた…。

 何だろうアレ…。

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