教頭のカツラと黒いアレ
あれ~っ? まさかの本物が居たのかな?
そんなことを思いながら俺はリーシャが着替えるのを保健室に入ってリーシャに背を向けながら待った。
「朱音見てないよね? 」
そういって俺のことを見つめてくる視線を感じる。
「大丈夫、見てないから! 」
俺はリーシャと逆の方向を見ながら素数を数えてリーシャをなるべく意識しないようにする。
「朱音、このあいだ伝えたけど私は朱音のこと好きだよ♪ 」
そういってリーシャが背中に抱きついてきた…。
「ちょっ、リーシャダメだって! 色々とマズイから! 」
そういって離れようとするとリーシャが必死に抱きついてくる。
「違う! 違うの! 黒いのが居る気配があるのさっき羽音がしたし! だからもっと寄って! 何かあったら守って! 」
なるほど…、Gが居る気配がするのか…。だからってそんなに抱きついてこなくても…。
「分かった、分かったから! だけど色々当たってるから早くして! 」
視界の端にピンクっぽい生地が見えた気がするけど気にしないことにする。
「分かってる! だけど羽音がしたんだもん! だからもっと近くに居て! 」
リーシャは俺の横に移動して服を着始める。
「隣で着替え始めるなよ! 普通に見えちゃうから! 」
リーシャに伝えると彼女は恥ずかしそうに頷いて
「別に朱音になら見せても大丈夫…。今はそれより黒い方が問題だから! 」
ムニュッ、ムニュッと腕に柔らかい2つのメロンが当たる…。
「早く着替えて! 色々とマズイから! 」
リーシャは俺の横で手早く着替えると恥ずかしそうに俺から離れる。
「お~い、2人とも早くするんだ! みんな待ってるぞ! 」
廊下から縁の声が聞こえる。
「あぁ、今行く! ちょっと待っててくれ!」
そういって保健室から出ようとすると
「まっ、待って朱音! 」
そういってリーシャが震えながらドアの方向を指差す
「あれが! 黒いアレが! 」
ドアの真上に黒いアレが居た…。
「イヤァァァァァァァァァッ!! 」
学園内にリーシャの声が木霊した…。
◆◇◆◇
「一体何があったのかと思ったよ…」
縁がそういって保健室に入ってくる。
「大丈夫だよ、なんとか黒いアレは殺しといたから…」
殺した黒いアレをゴミ箱に入れながら縁に声をかける。
「だっ、だって扉の上でカサカサ動いてたんだもん! 橘さんだって怖いでしょ! 」
リーシャはそういって縁を見つめるが縁は不思議そうな顔で
「アレは殺虫剤があれば平気だろ? 確かに武器が無いと無理だけど…」
そういって自分の手を見つめている。
確かに素手は無理だよね…。
「ちなみにどうやって朱音は殺したんだ?」
そう尋ねてくるので俺は足元を指差す。
「コレで直接踏まないようにカバーしながら踏んだ! 」
縁は俺の指先にあるものを見て絶句していた…。
「あれ? 何か俺やらかした? 」
縁に尋ねると彼女は笑いながら
「それ教頭先生のカツラだぞ! 明日が楽しみだな! 」
俺の足元には教頭先生のフサフサが落ちていた。
「コレって洗ったり出来るのかな? 」
そういって教頭先生のフサフサを指差す。
「物によるんじゃないかな? コレはたぶん洗える類いの物だと思うぞ? 持ち帰って洗うかい? 」
朝、教頭先生の机にないとマズイと思うので
「洗っていくしかないか…」
保健室に設置されている洗濯機に放り込む…。
「それじゃあ、洗濯が終わるまで待ってなくちゃだね…」
リーシャはそういって保健室のベットに横になってしまった。
「おにぃ達遅いよ! 」
美鈴達生徒会メンバーも保健室に入ってくる。
「どうしたんですか? 」
雪ちゃんが不思議そうに尋ねてくるので俺は洗濯機を指差して、さっき起こった出来事を話す。
「もう教頭先生を直視出来ないですね」
雪ちゃんは必死に笑いを堪えながら洗濯機を見つめていた。
「乾燥機ないですけど、どうやって乾かすんですか? 」
俺も楓さんに言われるまで気づかなかった!
「どうしよう…」
机の引き出しの中で乾くとは思えない…。
「トイレに浮かべてホラーにして誤魔化す?」
それホラーだよ! どーすんだよ!それが起こったあとどうやって対応するんだよ!
「学校の七不思議に登録しよう! 」
あと6つはどうした!
「じゃあ、とりあえず女子トイレに行こっか! 」
ノリノリだな
「トイレの花子さんだね! ナイスアイディア! 」
いや、違うと思うぞ楓さん! 驚く場所そこじゃないから!
「プッ、プフフフッ」
笑ってる状況じゃないから雪ちゃん! 1番しっかりしてる君が止めてくれないとこの子達絶対面白がってやるよ!
「それじゃあ、トイレにレッツゴー! 」
マジか!さすがにダメだろ!
「それはマズイだろ! 」
俺、ちゃんと止めたからね!
「あんなエロオヤジのカツラなんていいの! アイツ私のスカートが短いとか言って下着みようとしてくるし…。おにぃ、だからコレは仕返しなんだよ! 」
「よし、やっちまおう! 」
俺達は女子トイレに教頭のカツラを浮かべに行くことにした。
◆◇◆◇
「とりあえず明日学校に着いたら生徒会室に行ってオウムを職員室につれていけばいいんだよな? 」
教頭のカツラを女子トイレに浮かべて帰宅することにした俺達は楓さんと雪ちゃん、それとリーシャが自転車なので駐輪場に移動することにした。
「うん、それであってるよ♪ 明日はよろしくね! 」
楓さんはそういって俺に微笑みかけながら自転車の鍵を外す。
「朱音、暗いから家まで送ってほしいな…」
リーシャが俺の服の裾を引っ張ってくる。
「うん、分かってるよ縁達と一緒に…」
「ダメ! 2人がいいの…。鈍感! 」
そういってリーシャが俺の腕を引き寄せて自転車のサドルを指差す…。
「分かった」
俺にはリーシャの自転車に座るしか選択肢がなかった…。
「ねぇ、嫌じゃなかったの? 」
リーシャの自転車を漕いでいると後ろから俺の腰に抱きついているリーシャが不思議そうに尋ねてくる。
「ん? 別に嫌じゃないぞ? リーシャって可愛いからこんな暗い中1人で帰すの心配だったし…」
そういって俺はゆっくりと自転車を漕いでいく。
「んっ、そっか…。朱音少し寒いからギュッてしていい? 」
リーシャはそういって俺の腰から背中に手をまわす。
「しっかり掴まってろよ」
暗く星空が綺麗な夜、俺とリーシャは自転車というジェットコースターに乗って坂道をノンストップで下っていった。
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